第197話海賊の塔その2
『鋼鉄騎士団、ドンside』
俺達鋼鉄騎士団はその人数を100人まで増やし、「カンパニー」最大のクランとなった。だがそれもこれも「カンパニー」の名前があって初めて成立していると思っている。彼らはそんな自覚はないかもしれないが、AOLにおいて彼らを知らない者は初心者中の初心者だろう。
そんな有名な彼らを引っ張っているウィル。アイツはマッスルの中のマッスルだ。俺たちは皆アイツに惹かれて「カンパニー」の姉妹クランになった。強いだけではない。人を惹きつけるカリスマ性がある。優しさ、強さ、面白さ、そして何より家族を大事にし、周りの人間を大事にしている。
今の若者にはあまりみない程好青年だ。そんな「カンパニー」はAOLにおいて普通の人たちが見つけられないようなクエストをこなしている。彼らはいずれこのゲームをクリアするだろう。それも一番に。俺たちはそんな彼らを支えたい。そしてクリアする時に隣にいたい。今回の遠征でそんな俺たちの必要性を、強さを再認識してもらう必要がある!
俺達はドアをマッスルしながら階段をマッスルしていた。階段を上りきると広い踊り場にでた。
・海賊になれなかった骸骨LV70
・海賊になれなかった骸骨の部下LV50×10
「リーダー、海賊になれなかったわりには海上で戦った海賊たちより強くないですか?」
「気にするな。どんな相手だろうと俺たちは俺たちの筋肉を信じて進むだけだ!!」
「「「「イエス!マッスル!!」」」」
「行くぞ!筋肉のない奴らなんかに負けるな!!マッスル!!」
「「「「マッスル!!」」」」
俺たちは全員が盾職というかなり偏ったパーティだ。だがその分鉄壁の防御力を持っている。さらに対「カンパニー」様に秘策もある。
「全員!整列!!マッスル作戦だ!!」
「「「「マッスル!!」」」」
マッスル作戦とはその名の通り、全員が二列に整列し盾を構えて前進していくというフォーメイションだ。これにより隙なく敵に近づけ攻撃ができる。まさに鉄壁のマッスルだ。
敵は魔法を放ってくるが全て盾によって攻撃を防ぎ前進する。今の俺たちはいかなる攻撃も通用しない。
敵は攻撃が通じない事で動揺し後退しながら魔法を放つが俺たちはそれをマッスルしながら確実に距離を縮めていく。他人から見たら地味かもしれないがこれが俺たちのマッスルだ。
「今だ!!マッスルチャンスだ!!」
「「「「イエス!マッスル!!」」」」
マッスルチャンスとはその名の通り、盾を変形させた攻撃だ。俺達の盾は防御型の盾と、盾の面に棘を発生させて攻撃できる二種類に変形する。これは俺たちが独自に考えた変形の盾で対「カンパニー」様に作ったものだ。これで「シールドバッシュ」を行いと敵に大ダメージが与えられる。
「「「「シールドバッシュ!!」」」」
全員で盾で敵を殴りつけ、さらに剣で叩き切る。ここまで接近し敵を追い詰めればあとは俺たちの見せ場だ。というか一方的な殲滅になる。
敵はなすすべなく光となって消えていく……。
「俺たちの勝利だ!!」
「「「「イエス!マッスル!」」」」
大した敵ではないが、一回一回の戦闘を楽しみ仲間と感動を分かち合えるのがMMOの良いところだ。俺たちはそういうのを大事にしている。
「良し!では次に進むぞ!」
「「「「イエスマッスル!!」」」」
俺たちは奥にある扉をマッスルして、階段をマッスルする。この塔を最初にセするのは俺たちだ!!
『悪魔結社プライドside』
俺たちは今回の遠征に対してかなり気合を入れてきた。何故なら最近俺達クランの出番が少なすぎる気がするからだ。うちのメンバーは兎に角寂しがり屋が多い。他のクランに遊んでもらわないと誰かしら愚図る。めんどくさいと思うかもしれないが俺たちはそんな奴らだ。
そんな俺たちの心を射止めて仲間にしてくれたのが「カンパニー」の皆だ。最高にかっこいい兄貴に最高に美しい仲間たち。ゲームを心から楽しみ真剣に向き合うその姿は最高でまさに俺達全員の憧れだ。
そして何よりこんな俺たちに真剣に向き合い一緒に遊んでくれる。最高の仲間だ。
だが最近俺たちの出番が少ない気がする……。だからこそ今回の遠征で俺たちの潜在を示さなければ!!
階段を駆け上がると広い踊り場にたどり着きそこには魔物が待ち構えていた。どうやら俺たちははずれを引いたらしい。だがそんなことは構わない。俺達は一番に最上階まで行くんだ!
・泳ぎが苦手なサーペントLV72
・泳ぐのがめんどくさい人面魚LV50×10
「よし!野郎共戦闘開始だ!」
「「「「おう!!」」」」
人面魚は一斉にめんどくさそうに口から「アイスニードル」を放ってくる。それを前衛が叩き落し後衛が魔法や矢で攻撃、敵の隙を作る。俺たちの連携は完璧だ。それは「カンパニー」にも負けない自信がある。
まずは盾職が「挑発」を使いヘイトを集め残りが敵を攻撃、敵の陣営のバランスを壊してから離れ、魔法職が一気に中級魔法で敵を一網打尽する。
人面魚はとりあえず撃破したがサーペントは意外に素早い動きで魔法から逃れたようだ。だが俺たちの連携から逃れられた魔物はいない!!
俺たちは華麗な、神秘的ともいえる連携でサーペントを倒した。全てはリーダーである俺の指示通り……。
「なぁ、リーダーまた自分の世界に入っちゃってるよ」
「あー、あーなると長いんだよなぁ。まぁ今回も連携は綺麗に決まったし仕方ないけど」
「最近多いよなリーダー。何かいいことあったのかな?」
「なんか、この前女の子に「お早う」って言われたらしいよ?二年ぶりに」
「あのリーダーが!?そりゃ大事件だ!!学校の奴か!?」
「いや、近所の小学生の子らしい。それから「俺もまだまだ捨てたもんじゃないな」とか言ってたし」
「「「「リーダー……」」」」
皆が何か言い俺の方を見ている?あ、成程今回の作戦指示の仕方が良かった俺の事を褒めているんだな?
「おいおい。お前達。褒めるのはそこまでにしろよ。これからまだ先は長いんだ」
「り、リーダー本気か!?本気で先を見据えているのか!?」
「相手は子共だろ!?やめるんだリーダー!」
「手を出すのにはまだ早い!」
「いや、早いどころの話ではない!犯罪だそれは!」
「そうだリーダー!目を覚ますんだ!」
「リーダーが壊れた……」
ん?皆は何を言ってるんだ?本気に決まってるだろ。本気で先を見据えてこの塔を制覇しに来たんだろ?宝に手を出さずに何に手を出すんだ?犯罪?海賊が誰かから奪った宝だろ?犯罪になるわけがない。
「別にいいだろ?やるならとことんやるのが俺のやり方だ!誰にも邪魔はさせん!!」
「うわあああ!!リーダーが壊れた!!」
「メディーーク!!メディーーク!!」
「いや!!ここはポリスメンだ!!ポリスメーン!!」
「リーダーが性犯罪者になっちまう!」
「目を覚ますんだリーダー!」
「俺はリーダーに乗った!小学生だって立派な女性だ!はぁはぁ」
なんだか会話が成り立ってない気がするが……。まぁいい。先に進もう。俺たちは「カンパニー」より先にゴールするんだ!
「いいから先に進むぞ!俺たちがこの塔を制覇するんだ!」
「話を逸らした!」
「塔よりも大事な話があるリーダー!」
「そうだ!ちゃんと話し合おう!!」
「姉ちゃん!俺の姉ちゃん紹介するから!それで手を打ってくれ!頼む!!」
「ナイスアイディアだ!それなら犯罪にならない!」
「ロリこそ正義。はぁはぁ」
何故だか分からないが姉ちゃんを紹介してもらえることになった。「カンパニー」といるといつもいいことが待っている。本当に兄貴たちには感謝だな。
こうして俺はよく分からない事を叫んでいる仲間を連れて十の最上階へ進む。全く手のかかる仲間だぜ。
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