第190話クエストクリア

「ば、馬鹿な……」

「わざわざ帝国から仕入れた兵士達だぞ!!くそ!なんて使えない……」


 イスカリテオは椅子からずれ落ちブクブクは持っていた杖を地面にたたきつける。


「いや、まだだ、だからといって俺の王座が奪われたわけではない!!」

「兄様!!いや、イスカリテオ!もう終わりだ。貴方は負けたんだ!」

「そうよ!!こっちには証拠も揃ってる!!」


 いつの間にか僕の後ろにはアレクサンドラ、エミリア、そして皆がそろっていた。エミリアは今まで集めた「誓いの契約書」をイスカルテ達に見せる。


「ここには白ウサギさんが書いた、「幻術魔法」でノアさんに無理やり「誓いの契約書」を書かせたとのサインもあるわ!!」

「ば、馬鹿な……くそ!!あの死にぞこないが!!なんでそんなもの……」

「に、偽物だ!!それは偽物に決まってる!!」

「見苦しいですよブクブク。「誓いの契約書」は本人じゃないとサインできない事は知っているはずです」

「グッ、くそ!!」


 これでクエストは彼らは終わりだろう。こちらには証拠、そして戦力、沢山の協力者がいる。僕らは一人では何もできないけど、皆で協力してここまで来たんだ。


「クソクソクソ!!出来損ないの愚弟ごときに!!」

「兄様。確かに俺は出来損ないかもしれません。一人では何もできませんでした。でもこの旅で、この国を周ってみて色々なことがわかりした。人は一人では大したことはできない。でも皆で手を繋ぎ、それが大きくなれば国だって守れるんだって」

「そうね。貴方達は人を侮りすぎよ。見下しすぎたのよ。だから個人の強さを、国の人達の強さを理解してなかったんだわ。それがあなた達の敗因よ」


 この二人は本当にこの旅で大きくなった。なんだか聞いていて泣きそうになってくるな。


「ふむ。どうやら決着がついたようじゃの」

「ふふ。その様ですね」

「な!?死んだはずじゃ!?」


 後ろの扉が開きそこからヘンリー国王、イザベラ王女が入ってくる。そしてその後ろには傷だらけの大魔導士アレンに四番隊隊長副隊長のジャックにケイト、パレンケ伯爵にフェラール伯爵、族長、そしてエヴァンナとジーバが入ってきた。


「ふん。儂の手にかかればあんな病気すぐに治せるわい」

「ふふ。本当に奇跡を見ているような調合でした」


 とジーバとエヴァンナ。


「フォフォフォ!!久々に暴れてすっきりしたわい」

「隊長。俺たちってまだまだだったんですね」

「いや、この人が化け物過ぎた。あの何だよあの技反則だろ……」


 アレンは笑い、ジャックとケイトはなんだかショックを受けていた。


「いやいやしかし儂等もまだまだ動けますな!」

「ですな!若いころの血が騒いだ騒いだ!」

「がっはっは!!いやいやお二人ともお強い。どうでしょう今度決闘でもしませんか?」


 伯爵二人に族長はいつの間にか友達のように仲良くなっていた。


「イスカルテオよ。お主は負けたのじゃ、人の力に。いや、元々お主には国を統治するなどできなんだ。お主のやり方では例え国を手に入れてもすぐにそれは崩れるはずじゃ。もっと国を見てみなさい。人を見てみなさい。それが出来てない時点でお主には王の資格はない」

「そうですね。そして歴史をもっと学びなさい。何故かこの人達は多くの失敗を繰り返し、そして今の形になったのかをもっと知るべきですね。過去の人間が何を想い何をしたのか。それはいつの時代になっても人のなすことなのですよ。そこから学べない者は人の上に立つべきではありませんん」


 国王様と女王様はゆっくちと息子に叱るように、そしてどこか優しく言葉を投げかける。


「くそ!!どこで、どこで間違ったんだ!ブクブク!お前の言う通りにすれば俺は王になれたんじゃないのか!?」

「スタンピート計画、獣人の売買。国王暗殺に貴族たちの口封じ。全て完璧だったはずだ。何故、なぜこんなことに……」


 すでに二人の闘志はは消えかけている様に感じる。イスカリテオは喚き散らしブクブクはぶつぶつと独り言のように反省会を開いていた。


「そうじゃのぉ。お主らの計画は確かに良くできていた。じゃが国とは何かを根本的にとらえ間違えていた事が敗因じゃて。国とはシステムにあらず。国とは人なり。個人の力を見誤ったお主らの負けじゃ」

「そうですね。独裁政治などうまくいくはずがないわ。その先にあるのは孤独な死だけですよ。それでも貴方方はその道を進むというのですか?」


 国王様と女王様の言葉にイスカルテは地に手をつき項垂れる。


「くっくっく!やはり儂の計画に狂いなどない。狂うはずがないのだ!!」


 ブクブクは懐から握りこぶしくらいある大きな赤い魔石を取り出す。


「何を!?」

「くっくっく!これは帝国で最近研究が進められていた人口魔石だ!これを取り込めば……」


 ブクブクはそう言うと自分の胸に魔石を埋め込む。すると魔石は光りブクブクは見る見るうちに黒い体をしたオークのような姿になってしまった。


・ブクブクLV150


「こ、こんな……!?」

「こ、これは少し不味いかもしれねぇな」


 僕らは武器を構えるがすでに全員が残りHPもMPも少なく満身創痍だ。


「フォフォフォ。若いもんはすでによう頑張った。後は儂に任せときなさい」

「あ、あれをやる気か!?皆下がれ!!」


 アレンが僕らの前に一歩踏み出しジャックが慌てて皆を後退させる。


「ごのオイボレがぁ!!潰れてしまえ!!」

「危ない!!」


 ブクブクがその拳をアレンに振り下ろしそして……アレンに当たる寸前で何故か拳が止まる。


「な、なんだ?何が起きたんだ?」

「「重力魔法」よ。それもとんでもなくい強力なね」


 誰かの質問にエリザベスが答える。エリザベスは額に汗をかきアレンを見つめていた。彼女は魔法に詳しいだけにアレンとの力の差を感じているようだ。


「フォフォフォ。本当はこんなことしたくなかったのじゃが。お主はもう人ではなくなってしまった。ここで死ね。「ゼロ・グラビティ・ホール」!!」


 アレンが杖を突き上げた瞬間、アレンとブクブクの間に黒い渦が発生する。それはとても強い魔力を感じ、さらに全てがそこに吸い込まれるような強い吸引力を生み出していた。


「ば、馬鹿な!?この儂が!!こんなところでええええええ!!??」


 それは一瞬の出来事だった。ブクブクの体がよじれたと思ったら一瞬のうちに彼は黒いブラックホールの中に吸い込まれ、そして消えていった。後には何も残らずに謁見の間には再び静寂が訪れる。


「な、なんだあれ。反則だろあんなの」

「フォフォフォ!これでやっと静かになったの。ほれ、皆の者何をボーっとしておる。さっさと残ったこの阿呆を牢屋にでもぶち込んでこの戦争を終わりにしようぞ」

「あ、はい!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シークレットクエスト【英雄を夢見る少年】 クリア!!


王子達を無事王都の城まで連れて行こう。

それと、出来れば・・・。


報酬

???


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その時、僕らの指輪が熱くなり光る。


 ・勇者の指輪


 どうやらこれがクエストの報酬らしい。僕らは驚き顔を合わせて、そしてハイタッチをする。


 その後はイスカリテオは投獄され、僕らは次の日謁見の間に呼ばれる。


「クラン「カンパニー」御一行!王子アレクサンドラ様!王女エミリア様!おなーーりーー!!」

 

 相変わらずいい声をした兵士の声を合図に謁見の間に入り玉座の前にある階段の下で僕らは膝をつく。


「うむ!よく来た。さて此度の一件はお主らが居なければこの国は今と大きく違い混沌としていただろう。本当によく頑張ってくれた。そこでまずはクラン「カンパニー」には100万Gと今後城への自由に立ち入ることを許可する。この城には城下町にはない沢山の本や情報がある。うまく活用するがいい。それと宝物を授けよう。そして「カンパニー」の姉妹クラン達、そして「マイノリティ」には10万Gと城への自由な立ち入りを許可する。」


 僕らはお金を貰い、そして宝物を一人一人受けとる。これは事前に話し合って決めたものだ。


「そしてアレクサンドラ、エミリアよ。お主らには本当に苦労をかけてすまなかった。だがよくやってくれた。もうこの国はお主らに任せてもよいと思っているがどうじゃろう?」

「お言葉ですが陛下!この一件で俺は自分の未熟さを知りました。ですから俺はもっと旅をし世界を見て回りたいと思います!なので次の王位は姉であるエミリアに任せようと思います!」

「そうか。エミリアはどうじゃ?」

「はい!私も今回の一件で自分の未熟さを痛感いたしました。なのでこれからは王を支えながら国についてもっと勉強し、そしていつか立派な女王になりたいと思います!!」

「なるほど。いい答えじゃ」


 こうして僕らの長いクエストは幕を閉じた……。



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