xxx 願い
二人の用いた究極魔法により、城の全ては崩壊した。二人の逆襲の終わりは、命を代償にした大魔法により、終結したのだった。
二人が口にした、相反する属性の究極魔法。自分の身体全てを代償として用い、全てを闇に凍てつかせる「アンブラー・カタルシス」、全てを光に灼きつかせる「ラディアン・パージ」。この二つの魔法を同時に使うことで、二人は「事実上」消滅したのだ。
このニュースを聞くや否や、人族も獣族も、泣いて喜ぶのだった。自らの身を脅かす二人の魔導師の存在が絶たれた。皆が恐れていた存在が消え、また平穏に暮らせる。それだけで十分だった。
「城」の発生から1年が経つそれよりも前に、人族と獣族は1つの条約を結ぶ。それは、1つの大きな困難を乗り越えたからこそ結ばれた、両族の信頼の証。
「獣族も人族も、互いに憎み合うのではなく、むしろ肩を組み、より良い国作りをめざすこと」
これは全会一致で可決された。人族も獣族も、誰一人反対する者はいなかった。離れた所にあった集落も、人と繋がりをもつようになり、獣族たちが奴隷として働くことは許されなくなった。
人獣戦争から57年、講和条約が結ばれて、長い長いしがらみは無くなった。それは、昔の酷い世界を疎んだ二人の忌むべき魔導師の願った世界、そのものだった。
講和条約締結から三年、城の消滅の後からやっと濃すぎる魔素が薄れ、探索が始まったその日、一つの手紙が城のあった場所から見つかった。その手紙にはこう綴ってあった。
拝啓、忌まわしき侵入者共。この手紙を読む頃には、我々の目的は既に達し、我々は既に眠りについているであろう。
人族は罪を犯した。弱き者を助けず、寧ろ全てを略奪せんとした大いなる強欲を。
獣族は罪を犯した。立ち上がる力はあれども振るわず、他の者に押し付ける大いなる怠惰を。
依って、我らは望む。全ての罪が失せ、互いに手を取る世界を…
人々はこの手紙を読んだ。全ての者たちは、嘆き、悲しんだ。全てを引き起こしていたのは、原因となったのは、元は我々だったのだと。若くとも、大きな志を持った二人の魔導師を失ったことを。
手紙のそばには、白と黒の丸い、それも完全なる球体のオブジェが見つかった。二つの球体は大切に保管され、永い時の間、保存されることとなる。
再び、この白と黒の魔導師が目覚めなければならなくなる、その時まで――
Fin.
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