第5話豚と狼
僕の名前は子猫ちゃんです。
白に灰色の毛が混ざった――。
強くて可愛い子猫ちゃんです。
緑の人から取り出した丸い骨を食べてからなんだか自分じゃない位に、
力が漲ってきています。
今までは小川を泳ぐのにも必死だったのに楽々です。
小川の魚さんを捕るのも今では余裕になりました。
でも、お魚さんではあの骨の様な、力は湧いてきません。
今日も、今日とて僕は小川の周辺で遊んでいました。
すると――。
正面から豚の顔をした人間がやってきました。
『ブモーブモー』と鳴きながら僕に襲い掛かってきます。
僕はいつもの様に、逃げ回るのですが、それでも追いかけてきます。
この豚は、たまにお婆さんがご馳走してくれたお肉と同じ臭いがします。
お婆さんがくれた肉は、この豚を解体した物かも知れません。
僕は、緑の人の時と同様に豚の顔に爪を立てました。
『シュパッ』と音がしたと思ったら、豚は顔面から真っ赤な血を噴出し、
倒れました。
でもまだ生きています。
僕は後ろに回って豚の首に噛み付きました。
すると、今度こそ豚は動かなくなりました。
僕は豚の体を爪で切り裂きました。
中にはいつもよりも大きな丸い骨がありました。
お肉にも興味はありましたが……。
やっぱり、まずはこの骨からです。
骨が大きくて僕の口では丸齧りには出来ません。
仕方が無いので、爪で切り裂いてから齧りました。
喉の奥まで飲み込んだ時にそれは起こりました。
僕の体の毛が少し光りだし、次の瞬間には僕は何が起きたのか分りました。
どうやら、特殊な魔法を覚えた様です。
僕は試しに小川の傍に立っている、大木目掛け爪を振りました。
すると……透明になった爪がくるくる回りながら飛んで行き、
大きな木は爪が当った所からバッサリ切れてしまいました。
この魔法があの時にあったら――お婆さんは指を切らなくても済んだのに。
そんな事を思っていると、さっきの豚の死体を狙って銀色の狼がやってきました。
狼はお婆さんの家の近所にはいません。
初めて見ます。
犬よりも牙は鋭く、目つきも怖いです。
でも僕の豚です。僕の晩御飯です。
僕は、晩御飯を守る為に戦います。
狼が豚に近づいた時に、さっき覚えた透明の爪を飛ばしました。
すると……。
爪は狼の首と胴体の間に当たり、首が後ろに飛んで行き、体は地面へ落ちました。
僕より、10倍は大きな狼だったのに……。
今の僕は、狼よりも豚よりも強くなっている様です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます