魔法の力が消えていく

屋鳥 吾更

統ノ章/ハジメノショウ

 東京都内で発生した『中学二年生失踪事件』から二週間が経過していた。すでに捜査は形骸化、ニュースで目にすることもほとんどなくなり、行方不明になった少女の家族は失意に埋没するしかなかった。

 ただ、その日、事件は大きな転換点をむかえた。

 とうに死んだと、帰ってくるはずもないと思われていた少女の自宅のダイニングテーブルに、くし切りになった小石のようなものが八つと、そして、か細いボールペンで「わたしは駒木野桐香をやめる」と書かれたコピー用紙がそれぞれていねいに置かれていたのだ。

 しばらくして現場を訪れた誰にとっても、その言葉の意味と価値は、分かり得るはずもなかった。





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