第181話決闘の儀

「これより我らパライスの街を代表して族長とリリス、「カンパニー」からレイとウィルによる「決闘の儀」が行われる!いつも通り他の者は一切手出し無用!戦っている者は、相手が「参った」と言うかか、「気絶」した時終了となる!相手を殺すのはなしだ!もし謝ってでも殺した場合はその者には掟により死んでもらう!!説明は以上だ!正々堂々と戦え!!」

「「「「「「うぉおおおおお!!!」」」」」」」」」


この街の人たちは本当に戦闘が好きみたいだ。

すでにこの広場は人で溢れておりお祭り状態だ。

僕らはリングに横でレイとリリスの試合を観戦することになった。


「ふふふ。戦闘なんて久しぶり。それにしても貴方中々いい装備ね。」

「む?この装備の良さがわかるなんて、リリスは見る目があるな!気に入った!!」

「ふふ。ありがとう。貴方とならいい試合ができそうだわ。」


レイはミスリルの剣に大盾を構え、それに対しリリスは小さなナイフを二本持っているだけだった。

だがよく見ると彼女の短剣もミスリルで出来ている様だった。

彼女のスタイルはシーフなのだろう。

かなりの軽装にナイフが二本、スピード重視のスタイルと見える。


「それでは両者構え!いい試合をしてくれよ?・・・始め!!」


審判が声をかけた瞬間リリスは駆け出し、レイはドンと構えてその場から動かない。

リリスはかなりのスピードだ。

僕の「雷神衣威」を使っていない状態と互角かもしれない。


リリスはまずは正面からレイに斬りかかり、レイはそれを盾で受け止める・・・が、レイは受け止めきれずに半歩後ろに下がってしまう。


「ぬ!?」

「ふふ。中々固いわね。ならこれならどう?」


レイは反撃に「スラッシュ」を放つがリリスはそれをかがみ楽々避けて素早くレイの背後に回り込む。


「ふふふ。隙だらけよ?」


そのままリリスはレイの背中に短剣を刺そうとするが・・・レイは「空間把握」でそれを見ずによける。

リリスは避けられたころに驚き後ろに飛び距離をあけるが、礼は振り向きざまに「威圧」を放つ。

リリスは後ろに飛んでいる空中で「威圧」を受けたためうまく着地ができずに軽く躓いてしまう。


「うまいな。」

「ん。レイはウィルとの戦いでスピード重視のプレイヤーの動きをわかってる。」

「そうね。だから相手の動きが推測しやすいのかも。

「レイガンバレー!!」

「ふふ。いい試合ね。」


レイはその瞬間を見逃さずに「ダッシュ」を使い距離を詰めそのまま盾でリリスを叩きつける。

が、リリスは何とか転がりながらそれを避け再びレイから距離をとる。


「ふふふ。なかなかやるわね。技の使いどころが上手いわ。・・・ならこれはどう?「獣化!」」


リリスは体の半分が狼のように毛が生え始める。

「獣化」は獣人だけができる特殊スキルだ。

確か放出系の魔法は使えなくなる代わりに特殊スキルが使えるようになるはず。

話には聞いていたが実際に見るのは初めてだ。

まだアイリスでさえ使えてないというのに・・・。


「む?中々美しい格好だな。見事だ。」

「あら、ありがとう。でも見た目に騙されないでね?この格好になった私は中々強いわ・・・よ!」


リリスは話終わったのと同時に駆けだす。

そのスピードは先ほどよりも早く鋭い。

リリスはすごいスピードでレイに近寄りながらサイドステップをしてレイを翻弄させている。

レイはそれを冷静に「挑発」を使い対処する。

「挑発」は相手のターゲットを自分に集中させ仲間を守るスキルだ。

だが庇う見方がいない、ならなぜ使ったのか。

それは試合を見れば一目瞭然だ。


「・・・そのスキルにそんな使い方があったのね。」


リリスは再びレイの背後を取ろうとしていたようだが、「挑発」によって相手に集中せざる負えなくなり翻弄させる動きが鈍ってしまった。


「スピードプレイヤーならいつもウィルの動きを見ているからな!対処方法などいくらでも考えてある!!」


おい、僕がスピード型ってばらすなよ、僕はこの後試合があるんだから。


リリスはサイドステップを諦めそのままレイに突っ込んでいく。

低い姿勢から入り盾の死角に入った後大きくジャンプしてレイの背後に回り込もうとする。

が、レイには「空間把握」があるため相手が見えていなくてもその動きは分かる。

レイはしっかりとリリスの動きに合わせ、リリスのナイフを綺麗に盾でさばいて見せる。

そこからは激しい打ち合いとなった。

リリスは双剣で何度もレイを斬りつけるがレイはそれを全て盾で防ぎ剣で反撃する。

が、リリスは攻撃が決まらないだけでレイの攻撃は全て綺麗にかわしている。


広場からは二人の激しい攻防に歓声が上がる。

確かに完成を上げたくなるくらいいい試合を二人はしている。


しかしそんな攻防も長くは続かなかった。


「・・・くっ!・・・むぉ!?」


リリスは攻撃の隙をついてレイの足に尻尾を絡めて転がす。


「獣人衣威!!」


リリスはその隙をつき体から赤い魔力が噴き出しレイの上に「ジャンプ」しかかと落としを放つ。

レイは何とか転がりながら盾でそれを受け止めるが・・・、リリスの攻撃は強くレイの下の地面には小さなクレーターができる。

が、レイも負けじと「シールドバッシュ」でその攻撃をはじき素早く立ち上がる。


「「空間把握」「チャージ」・・・。」


レイは再び盾をどっしり構えて「チャージ」で力を溜める。

しかしこのタイミングで「チャージ」は悪手な気がするが・・・。


リリスはレイが動けない隙を狙って攻撃する・・・が、レイの「チャージ」の溜まる方が速かったようだ。


「「シールドバッシュ」!!」


レイは絶妙なタイミングでリリスの剣をはじき、リリスはその衝撃で吹き飛ばされる。


「はぁああああ!!」


レイはその隙に距離を詰め剣を振るう・・・が、これをリリスは読んでいたようだ。

というか、リリスは「シールドバッシュ」で飛ばされたのは計算されていたようにも感じた。


「ふふ。本当に強いわね貴方。「乱れ切り」「咆哮」!!」


リリスは「咆哮」と言うスキルで見えない衝撃波をレイに打ち込みレイは一瞬体制を崩されてしまう。

そこへリリスの「乱れ切り」が決まり、レイのHPはレッドラインに入ってしまった・・・。


「・・・まだ続ける?」

「く・・・いや、「参った」。」


「そこまで!!勝者!リリス!!」


大歓声の中レイは悔しそうな顔をしながら戻ってきた。


「・・・くそ。すまない。負けてしまった。」

「ドンマイ。相手の方が恐らくLVが圧倒的に高いと思うよ。」

「そうだよー!いい試合してたよ!」

「ん。レイお疲れ様。」

「そうよ。この悔しさを次につなげましょう。」

「でもレイ見て、皆の顔。さっきまでの人間を見下した目をした人はもういないわ。」


エリザベスの言葉にレイが周りを見ると、沢山の人がレイの方を見て拍手をしていた。


「・・・皆レイさんが頑張って戦ってたところを見て心打たれたんですよ。」

「そうね・・・。よくやったわレイ。それでこそ私達の護衛よ。」


レイはしばらくその拍手を眺めて悔しそうな、嬉しそうな顔をして顔をそむける。

彼女はまだまだ強くなる。

今回の試合で彼女がどれだけ成長したかがよく分かった。

スピードにもしっかり対処し、スキルの使い方も上手かった。

・・・後は僕が頑張るだけだ・・・。


「次!ウィル対族長!!」


「ウィル頑張って!!」

「ん。負けないでね。」

「俺の仇をとってきてくれ!!」

「お兄ちゃんファイト!」

「ウィル。勝ったらご褒美上げるからね。」

「ウィルさんよろしくお願いします。」

「フ、フン!今度こそ勝ちなさいよ!」


僕は皆の声援と、大歓声の中リングに上がっていく。

子の完成の中僕は緊張はしなかった・・・、いや、そんな暇はなかった。

リングに上がった瞬間から族長の「威圧」が凄まじく、大歓声もすぐに収まってしまった。

・・・彼は本気だ。

まぁそれは当然かもしれない。

獣人は強い奴に従う習性があるなら、族長は負けてはならない力のシンボルとなる。


「がっはっはっは!!儂の「威圧」を平然と受け流すか。これはなかなか・・・。」


実際は整然と受け流しているわけではない。

正直この人が怖くも感じる。

だが、最近命の懸けた戦いが多かった僕にはこれくらいで震えているわけにはいかない。

家族を守るために僕は戦っている。

なら何者にも屈してる暇はないからだ・・・。


「ふむ。ならば儂は初めから全力で行った方がよさそうだな。」


族長はそう言うと上半身の服を脱ぎ、身軽な格好になる。

そして両手足にミスリルで出来た鉄鋼を身に着ける。

彼はどうやら「武道家」のようだ。


「・・・それでは最終決戦を開始する!!両者正々堂々戦うように!始め!!「


「「獣化」「獣人衣威」「怪力」!!」


族長はガタイのいい体がさらに引き締まり体から赤い魔力を放出し始める。

・・・これは僕も全力で行かないと瞬殺されそうだ・・・。


「「雷神衣威」「空間把握」「怪力」!!」


僕も負けじと体に雷を纏い臨戦態勢に入る。

族長はそんな僕を見て一瞬驚くが、すぐにニヤリと笑い飛びながらこちらに一瞬で距離を詰めてくる。


「・・・なっ!?」


族長がパンチを放ってきたため僕は後ろに飛んで距離をとると、族長はそのまま地面を殴りつけ地面にクレーターを作っていた。

・・・この破壊力はやばい。

スピードは恐らくほぼ互角、力は彼の方が圧倒的に上だ。


「・・・なら手数で勝負だ。「乱れ切り」「かまいたち」「サンダーアロー」!!」


僕は沢山のかまいたちを放ちその最後に雷の矢を紛らわせて攻撃する。


「・・・ふん!!」


族長はそのすべてを籠手で防ぎきる。

そしてサンダーアローが当たった瞬間僕は駆け出すが・・・、族長は雷の攻撃が聞かないのか全く痺れた様子を見せずに僕の攻撃を待っている。

・・・いや、実際には効いているようだ。

だが、彼はそんな雷など気にした様子がない。

我慢強いのか、本当に気にならない程度の攻撃だったのか・・・。


僕はまずは正面から斬りかかってみた・・・が、彼は僕の攻撃を冷静に籠手の部分で防ぎきる。


「はぁ!「魔爆剣」!!」


僕は何度か攻撃を行った後「魔爆剣」で彼を吹き飛ばす。

しかし彼は両腕を少し浮かせただけで何とか踏みとどまる・・・。

本当にこの人は化け物だな。


「はぁああああ!「咆哮」!!」


族長はバランスを崩しながら口から咆哮を放つ・・・が、それはさっき見た攻撃だ。

僕はそれを横に飛び躱し「重力剣」で地面を叩きつける。


「むう!?」


大量の石の粒が族長に飛んでいく中僕はそのいくつかに「グラビティボール」をぶつけ一気に重量を増やす。

族長は石を全て叩き落そうとするがそのいくつかが思ったより重くなっており思わずガードする。

全ての石が族長に当たる瞬間僕は族長に距離を詰めて「疾風付き」を放つ。


「がっはっはっは!!やるな!ふん!!」


今度は族長が地面を思い切り踏み込み、地面が割れ石の塊が四方に飛んでいく。

僕は「空間把握」と「達人見切り」で全てかわしきるが、その瞬間すでに族長の拳が僕の目の前に迫ってきていた。

僕は避けようと下がろうとするがいつの間にか僕の体には族長の尻尾が絡みついていて動けなくなっている。


「…くぉ!」


僕はその拳を剣で捌くが、まるでタイヤを殴っているような大きな衝撃を受ける。

このままではまずいと思い、僕はしっぱに「雷掌底」を放つ。


「ぐぉおお!?」


今度は族長にしっかり効いたようで思わず尻尾が離れる。


僕は一旦彼から距離をとる。


「・・・がっはっはっは!!強い、強いな!!儂がこんなに苦戦しているのはいつぶりか!」

「・・・貴方も強いですね。・・・どうやって戦っていいのか悩みますよ。」


僕らが話をしているとき大歓声が上がる。

どうやら僕も皆に認められたようだ。

僕と族長は同じくらいの声援を背に受け、再び会陰戦体制に入る・・・がその時・・・。


「・・・へんだ。大変だ!!街のはずれで遊んでいた子供達が消えた!!」


一人の男の声により会場は静まりかえり、僕らの動きも止まる。

・・・どうやらまた人攫いが行われたようだ・・・。

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