心を吐露する
発芽
物語を深い眠りに付かせましょう
三年前の日記を読み返しました。
それで気づいたのです。
あの日、捨てたはずだったのに、また再び拾い上げていたことに。
あの日と変わらない、どうしようもない自分がそこにいました……。
こんなはずじゃ、なかった
☆
さよなら、思い出たち
さよなら、光輝くドブにおちた飴玉よ
これは私の心の欠片
時間を費やした、あの日を生きた証
いわば、私の命だ
さよなら、私の綴った大好きな物語たち
本当は、宝物のように引き出しの中に仕舞っておきたかったけど
私があまりにも取りだすから
自分との約束が守れなかった
だからごめんね
もう手放さなければいけないんだ
これがあると私は前に進めない
この輝きに、目が眩むから
これらが私を掴んで離さない
だからどうか、もう、解放して欲しい
捨てさせてよ、一切跡形もなく
だってこれは私を腐らせるものだから
さよなら、さよなら
ねじれた世界で生きる実体の無い子供たち
現実にはできない、不可能を可能にする夢の世界よ
不満を、不道徳を、理想を叫び続ける世界
君たちは本当には生きていないから
私はもう、追うことはできない
私は貴方に会ってから沢山の愛と言葉をもらいました
その感動を、選んだ決意を、物語に変えたかったけど
貴方の奥深さに敵うはずがなかった
どんな文も、言葉も、考えも、世界の広さも
代わりに演じる彼らが、伝え切ることもできませんでした
不完全な私の作り出す世界観なんて、
所詮はちっぽけな箱なのです
全て見えては居ないのです
綺麗に書けたとしても それは貴方からのおこぼれです
まだ私は、自分の物語に酔っているのですか
多くの人に評価されたいと思っているのですか
まだ見ぬもの、異色の展開が、脚光を浴びる世界に、
形作られ、染まりたいのですか
それが貴方を悲しませることになってもですか
脚色して面白可笑しく塗り重ねて、愉しませるのですか
とはいえ、文を綴る事は私の命です
新しい話を作るのを辞め、離れてもなお
一日に何度、フレーズが頭を駆け巡ることでしょう
そして今浮かんだ言葉よりも、巧みな、美しい言い回しを永遠と探し続けるのです
たくさんの時間を費やしているのが、嫌なのです
心さえも奪われ、傾き続けるのです
これらを止めることはできますか
どうしたらいいのですか
だから、どうか、
捨てさせて下さい
できるならば、たとえ捨てたとしても
その分、幸せなものに時間を使ってると
胸を張って言えるように、願います
大丈夫、心は虚しくならないよと
私がその証拠だよって
そう思える日を、私に訪れますように
あきらめなければ願いは叶うとか、
楽しい世界の夢に浸りながら
そんな誤魔化しという名の魔法をかけて
私は目隠しをして、ひたすら長い道を歩いてた
どこかで本当は、彷徨っていた
引き返す道を探してた
だけど、
魔法は解けないまま
時間だけが過ぎて、後戻りなんかできなくなっていた
言葉を、彼らの生き様を、物語を綴るのが本当に私は好きなのです
だからこそ、
本当に失いたくないものが、押しのけられ、蝕まれはじめている
そうです
私はとうに物語よりも大事なものをみつけたのです
けれど、物語を宝物にしてた生き方があまりにも長かったので、
未だに手放すのを惜しんでしまっています
さぁ、私は何を手に持ったら良いでしょうか?
手にすくい上げられるのは一つ
でしたら、私はこれからを手放しましょう
答えは出ているのです
どうせまた手放せやしないだろうけど
もはや、私には手放すほかないのです
☆
そして、今度こそ捨てたものを拾い上げませんように。
それとも最後まで書き終えれば満足しますか?
いいえ。
私のことだ。
この欲は一生尽きることは、決して無い。
むしろ、欲は孕み続け、終わりのない世界へとことん浸かるのは目に見えている。
好きだからこそ、辞めるのは苦して、難しい。
生み出した小さなあの子達が、
私の足に絡みつき止めようとする。
ねぇ、どうしてですか。
どうして、あの子達は再び起きてしまったのでしょうか。
どうして、こんなにも未練がましいのでしょうか。
書き直せば書き直すほどに、年月が経つほどに、
より良いものが書けてしまうのです。
過去の物語に文を書き加えたくて、完成したままにしておけなかったのは、なぜですか。
どうして私は弱いのでしょうか?
書き加えた物語やメッセージを、貴方のためにと言い訳をして、
本当は、自分の力だと言いたかっただけなのです。
だから、もう貴方に願うしかないのです。
どうか、二度起きないくらいに深く眠って下さいませんかーーーー、と。
あの子達を寝かしつけた隙に置いていくことができたなら、
私は振り返らずに、今後こそ前に進めると思うのです。
来年の自分が、あの先の、ずっと先の道に居ますように………
今度こそ……どうか歩ませて下さい。
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