第160話バトルロワイヤルその5

イベント開始30分前。


「さぁ!!イベント「バトルロワイヤル」決勝戦まであと少し!!会場はすでに大盛り上がりです!!実況は昨日に引き続き私チャンと!!」

「私セバスでお送りします!!」

「そして昨日のゲストの方々が役に立たなかったので今日はまた新たなスペシャルゲストをお呼びしています!!」

「はい!!では優勝候補のクラン「カンパニー」の皆さんです!!どうぞ!!」

「こんにちはー!!フランジェシカです!!」

「こんにちは!レヴィです」

「こ、こんにちは!!アイーダです!!」

「・・・あ、あれ?お三方だけですか?残りの二人は・・・?」

「ああ。あの二人なら来たくないって。」

「え?・・・ああ。まぁそれなら・・・。では改めましてクラン「カンパニー」のお三方です!!」


会場は三人の登場に驚き、喚声を上げる。

何故なら三人とも美人であり二つ名持ちのプレイヤーだからだ。

そして昨日のゲスト達はまともな解説が出来なかったため、今回の期待の表れが子の歓声の大きさにつながったのだろう。


「ではでは「教祖様」さんに「鍛冶神」さんに「歌姫」さんをお迎えして今日は解説をしていきたいと思います!!」

「早速ですがお三方は今日の試合をどう予測しますか?ではまず「教祖様」からお願いします!!」

「そうですね。なんといっても今回の注目カードは我が「カンパニー」の「俊足の兄貴」ことウィル君と最強PKプレイヤー「さすらい」ことキルの勝負だと思います!」

「なるほど!確かに気になる勝負になりそうですね!確か以前はイベント「サバイバル島」で決闘をされたとお聞きしていますが・・・。」

「はい。それはもう凄まじい戦いでした。私は鼻血が止まりませんでした!!」

「・・・鼻血?・・・ああ。興奮するほど凄まじい戦いだったという意味ですか?」

「そうです!!ああ・・・。あの男同士の汗と汗のぶつかり合い・・・。最初はライバルだった二人が最後には手を取り合い友情を深め、そして恋に発展していく・・・。ああ!!BLこそこの世の全て!!至高の存在!!」

「あ、・・・あの?・・・ちょっと何言ってるかわかりませんでしたがフランジェシカさんでした・・・。」

「皆さん!!最後にこの言葉を捧げます!!「この世。攻めあらば、受けがある。地雷は私の主食。全ての男は我らの主食!!マナーあるボーイズ・ラブ人生を!!ビバ!!腐女子!!ビバ!!腐り!!ああ!!801!!」」

「はーい!フランジェシカさんでしたー!!」


フランジェシカの言葉に一部の女性たちが黄色い悲鳴を上げ、フランジェシカの言葉を復唱している。

因みに男たちはドン引きだ。


「おっほん!!それでは続きまして「鍛冶神」レヴィさん!!今回の決勝戦をどうみますか??」

「そうですね。今回の私達の作った装備は今までの中で最高傑作でした。もし壊れることがあればそのプレイヤーを抹殺します。」

「何といきなりの死刑宣告!!そしてまさかの勝負に興味なし!!さすが「鍛冶神」さん、目の付け所が違いますね!!」

「もちろんです。私は勝負には興味ありません。あるのは装備だけです。そしてやはり気になるのが「鏡花水月」の和装武器が気になりますね。あれはゲームの作り方ではありません。」

「・・・と言うと?」

「あれはリアルの刀などを作る技法をそのままゲームの世界に持ち込んだ作り方ですね。」

「なるほど。という事はスキルを使ってないで作ったという事ですか?」

「いいえ。AOLの世界のスキルの多さは計り知れません。恐らくそれに適したまだ私達の知らない技術があるという事です。」

「何と!!「鍛冶神」さんが知らない技術ですか!それは注目したいところですね!!他にはありますか?」

「はい。クラン「青龍騎士団」の皆さんが使っている武器も気になります。あれは私達と同等近い性能を持っていそうな気がします。」

「「鍛冶神」さん達と同じ性能ですか!!それはすごい!!」

「ですが私達も「鍛冶神」と呼ばれようともまだまだ道の途中。これからどんどんいい性能の武器を作って彼らとの差を見せつけてやります!!」

「まさに技術者ですね!!かっこいいです!もっとお聞きしたかってですが残念ながらお時間です!!「鍛冶神」レヴィさんでしたー!!」


今回は男女両方からの大歓声が上がった。

そして沢山のプレイヤー達からの「武器を作ってくれ」という声も聞こえる。

彼女の知名度はもはや全プレイヤーが疑うことのないものとなっているようだ。


「ではでは最後に「歌姫」ことアイーダさんです!!実は私ファンなんです!!あとでサイン貰っていいですか??」

「は、はい!!もちろんです!!」

「ふふっ。そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ!!そう言えばアイーダさんは歌うときは堂々としているのにトーク中はいつも緊張なさってますよね?」

「は、はい。私歌うときは平気なんですが、基本的に人見知りで・・・。」

「そこがまたいい!!可愛すぎます!!アイーダさんは戦闘職ではありませんが今回の戦闘で注目したいところはありますか?」

「は、はい!!もちろん「カンパニー」の一員なんで皆さんには勝ってほしいです!!みんないつも優しくて暖かくて・・・。私は皆が大好きなので!!」

「私も愛されたい!!「カンパニー」が羨ましいです!!他にはありますか?」

「は、はい!!前に「鍛冶神」の一人Mr.スミスさんに聞いたんですが「メカニック」というクランが気になってます!!」

「ほうほう。クラン「メカニック」は確かに珍しいタイプのクランですよね?」

「そうなんです!ロボットのような装備を使っていると聞いて初めは驚きましたが、日本の文化にはロボットを愛する人たちが多くいると聞いているのでどんなものか今回見れるのを密かに楽しみにしていたんです!!」

「可愛い!!もう何を言っても可愛いです!!本当は永遠に話していたいのですが今回はお時間という事で・・・。アイーダさんありがとうございました!!」

「ありがとうございました!!


アイーダは小さな体を使って大きく身振り手振りで説明する姿を見て多くのプレイヤーは愛娘を見るような温かいまなざしで彼女を見つめ、そして大歓声を送った。

彼女は人見知りと言う悩みを自分から打ち破りつつあり、そしてまた多くのファンを得たことだろう。


「改めましてお三方ありがとうございました!!昨日と違ってとても有意義な時間を過ごすことが出来ました!!」

「はいはい!!ところでチャンさん!昨日の試合ですがなんだかプレイヤーのスタート位置について少し疑問があったのですがその辺いかがですか?」

「はい!実はですね、昨日の予選のスタート位置は運営の方々によって決められていたんです!!」

「え!?一体でどうしてでしょう?」

「それはですね、クランごとの力が偏らないようにするためです。LVの低いチーム、クラン人数の少ないところは優先して街に中心に配置されていたんです!そしてその逆のクランは街の外側に行くように設定されていたと聞きます!」

「なるほど!つまり人数が少なくLVが低いチームでも決勝に残れるように、という運営の配慮ですか?」

「そう言うことになります!!ですが今回の決勝戦は完全にランダムとなっています!!」

「今回の決勝戦は前日と何か変更点はありますか?」

「もちろんです!まず今回の決勝戦は全プレイヤーに残り何クラン生き残っているかがわかるようになっています!!そしてフィールドは前回とは違い王都ではなく浮遊島の王城となっています!ただこの実況がプレイヤーの皆様に聞けないのは同様です!!」

「なるほど!わかりました!ありがとうございます!!」


「ではでは!皆様お待ちかね!!そろそろ決勝戦の始まりです!!せーの・・・。」


「「イベント「バトルロワイヤル」決勝戦!!開催です!!」」




「「・・・は?」」


僕らの周りの景色が歪み決勝戦の舞台である王都へ転移したかと思うと、そこは見知った街ではなく王城の中、謁見の間だった。

そして驚いたことがもう一つ、僕らの転移したすぐ横にクラン「マイノリティ」である「さすらい」キル達がいた・・・。


「・・・マジですか・・・。」

「・・・クックック・・・。運営も分かってるじゃねぇか。俺達でさっさと殺しあえってか?」


唖然とする僕とは違いキルはやる気満々の顔でこちらを見ている。


「・・・これ何の嫌がらせですかね?」

「いいじゃぇか!!俺様はお前とさっさと決着を付けたくて昨日は全然寝れなかったんだ!!」

「・・・子供ですか?」

「何だよ?お前は寝れたのか?」

「・・・いえ。あまり・・・。」

「ギャハハハハ!!同じじゃねえか!!」


僕らはすでに武器を構えながら対峙している。

一度しか来たことのない部屋だが、以前のように王様がいて沢山の貴族や兵士がいたこの部屋が今は僕たちだけという事で変に静かだった。

その静けさがさらに僕らへと緊張感を与えている。


「・・・あ?なんだこの数字は?」


キルが視界の端を眺めた時、僕も同じ数字に気づいた。

そしてその数字は「50」から「49」に変わったところだった。


「確か今回は残りチームが何組いるかわかる仕様だと聞いていますよ。」

「なるほどなぁ。早速一チーム消えたって事か。んじゃ次はお前たちだな?」


そう言うとキルの体には力強い魔力が流れ始める。


「お兄ちゃん!!頑張れー!」

「負けるんじゃねえぞウィル!!」

「ん。思う存分戦いなさい。」

「ウィル。負けるんじゃないわよ!!」


皆からの激が飛んでくる。

・・・え?皆は戦わないの?

なんで皆後ろで楽しそうに眺めてるの?

僕たちチームだよね?


「ちょ、ちょっと!!皆は戦わないの?」

「うむ!!見ていた方が楽しそうだ!!」

「ガッハッハッハ!!ウィル!!男と筋肉を見せてやれ!!」

「兄貴!!かっこいいところ見せてくれ!!」

「男の決闘を邪魔するほど俺たちは野暮じゃないぜ!!」


皆は完全にお祭り気分で僕らを見守っている。


「ギャハハハハ!!お前の仲間も分かっているじゃねえか!!おい!!テメェらも手ぇ出すんじゃねえぞ!?」

「「「「「へい!兄貴!!」」」」」


キルの仲間も手を出さずに見守るようだ。

・・・ナニコレ?

なんで僕たちが決闘する流れになってるの?


「・・・じゃあ早速いきますか!!」

「いきません!!いきませんってば!!ちょ・・・うお!?」


キルは僕の言葉を待たずにこちらに突進してきて双剣を振るってくる。

僕は間一髪で避けるがキルは構わず何度も攻撃を仕掛けてくる。


「ギャハハハハ!!さっさと本気を出さねえと死んじまうぞ!?」

「・・・くっそ・・・。「空間把握」「俊足」「剛剣」!!」


キルの双剣をクロスした攻撃を僕は受け止める。

ギリギリとお互いの剣がこすれる音が静かな部屋に鳴り響く・・・。


「・・・そう言えば剣新しくなったんですね?」

「ああ。この前のイベントのおかげでミスリル素材の双剣になったぜ?これでもう折れる心配はしなくて・・・いい!!」

「・・・がっ!?」


キルはしゃべるのと同時に剣を引き、僕の体制が崩れた隙に腹部に蹴りを入れてきた。

ガッシャァァン!!

僕はそのまま近くの窓を突き破り外まで飛ばされていく。

皆の僕を呼ぶ声が一瞬聞こえるが次の瞬間風の音以外聞こえなくなる。

白の外の景色が広がり、ここが浮遊島の上の王城という事を教えてくれる。

少しの浮遊感の間「景色が綺麗だなぁ・・・」、と一瞬考えたが重力には逆らえずすぐに落下を始める。


「・・・くそ!!」


運よくすぐ下に城壁塔なのか突き出た建物があり、その屋根に剣を突き立て何とか落下を防ぐことが出来た。

割れた窓までの距離は30mと言ったところだろうか・・・。

ここからでは飛んでも届かないだろう・・・。

そう思っているといきなり窓からキルが飛び出してきてこちらまで飛んでくる。


「オラオラオラ!!勝手に死んでんじゃねえぞ!?」


叫びながらキルがこちら目掛けて落下してくる。

・・・こんなとこまで来なくていいのに・・・。


「「乱れ切り」「かまいたち」!!」

「ば、馬鹿なんですか!?」


キルは空中でかまいたちの猛攻撃を仕掛けてきた。

避ければ全てこの小さく狭い塔に当たってしまい塔は崩れ落ちるだろう・・・。

かといってあれを全部防げる気がしない・・・。

と言う事は逃げるの一択!!


僕は城の壁目掛けジャンプをする。

壁は角度が急斜面になっている為立つことはできないが壁を走るように移動することはできそうだ。


「オイ!!逃げるなぁあああ!!??」


キルは自分で壊し崩れ落ち始めている塔に突っ込んでいき瓦礫の中に消えていく・・・。

・・・馬鹿だなあいつ・・・。


僕は壁を走り再びジャンプし隣の城壁塔に着地する。


「オラオラオラーー!!」


突然瓦礫が爆発したかと思うとキルは僕と同じように瓦礫の中から壁に飛びそのままこちらまで飛んでくる。

もうあの人、人間やめてるな・・・。

まぁ龍人だからとっくにやめてるのかもしれないが・・・。


「「乱れ切り」「かまいたち」!!」


今度は僕が攻撃を仕掛けるがキルはうまくかわしこちらに着地する。

今僕らは城の外の塔の屋根の上で向かい合っている・・・。


「・・・こんなところまで来なくてもいいのに・・・。」

「ギャハハハハ!!なんだか最終決戦をしているみたいだぜ!!まさにファンタジー世界ならではの光景だ!!」

「・・・確かに綺麗ですね・・・。」

「・・・だな。」


標高は2000mは超えているかもしれない・・・。

そんな高さの中、そして見渡す限りのファンタジー世界の中で、僕らは小さな塔の上で剣を構え、そして二人の剣はぶつかり合った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る