絶対神と大罪人
@Yurtom
第0話
悪魔だ。奴の左目のまわりのあの紋様、伝承にある絶対神のものだろう。しかし、口元の歪んだ笑みと先ほどまではなかった左腕・・・いや、もうあれは腕ではなく、闇色の瘴気だ。
あの瘴気はころころと形を変えて敵に襲い掛かっている。
しかし、対峙している相手も互角の戦いを演じていた。
その時、倒れていた俺の耳に、後姿を向ける絶対神が呟いた。
「相変わらずだね、大罪人。嫌いじゃないよ」
***
「あー、疲れた。ねえ、たいざ・・・じゃなくてフルート、君は疲れてないの?」
私の呼びかけに、大罪人フルートは応じた。
「べつに。ぜった・・・シーアだってそこまで疲れてないでしょ」
「いやいやいや。私だって疲れるときは疲れるもんだよー」
あっそ、と素っ気ない反応を返してくる彼女、過去に国丸々ひとつを消し去った大罪人フルート・アクアスに、私───絶対神族ヴァルト・シーアは軽く笑いを漏らす。
「なに笑ってるのよ。まあ、さっきのが楽しかったのはわかるけど。次は絶対に負けないわよ」
「ふーむふむふむ、この私に勝てるでしょーか?あんなので本気だとは思わないでほしーなー」
やや挑発的なコメントに、フルートは背の低い私を見下ろしながら苦笑しつつ言った。
「べつに思っちゃいないわよ。シーアが本気を出すのなんて、私がほんとに危ない時だけでしょ」
フルートさんのコメントに数秒間目を丸くしていたが、やがて発せられたのはただのツンだった。
「べべべべべ、べべべつにフルートなんかのために本気はだ、だささださないんだからね!」
「あっそ」
「あちょ、まってよー!おいてくなー!」
急ぎ足で歩きだす二人を、今の大声で周りの騎士達が見ていた。恥ずかしいわ・・・
***
「・・・、迎えの馬車が表で待機しております」
「そうか、ならばそろそろ行くとするかな。絶対神、そして大罪人・・・貴様らはこの国から出て行ってもらうぞ・・・私の野望の為にな」
彼らが出て行った部屋は、恐ろしいほどの静寂に包まれていた。
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