第193話霧の中のレイド戦

「おう来たか!!久々のクラン「カンパニー」勢ぞろいだぜ!」

「この前勢ぞろいしただろ。「マイノリティ」もいたけど」


 場所はボーズ街港、以前古代の島のシークレットゾーンに向かう時船を借りた街だ。


「でもよくこんな大きな船借りられたねー?」

「ああ!これもひとえにマッスルしたおかげなんだがな」


 アイリスの問いにドンが答える。マッスルって日常会話でも使得る単語なんだな。


「ああ、これはこの前のイベントの報酬でもらったお金を皆で出し合って借りたんすよ」

「そうそう。この前のイベントで兄貴たちが呼んでくれなかったイベントで」

「あ、別に根に持ってるわけではないですよ?しょうがなかったんだし。呼んでくれないのは」

「俺たちなんてそんなもんですもんね。呼んでくれないのは」

「今回も呼ばなかったら勝手にどっか行っちゃいそうだしね「カンパニー」の皆は」

「ところがどっこい逃がさないんだな今回は呼ばれなくても」

「呼ばれないなら呼ぶ!!これが今回の俺たちの決断です!!」

「呼べなかったのは説明したでしょ?根に持ちすぎよ」


 「悪魔結社」の皆は相変わらず寂しがり屋のようだ。だがなんだかこんな奴らでも久々に会うと嬉しいものだな。


「というわけでだ!俺たちはお前たちのいない間皆で出来るクエストを探していたわけだ!」

「そうだよー!僕たち頑張ったんだから!国中あっち行ったりこっち行ったり!」

「でも見つけたのはオリバーよ。全くそう言う所は本当に凄いんだから」

「ふふ。久しぶりのオリバー×ウィルね。腐腐腐。血が騒ぐわ!!」

「あれ?「ダブルナイツ」の女の子たちは?」

「ああ、彼女たちは期末試験なんと。夏休み前のこの時期にやるなんて変わってるよな」


 「ダブルナイツ」はオリバー、リタ、ライリーの三人に、今回は助っ人としてフランジェシカが加わり4人パーティーで挑むそうだ。


 「カンパニー」は6人、「ダブルナイツ」4人、「悪魔結社」7人、「鋼鉄騎士団」8人の大所帯で船に乗り出発することになった。


「そう言えば「火の国」って王国から東にある国、でよかったかしら?」

「ん。でもたしか途中に魔物がいて通れないって聞いた気がする」

「流石、良く知ってるな。火の国に行く道中には確かに魔物がいるらしい。だが今だそれに出会ったプレイヤーはいない」

「ぬ?どういうことだ?」

「その道中に深い霧が発生するそうだ。そこに入ると何故かまっすぐ進んでいるはずなのに気づけば王国方面に向かって戻っているらしいんだ」

「そうだ。だから俺たち「ダブルナイツ」は考えた。何か特別なアイテムが必要なんじゃないかと。そして国中のクエストを探し回った結果、見つけたんだ。この東だけを指す「不思議な方位磁石」を!!」


 オリバーはいたって普通な方位磁石を掲げ「悪魔結社」の皆は膝をつき崇めている。何故か突然変な宗教団体が出来上がってしまった。


「この方位磁石を手に入れるまで大変だったぜ。兎に角これで進めるってわけだ」

「そしてその魔物がレイドボスって情報も手に入れてる。どんな相手かはまだわからないがな」

「お!マッスルしてる間に霧が見えてきたぞ!!」


 誰もマッスルはしていなっかったが出発して二時間、ついに正面に霧に包まれた場所が見えてきた。


「気をつけろ!!これからは何があるかわからない。皆気を抜くなよ!!」

「「「おう!!」」」」


 船はだんだんと霧に近づきそして中に入っていく。霧の中に入ると一寸先すら見えない状況で仲間たちの姿さえ見えない。


「オリバー!!方角は!?」

「左に流されてる!!もっと右だ!!野郎共!!帆を張れ!」

「「「「イエッサー!!」」」」」


 あらかじめ決めておいた元漁師のドンが舵をとりオリバーが全員に指示を出す。皆手探りでロープを握り必死に指示の出された方向に向けて船を進める。


「もっと左だ!!次は右!!駄目だ!流されてる!!もっと右だ!!」

「く!?これはかなり筋肉が喜ぶな!!はぁあああ!!マッスル!!」


 次第に海が荒れ船は左右に何度も流されるが、30分ほど皆で協力した末にだんだんと霧が晴れ空から光が差す。


「やった!!抜けたぞ!!」

「まて!!何か先から歌が聞こえないか?」


 だんだんと霧が晴れ波が穏やかになった時突然景色が歪む。懐かしい子の感覚はボスのフィールドに入ったという事だ。


「ヨー・ホー。ヨー・ホー。船は進むよどこまでも。俺たちゃ海賊、奪って盗んで舟をこぐ。俺たちゃ最強海賊団。全ての海は俺の物。全ての宝は俺の物。ヨー・ホー。ヨー・ホー。船は進むよどこまでも……」


 歌はどこからともなく聞こえ皆武器を構える。霧が完全に晴れ、気づけば正面にボロボロの海賊船が姿を現す。そしてその甲板には沢山の骸骨の海賊たちが武器を構え宴会をしていた。


「「「「ゴーストシップ!?」」」」

「そうか、魔物ッて海賊だったのか!?」

「まずかよ。ホラーは苦手だ」

「あははは!!お兄ちゃん大丈夫だよ!お化けじゃくてただの骸骨だよ!!」

「その二つに何の違いがあるのかしら」

「ぬ?ウィルはホラーが駄目なのか?安心しろ!!俺もだめだ!!」

「ん。フォローになってないよレイ」

「ふふ。楽しい戦闘になりそうね」


 船は次第に近づき船が横並びになり敵の姿が見える。


「船長!!大変です!!」

「どうした!?」

「目の前に!!目の前に……。すみません!!忘れました!!」

「ヒャッハッハッハ!!お前は飲みすぎだ!!よく見ろ!!目の前に!!あー、何だっけ?」

「ギャハハハ!!船長も飲みすぎですぜ!!」

「大体俺たち骸骨!!目がないのに目の前ッて!!ふふ、ギャハハハ!!」

「確かに俺たちゃ目がなかったな!!ヒャッハッハッハ!!さぁ!!呑もう同志たち!!」

「「「「サーイエッサー!!」」」」」


 船が完全に隣り合わせになり僕らが戦闘態勢に入った時、敵はすでに酔っぱらい僕らにいっこうに気づく気配がない。


「な、なぁどうするこれ?声かけた方がいいのかな?」

「こ、攻撃しちまうか?だが宴会してる奴らには攻撃しずらいよな」

「あ、兄貴、なんか言ってきてくださいよ。戦闘初めてもいいですか?とか」

「いやだよ。僕がホラー苦手なの知ってるだろ?まぁこれはなんか全然怖くないけど」


 僕はがどうしたらいいか分からず話し合っていると一人(?】の骸骨がこちらにひらひら寄ってきて気づく。


「せ、船長大変です!!誰か来ましたぜ!?」

「誰だ!?誰が来た!?」

「わかりません!!だが可愛い女の子が沢山います!!」

「何だと!!可愛い女の子だと!?どこだ!?どこにいる!?」

「船長目の前にいますって!!目、目の前に!!も、もしかして酔いすぎて見えてない!?」

「あれ!?どっちが地面でどっちが空だ!?」

「ひひ、船長!の、飲みすぎですって!!ひひ、ギャハハハ!!」

「「「「…………」」」」


 どうしたらいいか本当に分からないぞ。もうボスのフィールド入ってるんだよな?


「よし決めた!!あれ?何を決めたんだっけ?」

「ギャハハハハ!船長マジで酔いすぎ!!ヒック!!あれ?船長どこだ?」

「お前も酔いすぎだって!!マジで誰か来たんだって!!あれ?お前達誰だ?」

「もしかして!!もしかして!?もしかして……何言おうとしたんだっけ?」

「ギャハハハ!!とりあえず呑もう!!」

「「「「カンパーイ!!」」」」

「「「「いい加減気づけよ!!」」」」


 あまりにも僕たちに気づかな過ぎたため思わず皆で声を張り上げてしまう。


「ああ?誰だテメェら!?いつからそこにいた!?」

「船長!!敵戦です!!戦闘準備を!!」

「何だと!?敵だと!?野郎共!!えーと、えーと?」

「船長!!戦闘準備です!!」

「ああ!そうだ!!野郎共!!戦闘準備だ!!」

「「「「おう!!」」」」


ーーーーーーーーーーーー

フィールドボスに遭遇しました。


これより「酔っぱらったゴーストシップ海賊団」との戦闘を開始します。


尚この戦闘はモンスターを倒すか、プレイヤーが死亡するまでこのフィールドからは出られません。


頑張ってください。


ーーーーーーーーーーーーーー

 こうしてようやく戦闘が始まった……。

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