第171話激突・・・

「・・・でかいな・・・。」

「・・・でかいわね・・・。」

「・・・うん。おっきい・・・。」

「・・・ん。さすが要塞都市。」

「これはリアルでは見られない光景ね・・・。」

「うぉおおおお!!すごいぞこれは!!ここで鬼ごっこをしてみたい!!」


鬼ごっこは止めとけ、鬼が永遠に続きそうだ・・・。

僕らは大国で一番西にある「ケロケロソンヌ」にたどり着く。

そこはまさしく要塞だった。

王国の中で王都に次ぐ大きさを誇る「ケロケロソンヌ」は高さ50mはあるだろうか、石で造られた大きな城壁に囲目れ中がほとんど見ないようになっていた・・・。

城門から中に入ると中の光景にも驚き思わず足を止めてしまう。

中は3段の位置に建物があり円形に造られており、3段目であり街の中心地に大きな城があった。

協会の位置は近くの人に聞いたら教えてくれてすぐに位置も分かった。

2段目の城の隣に位置している協会は王都にも負けない規模を誇る立派な協会だった。


僕らはムギ達に乗ってポータルに登録した後そのまま協会の前まで行きそこでムギ達をしまった。

大きな扉をくくり中に入ると王都とはまた違った綺麗な西洋風の造りになっていた。

そして僕らは驚き固まってしまった。

そこのはノアが・・・、いや、ノアにそっくりな男性がいたからだ。

彼は僕らに気づき丁寧にお辞儀をしてから話しかけてきた。


「こんにちは。その顔はもしかして私の兄を御存じなのですか?」


ノアよりは少し落ち着いた雰囲気をしている彼はノア同じ声をしていて僕は涙を止めることが出来なかった・・・。


「・・・ウィル・・・。」


エリザベスが僕の背を撫でてくれる。


「・・・その涙は、私の兄が亡くなった事を知っているのだね?」


僕は驚き彼の顔を見上げる。

彼は優しく、そして寂しそうに微笑んだ。


「・・・そう言えば自己紹介がまだだったね。私の名前は「イアン」。知っての通りノアの弟さ。そして兄さんの事は今朝旅人に聞いたんだよ。アニの街が消滅したって。生存者はいなかったって・・・。」


イアンは涙をこらえるように上を向いて話を続ける。


「兄さんは僕の憧れだった。そして真面目過ぎたんだ。・・・だから・・・。」


イアンはそこまで言うと後ろを振り向いて涙を拭いているようだった。


「・・・すみません僕はその場にいたんです・・・。でも・・・、ノアの事を救えなくて・・・。」


そこまで言うとイアンは驚いたようにこちらを振り向き僕の手を勢いよく掴んだ。


「・・・どういう事だ?・・・詳しく話してくれないか?」


僕は頷き、イアンは「ここではなんだから」と奥の小部屋に案内してくれた。


僕らは先日のアニの話を、ノアと出会ったところから細かく話した。

イアンはア両手を組みながら、僕から一切視線を離す事無く話を聞いていた。


「・・・そしてこれがノアの神官服と、その中から出てきた書類です・・・。」


僕がイアンにそれを渡すとイアンは大事そうにそれを受け取り眺める。


「・・・これは!?・・・そうか・・・。だが・・・。いや。・・・もしかしたら・・・。」

「・・・何かご存じなのですか?」


僕が食い入るように尋ねるとイアンは少し考えてから口を開いた。


「・・・この話はここだけにしてほしい・・・。いいね?・・・君たちが知っての通り副神官長と王族の誰かが繋がって兄を追い出そうとしている動きがあってね。僕は陰ながら兄さんをサポートしていたんだ。・・・彼らがどうやってスタンピートを起こしたかはわからない。だが王族がかかわっているとなると可能な話かもしれない。二つの大きな権力が力を合わせたんだ。相当数の人数を動かせるはずだ・・・。」

「・・・つまり、ノアは自分でスタンピートを起こしたわけではない、という事ですね?」

「当然だ!・・・まさか君は兄を疑っているのかね?」


突然イアンの体に大きな魔力が覆い始め、イアンは僕を睨む。

だがその行為が僕には嬉しかった。

この人が本気でノアの事を慕い愛しているからこその坑道だとわかるからだ。


「落ち着いてください。僕は一切ノアを疑ってはいません。・・・ただ、ノアの服からこの計画書が出てきたことに驚き受け入れられずにいたので、どうしても確認がしたかったのです。」


そう言うとイアンは魔力を消し、安心した表情を浮かべた。


「・・・そうか・・・。まぁそうだよな。こんなものが兄さんの服から出れば誰だって疑いたくはなるか・・・。」

「すみません。・・・しかしこんな事を言っては不謹慎ですが、一人を殺すために一体どれだけの被害が・・・。やり方が酷すぎる・・・。僕はこの国が好きだった・・・。でも今は・・・。」

「・・・そうだな。今回の事はさすがに目見余る行為だ。・・・だがウィル君。・・・まぁこれは兄さんの言葉なんだけどね。「所詮は人が築いた世界。いい人間がいれば汚い人間もいる。綺麗な世界があれば、汚い社会もある。二つは表裏一体なのだよ。人間と同じようにね。でもそれを嫌って悲観して生きるよりもそれを愛して生きなさい。その方が人生楽しく、そして笑って生きられる。」・・・と。だからね。確かに色々あって兄さんは死んだ。だけどこの国をどうか嫌いにならないでほしい。この国の人の事もね・・・。」

「・・・ノアがそんな事を・・・。」


イアンは突然何かを思い出したように計画書を見直す。


「・・・君たちは明日は時間あるかね?」


僕は皆が相槌を打つのを確認してから答える。


「はい。明日は一日時間があります。」

「そうか・・・。では是非力を貸してほしい。どうも嫌な予感がする。」


ーーーーーーーーーーーーー


シークレットクエスト「英雄を夢見る少年」


クリア条件


兎に角、アレクサンドラ第二王子とアメリア第一王女を守り切れ


ーーーーーーーーーーーーー


・・・こんな内容が曖昧なクエストは初めてだな・・・。


「・・・詳しくお聞きしてもいいですか?」

「うむ。実は明日第一王女と第一王子が帝国領に入るんだ。」

「帝国領に?一体何故・・・?」

「実は今年で第一王女が成人になるのだよ。そしてお互いの国の王族が成人になる時お互いの国の城まで行き成人の挨拶をするのがしきたりなのだ。両国の友好関係を示すためにね。だが最近どうもおかしな動きをしている連中がいてね。・・・兎に角明日この街を通り過ぎて帝国に入る予定なのだ。・・・だがどうも嫌な感じがしてね。まぁ私個人の勘なんだが・・・。」

「・・・いえ。彼らとは面識もありますし、放ってはおけません。その話引き受けます。」

「ありがとう・・・。と言っても出来れば陰ながら援護してほしい。今はまだ大国兵士が護衛してるはずだ。それをいきなり君たちが近寄っては怪しまれて攻撃されかねない。」

「わかりました。」


僕らはその後王子達がこの街を通る時刻や予定などを聞いて宿屋に向かいダイブアウトした。


そして土曜日。

僕はいつも通り朝のランニングをしてジィジの神社に向かった。


「ん?弥生お早う。今日はやけに険しい顔をしておるな。何かあったか?」


ジィジはいつも通り掃除をしていたが僕の顔を見るなり駆け寄ってきた。


「お早うジィジ。やっぱりジィジには誤魔化せないみたいだね。実はAOLでね・・・。」


僕はジィジに大体のいきさつを話した。

仲良くなった人が死んでしまった事、そして戦争が起きそうな事・・・。


「そうか・・・。戦争か・・・。確かに「人生」をテーマにしたゲームなら人の死や戦争は避けて通れない話なのかもしれんな・・・。」

「そうだね。香織さんなんかもそう言ってた。でも僕は嫌だな・・・。戦争なんて・・・。」


僕は戦争で父を亡くしている。

ジィジはそんな僕の表情を見てか僕の頭をガシガシ撫でてくれる。

少し痛かったが僕はこのジィジの撫で方はなんだか元気が出て、安心できて好きだった。


「そうじゃな。戦争は嫌なものだ。最後に残るのは大量の悲しみと粗大ごみだけだからな。それで得するのは一部の権力者だけじゃ。じゃがな、それでも戦わなければならない時はある。それは大切な者を守る時じゃ。」

「・・・大切な者・・・。でもなんだか僕怖いな・・・。」

「まぁな。じゃがこれだけは覚えておきなさい。戦うという事は怖いという事じゃ。そして生きることもな。じゃがその恐怖と戦うことが真に戦うという事じゃ。生きるという事もまた怖く、そしてそれと戦うという事が生きるという事じゃ。」


ジィジは分かるような、分からないような話をしてくれた。

僕が納得をしていない表情をしているとジィジは話を続けてくれる。


「まぁ儂も毎日恐怖と戦っておるからに。恐怖の化身ばあさんの事じゃ。あれは怖いぞ・・・。昨日もな。儂が苦手な食べ物をわざと出してきて「健康のために食べなさい」と言われたが儂は断ったんじゃ。なぜなら食べたくないないからな!じゃが儂がそれを食べ残したのを見るとばあさんは鬼人のような顔つきで襲ってきての。気づけば儂はいつも通り宙を舞い天井からロープで縛りぶら下げられていた・・・。そして儂の口に無理やりそれを突っ込んでくるのじゃ。まさに恐怖!!まさに化け物!!妖怪ばばあ!!」


ジィジは泣きながら力こぶしをつくり語っている。

・・・いい年して好き嫌いしてんじゃないよ・・・。


「・・・誰が妖怪ですって・・・?」


いつの間にかジィジの後ろにはロープを握りしめたばあちゃんがいた。


「お、お早うばちゃん・・・。僕今日は忙しいからもう行くね?」

「ん?なんじゃ弥生。もう悩みは解決したのか?」

「う、うん!!ありがとうジィジ!!僕もう行くね!!」

「弥生。気を付けておかえり。さてあなた。さっきの話を詳しく聞きましょうか?」

「ん?なんじゃばあさんロープなんて持って・・・。・・・待て待て待て・・・。そのロープをどうするつもりじゃ?何で歩いた道が砕けてるんじゃ?何で般若みたいな顔してるんじゃ!?怖いぞ!?ちょ、弥生助けてぎゃぁぁああああああ!!!!」


僕はジィジの悲鳴を背に神社を後にする。

しかしジィジも学ばないよな・・・。

何回ばあちゃんを怒らせたら気が済むんだよ・・・。

僕はそんな事を思いながら帰路につく。

今日は僕らは参加しないがイベント初日。

誰が勝つんだろうなぁ・・・。



帰宅後すぐに準備や朝食を済ませダイブイン。

時刻は午前9時。

王族達がこの街を通るまであと一時間。

僕らは手早くアイテム確認や装備の確認を済ませ馬に乗って街を出る。

昨日イアンから聞いた王族達の通過地点の近くの崖の上から僕らは見守る事にした。

僕らの近くには国境である巨大な、本当に強大な石の扉が見えていた。

これは大国側と帝国二カ所に設置されておりどちらから攻めてきてもすぐに扉を閉めて防衛できるように、という事らしい。


そして10時・・・。

その瞬間それは起こった・・・。


情報通り王族が大群の兵士を連れて移動しているのを発見したとき、突然一部の兵士が仲間を次々と斬り始めた。

そして空にファイアーボールを放ち花火のようにそれが弾けると突然国境の扉があ大きな音を立て開き、帝国側から大群の兵士達が大国側に馬に乗りすごい勢いで走ってきた。

王国側はそれに対処しようと陣形を組むがそれを味方の兵士たちが邪魔をし、うまく陣形を組めずにいる。


そして僕らが驚き何もできないでいるその中、ついに戦争は始まった・・・。


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