魔法少女の作り方
亜保呂都留
魔法少女リリィ
女の子はお砂糖とスパイスと、それからステキなものいっぱいで出来てるって、誰かが言ってた。それなら、魔法少女は何から作られたのだろう。
時は深夜。月さえも眠りについたかのような暗い空。一定の間隔をあけて設置された電灯が照らす下、軽やかな足音が響く。ふわふわと水色のスカートを揺らして歩くその少女。黒いケープのフードにはネコ科の耳のような飾り。肩から胸にかけて垂らした太めの栗色の三つ編み。ふんふふんと鼻歌を歌いながら、一夜にして廃墟と化したような静かな住宅街を後目にスキップで駆けていく。少女の靴がアスファルトを蹴る、一瞬、少女の爪先で、火花が散るように、キラキラと輝いたそれは、また夜の闇に溶けた。少女は何かを探していた。少女はその何かが何なのかを探していた。少女はその何かが何なのかを探してる私は何なのか考えた。そして、ある家の前で立ち止まる。二階建ての、どこにでもあるような普通の家。でも、キョロキョロと眺めてピンとくる。ここに何かがある。地面を蹴って飛ぶ。2階のベランダに降り立つ。その瞬間、閉まっていたはずの窓が開いて、風邪が部屋に流れ込み、カーテンを揺らす。導かけるように1歩を踏み出す。ベッドに眠る人影。ああ、この人だ。この人は私だ。ベッドに身を乗り出して顔を覗き込む。少女と瓜二つの顔。一瞬、薄く開いた目と目が合ったように見えた。「あなたが...、」そこまで呟いて、少女は霧のように消えた。
少女、
ある日私は夢を見た。私の部屋の窓が勝手に開いて、そこから夜風と共に私と瓜二つの、でも雰囲気が全然違う、なんていうか、神秘的というか、どこかこの世のものでない雰囲気の、少女が入ってくる。ふわりと、水の中を歩くような、そんな足取りで、ゆっくりと、私に近付いてきた。そして、私の顔を覗き込んだ。思わず私は目を閉じた。幸い、彼女は私が起きている――夢の中なのに起きているという表現はちょっとおかしいかもしれないけど――とは気付かずに、黙っていた。それから、何十分もそうしてた気がする。分からないけど、傍らに寄り添うように立つその影は、長い間私をただ見つめていたように思えた。勇気を出して私が少し目を開くと、思ったよりもずっと顔が近くて、薄く開いた目をあわてて閉じる間に、なにか小さく呟いて消えた。それだけだったけど、間近で見た彼女の輝く瞳が忘れられない。もし、夢でないとしたら......?
ある突飛な考えが頭をよぎる。引き出しの奥に眠っていた鍵付きのノートを引っ張り出して、初めのページにある言葉を書く。「あなたは誰?」返事はいつくるのか、それとも永遠に来ないままなのか。確かめたくて、また眠りにつく。枕元に鍵がかかったそのノートを置いて。
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