第132話サバイバル島、その8

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オリバーーーおい!今のアナウンス「カンパニー」じゃないだろうな!?


ウィルーーいや、僕たちだ。ごめん。


オリバーーーなんで謝るんだよ?さすがだな!!こっからさらに熱くなってきたぜ!!


ウィルーー・・・怒んないのか?モンスターが活性化したこと。


オリバーーー怒ることないだろ?だってそういうイベントなんだろ?だったら怒ることないだろ。それに俺たちも「古代文明の島」ですでに水晶は見つけているんだ。だけど何をすればいいのかわからなかったから助かるぜ!!


ウィルーーそう言ってもらえると助かるよ。そういえばMr.からちゃんと地図送られてきたか?


オリバーーーああ!ありがとな!あとこっちからも情報だ。こっちにも壁に描かれた文字を発見してな。どうやらこの水晶はモンスターを封印するためのものらしい。しかもそれだけでなくモンスターの餌になる魔力も多く封印されていたらしい。


ウィルーーーじゃあやっぱり解いたらまずかったって事か?


オリバーーーいや、どうやら封印者はそれでこの島が安定したと思っているらしいが、あとから調べた冒険家によるとどうやらこの水晶はあまり長くはもたないらしい。


ウィルーーーそれって「白うさぎの冒険日記」じゃないだろうな・・・。


オリバーーー正解だ。やっぱりそっちにもあったか。それで話には続きがある。もしこの封印を解いて魔物を倒さなかったらいずれここのボスたちは地上に降りたって町々を破壊するだろうって。


ウィルーーー・・・つまり?


オリバーーーつまりだ。今ここで倒さなければならない敵ってことだ。恐らくこのイベントは強いモンスターが地上に来る前に先に倒してしまえって事になるな。


ウィルーーーなるほど・・・。そのために僕らがここに来たわけだ。


オリバーーー恐らくな。まだ情報不足だが。だがやっておくに越したことはない。「カンパニー」のおかげでボスの解放の仕方も分かったしな。この情報は全プレイヤーに流しておいていいか?もちろん一個目は「カンパニー」が解放したことは伏せておく。じゃないとpkで狙われる対象になっちまうからな。


ウィルーーーそうしてもらうと助かる。色々ありがとな。


オリバーーーそれはこっちのセリフだ。じゃあな!!


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「・・・つまりアイリスはいい事をしたわけだ。」


「だ、だよね!!アイリスわかってたんだ!!」

「嘘仰い。汗だらだらじゃない。」

「ん。さっき泣きそうだった。」

「ふふっ。またまた結果オーライね。」


僕らは先ほどのリビングでくつろいでいた。


流石に戦闘続きで疲れていたからだ。


一度ここでダイブアウトし昼休憩をとる。

その後13時に再びダイブイン。


行先を決めるために皆で情報集めの為、掲示板を見ている。


「何かいい情報あったか?」

「・・・駄目ね。似たようなのばっかり。」

「こっちもだめー!!「~~にPKされた!絶対やり返す!」とか「誰か~~をやってくれ!」とかそんなのばっかり・・・。」

「ん。ここのモンスターはテイムしやすいみたい。」

「そうね。でも大したモンスターは今のところいないみたいね。それにしても開始4時間ですでに1/3近いプレイヤーが死に戻りをしているのね。まさにサバイバルね。」


ここまでの情報は、「ダンジョンの情報」、「PKプレイヤーへの愚痴」、「モンスターをテイムした自慢」、その3点に加え先ほどオリバーが流した「水晶とモンスター」の情報のみだ。


水晶の件は初めは批判が多かったが、段々と今倒さなければならない、という話になってきている。

その為いくつかの水晶の情報や、ダンジョンに書かれている壁画のスクショが多く出回ってる状態だ。

因みにこの件については「ダブルナイツ」「悪魔結社」「鋼鉄騎士団」が率先して情報操作し、いい方向に持っていってくれたおかげだ。

そして3クラン合同で先ほどオリバーが言っていた2つ目の水晶はすでに解放済みだそうだ。

場所は「古代遺跡の島。」

残るは、「真冬の島」「ホラーの島」「砂漠の島」の3つとなった。


「つまり次の行き先は「真冬の島」ってことだね?」

「何が「つまり」よ。ただ「ホラーの島」に行きたくないだけじゃない。」

「「砂漠の島」にも行きたくないしねぇ・・・。」

「ん。熱いのは嫌。」

「まぁ仕方ないか・・・。それじゃ行きましょう・・・か・・・ん?」

「どうした?エリザベス。」

「・・・レヴィ達から「SOS」のメッセージが送られてきたわ。」


僕らが行先を決めていた時、エリザベスのチャットに「SOS]メッセージが来たみたいだ。

レヴィ達は現在「ホラーの島」にいるはず・・・。

ということは・・・。


「これは緊急事態だね!!「ホラーの島」にレッツゴーだね!!」

「ウィル・・・・そんな顔しないの・・・。仲間のピンチよ?」

「ん。助けに行くべき。」

「そうね。とりあえずメッセージは送ってみたけど返信がないところを考えると緊急なのかもしれないわ。」


確かにそうなのかもしれない。

これは腹をくくるしかないな・・・。


島の転移はコイン一枚でできる。

僕らはメニュー画面にある転移ボタンを押す。


「「「「「転移、「ホラーの島」。」」」」」


僕らが唱えたあと、周りの景色が歪んでいく・・・。



「・・・ここは・・・町ん中・・・?」

「そうね。「滅びた町」って書いてあるわ・・・。」

「ということは近くにレヴィ達がいるってことだね?」

「ん。町の中の墓地にいるはず。」

「まずは手分けして探してみましょう。もし見つかった場合はすぐに突撃せずに皆に「念話」で知らせること。いいわね?アイリス。」

「う~~・・・。わかってるよ~~。」


十字になっている道をそれぞれ分かれて探索する。


僕は勘で南の方に家の屋根の上を飛んで探索することにした。

町はそこそこ大きいみたいだ。

僕は近くにあった時計塔を見つけ、その中に入る。

崩れかけた階段を上り、一番てっぺんに上る。

そこから「遠目」を使い、町全体を見下ろす。


墓地は・・・・あった。


(こちらウィル。墓地は南東の町の端にあるみたいだ。)

(こちらチームα。了解。今から向かいます。)

(こちらチームβ。わかったわ。直ちに向かう。)

(ん。γ。了解。)

(こちらチームリーダー。皆。慎重にね。)


何軍人ごっこしてるんだ・・・。

チーム名なんか決めた覚えはない。


僕も急いで時計塔から駆け下りて、屋根の上を飛び、最短距離で向かう。


かなり近づいた時、僕はSOSの理由が一目でわかった。


そこには6名ほどのプレイヤーが、墓地の中心で縄で縛られていた。

その中にはレヴィ、Mr.、フランジェシカの姿があった。


そしてその周りを取り囲む24人の男たち・・・。

その中には忘れもしないらっきょ顔のケンちゃんと、アイリスに「ファイアーボール」を当てた男がいた。

つまりあいつらはPKクラン「デスペラーズ」ということだ。


(こちらチームα。到着しました。今、北の木の影から状況確認中。どうぞ。)

(こちらチームβ。東の家の二階にいるわ。デスペラーズね?)

(んγ。西の銅像の裏。どうするの?)

(こちらチームリーダー。まずは状況を見ましょう?ここで無理に攻撃しても人質を取られるだけだわ。)


(なぁ。皆、初心者マークを付けているぞ?これなら攻撃されないんじゃないのか?)

僕は気づいた疑問を口にしてみる。


(えー。あなたは誰ですか?ちゃんとチーム名を仰ってください。)


まさかのアイリスからお叱りを受ける。

そして疑問にさえ答えてはもらえなかった・・・。

このごっこはいつまで続くんだ?


(あー・・・。こちらチームデルタ・・・。攻撃の件どうなんでしょうか・・・?)

(あぁ!δだね!?安心した!味方だね!)

(δ。甘いわよ?攻撃できないんじゃなくてダメージが入らないだけ。PKができないだけよ。)

(ん。痛めつけることはできる。)

(そういうことね。それに無理やり仲間を呼び出させて、何も知らずに来た相手をPKしてコインを奪うやり方もあるわ。)


皆エグイ事考えるな・・・。

しかし実際そうなのかもしれない。


僕らに「SOS」が届いたのも、「デスペラーズ」が無理やりやらせたことなのかもしれない。


(ねぇ、δ?そこから「念話」スキルでレヴィ達と会話できない?)

(無理だと思うよ。念話スキルは初めて繋ぐ相手とは結構距離が近くないと難しいし、魔力の流れで相手に気づかれる恐れがあるからね。一度でもつないだことがあるなら別だけど・・・。誰もいないよね?)

(こちらα。ありません。)

(こちらβ。すみません。ありません。)

(ん。γ。ない。)

(こちらチームリーダー。こんな事なら一度繋いでおけば良かったわね・・・。)


あるわけないか・・・。

大体「念話」スキル自体この5人以外に話したことはない。

・・・まぁ単に忘れていただけなのだが・・・。


僕らが打つ手がなく様子を見ていると、誰かが町の方から墓地に走ってくるのが見えた。


「皆!!無事!?」


「鏡花水月」の卍、フクチョー、座長さんの3人だ。


・・・そういえばMr.達「鏡花水月」の生産者達と行動するって言っていたな。

なら縛られているレヴィ達以外の人は、「鏡花水月」の生産者たちか・・・。


「あんた達!!今すぐ彼らを解放しなさい!!卑怯ですよ!酷いですよ!人質なんかとって!恥ずかしくないんですか!?」

「そうやねぇ。うちもさすがに、これはやりすぎやと思うで?」


どうやら3人は人質解放の為に来たみたいだ。

ここは彼女たちと一緒に戦うべきか・・・?


(チームリーダーより、全員待機。いい?彼女たちの動き次第で全員の集中がそっちに行くはず。そうしたらその隙に人質を解放しに行くわよ。今出ても何も変わらないわ。)


流石エリザベス。

心を読まれた気がする。

言われなければ出ていくところだった・・・。

皆よくこの状況で冷静でいられるな・・・。


(こ、こちらα!わ、わかってるよ!!出ていかないよ!!)

(こ、こちらβ。で、出ていかないわよ。当り前じゃない!)

(ん。γ。と、当然の判断。わかりきってた事。)


お前たちもかい。

皆、すごい動揺してんじゃねぇか・・・。

絶対エリザベスの指示がなかったら出て行ってたな・・・。


(こちらδ。出ていくタイミングをチームリーダーから指示してくれない?)

(チームリーダー了解。指示出すわ。)


僕らの判断では今にも飛び出してしまいそうなので、一番冷静なエリザベスの判断に任せることにした。


「おいおい。これはゲームなんだぜ?このくらい当然だろう?」

「そうだぜ。ケンちゃんの言う通りだ。」

「それに俺たちはただこいつらを縛っただけだぜ?そんな怒ることないだろ!?」


ケンちゃんの取り巻きたちが3人の前に立つ。

その距離20m。

そして人質を囲んでいる人数が15人ほどになった。

・・・まだ出て行ってはダメなのか・・・?


「ふざけないで!!あなた達が護衛の男だけをぼこぼこに叩いて、脅してからコインを全て奪ったことは知っているわ!それに女性に服を脱げと指示しているそうじゃない!!この変態達!鬼畜達!!」


「はははっ。ここはVRの中だぜ?裸を見られたっていいだろ。所詮、仮想世界だ。見られて減るもんでもないだろ。だがこいつら中々殴っても蹴っても脱ぎやがらない。つまんない奴らだぜ。」

「さっさと脱いじまえば痛い思いしなくて済んだのにな!」

「こっちが脱がせちまうとハラスメント警告が出て一発退場だからな。」


こいつら・・・。

絶対に許さない・・・。


ゲームなのかでは服の汚れなどはわかるが、体に傷口はつかない。

その為彼女たちがどんな目にあったのかは、一目ではわからなかった。


(エリザベス!!)

(まだ駄目よ。あと少し・・・。)


クソッ・・・。

こいつら全員一発殴らなきゃ気が済まない・・・。


「それに捕まる弱いこいつらが悪いんだよ!!この世は弱肉強食だ!!リアルだってそうさ!弱い奴は虐げられて奴隷みたいに働かされる!この世界だって弱い奴に権利なんかねぇんだよ!!」




「・・・それは同感だな。しかし楽しそうな事してんじゃねぇか。俺も混ぜろや。」


町の外から一人の龍族の男が何か飲みながらふらふらと入ってきた。


(皆武器を構えて!!そろそろ行くわよ!!)


エリザベスの指示だ。


僕らは武器を構える・・・・。

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