第128話サバイバル島、その4
「あ、ありがとうございます・・・。」
「気にしないで。それよりもアイリスは・・・?」
イカの攻撃範囲から抜け出した僕の目に映ったのは、イカの大量攻撃を一本の大剣でさばいている妹の姿だった・・・。
うちの妹、人間やめたのかな・・・?
・・・あれ?
というかそれができるなら僕が行く意味なかった・・・?
「ウィルさん!!私たちも攻撃に加わりましょう!」
辺りを見ると霧の中からプレイヤーが飛び出し攻撃を加え、離れた所からは矢や魔法が飛んでいた。
「・・・そうだな。アイリスを助けよう。」
「はい!!。」
僕らは戦っているアイリスのそばに駆け寄り振り下ろされる足を受け流す。
正面からはじき返せなくても受け流すくらいはできそうだ。
・・・正直手はすっごい痺れるけど・・・。
「お兄ちゃんッッ!!ありがと!!」
「それはこっちのッ!セリフだッッ!!ハッ!」
卍と僕の加わった3人が足を捌き、残りのプレイヤーが攻撃を仕掛ける。
が、僕らが受け流した攻撃が他のプレイヤーに当たり吹き飛ばされたりもしている。
中には一撃で消えていくものもいるみたいだ。
目の前の隅に表示されているプレイヤー人数がどんどん減っていく・・・。
このままではまずいな・・・。
せっかくだからみんなで勝ちたい。
戦闘後、例え敵になろうとも・・・。
(エリザベス!このままだと勝ててもプレイヤーが減る一方だ。何かいい手はない?)
(あら。お人よしね。この後皆とも戦うのかもしれないのよ?)
(それでも!)
(ふふっ。わかったわ。答えは簡単よ。あなた達が一カ所にいるから攻撃が激しくて周りにいる人たちにも被害が行くの。あなた達が三方向に別れば足も三方向に分かれて攻撃するための足の本数も減るわ。2,3本受け流せばいいの。それなら他の人でも避けられるでしょ?それでも避けられない人は残念ながらまだここの場に立つには早いって事よ。)
「お兄ちゃん!!」
「ああ!!」
僕とアイリスは念話の後に同時に左右に分かれる。
するとエリザベスの言う通り、攻撃は三方向に分かれ、受ける攻撃回数が減った。
卍は初め僕らが動いたことに驚いた顔をしていたが、自分に来る攻撃回数が減り理解したようだ。
水蒸気はこのイカれたイカの攻撃が地面に当たる衝撃でとっくになくなっている。
後は僕らが攻撃を捌きながら他のプレイヤーを信じるだけだ。
その後、5分と経たずにイカのHPは1本になる。
ここからが正念場だ。
初め36人いたプレイヤーに加え2パーティが途中で加わったが、現在残り24名。
大分減ってしまった・・・。
イカは赤い魔力を放出しだす。
イカはそのまま側転し湖に入り、潜って隠れてしまう。
というか移動の側転は絶対なんだね・・・。
なんかアホな画ずらだからやめてほしいんだが・・・。
気が抜ける。
不意にイカは湖から顔を出しイカ墨をまるで鉄砲のように吐き出す。
皆急いでかわすが1人のプレイヤーが攻撃を受けてしまった。
「・・・くそっ!前が見えない・・・!!」
どうやらイカ墨を食らうと前が見えなくなるらしい。
イカはその混乱しているプレイヤー目掛け「アイスロック」を飛ばす。
「・・・危ない!!」
僕は急いで飛び出しその男を突き飛ばそうとしたが、あと少しのところで間に合わず男は攻撃を受けてしまう・・・。
男の目が見えるようになったようで、倒れながら目を見開く・・・。
男と僕の目が合う。
僕の伸ばした手を必死な顔でつかもうとしながら、男は光の粒子となってシステムの中に消えていく・・・。
・・・助けられなかった・・・。
知らない人だが、なんだか悔しさがこみあげてくる。
イカは再び湖に隠れていく・・・。
できればここで湖に飛び込んで一発あのイカを殴ってやりたい。
だが入ればそこは相手のテリトリー。
生きては帰れないだろう・・。
・・・絶対あいつを倒してやる。
僕は今更ながら気合を入れなおしイカと向き合う。
再びイカは顔を出しイカ墨を飛ばしてくる。
皆避けるがまた一人のプレイヤーが食らってしまう。
イカはまた彼を狙って攻撃してくるだろう。
僕は急いで走り、男の方に駆け寄る。
再びイカはアイスロックを飛ばしてくる。
今度は間に合え!!
僕は心で叫びながら走り、彼を突き飛ばす。
間一髪のところで間に合い、僕の頭上を氷の塊が飛んでいく。
僕らは一度転がり、すぐに立ち上がる。
「誰か!?こいつの仲間はこいつを湖まで連れてって顔を洗ってやれ!!」
僕の声に二人の男女が近づいてきて彼を両側から支え、湖に連れていく。
その間にも何度か攻撃を受けるが、皆目がなれてきて、攻撃をうまくかわす。
イカは攻撃が当たらない事に腹を立てたのか、段々と近づいてくる。
「今よ!!」
エリザベスの声と共にクリス、アイリス、エリーゼは何かを湖に投げ入れる。
すると水は勢いよく飛び上がり、イカも思わず陸まで上がってくる。
彼女たちが投げ入れたのはプチボムだろう。
今回はフランジェシカに助けてもらいっぱなしだな・・・。
イカは陸に上がり、何を思ったのか2本足で立ち上がる。
その光景は正直気持ち悪かった。
そのままイカはくるくると回転しだした。
まるでコマのようなイカに、皆近づけなくなってしまった・・・。
どうする・・・?
「お兄ちゃん!!」
アイリスがこちらに走ってくる。
何かいいアイデアが浮かんだろうか・・・?
「あのイカ凄いバランス能力だね!!なんだかイカリングが食べたくなってきちゃった!!」
・・・この子は何を言っているんだろう・・・?
まぁ、アホな妹は放っておこう。
イカは回転で皆が放った攻撃をはじいている。
「ウィル!網よ!!」
クリスの声にハッとする。
僕とアイリスは急いでインペントリからアイテムを取り出し魔力を込める。
誰も掛け声はしなかったが「カンパニー」の皆は同時に「スパイダーネット」を投げる。
ボンっという音と共に網が広がりイカの足に絡まる。
イカは突然足に網が絡まりそのままバランスを失い倒れる。
「皆今よ!!」
エリザベスの声と共に一斉にイカに飛びつく。
我先にといった感じに倒れているイカ目掛け皆は攻撃し、あっという間にイカを撃退できたのだった・・・。
ーーーーーーーーー
特殊モンスターを討伐しました。
参加した全プレイヤーに10枚のコインが与えられます。
お疲れさまでした。
ーーーーーーーーーー
「「「「「「「勝ったーーーー!!!」」」」」」」」
目の前に文字が浮かんだ瞬間、皆が叫びお互いに褒めあう。
僕らもほっとし喜びあう。
が、それもつかの間、すぐにパーティ同士でかたまり、武器を構える。
今は「サバイバル」中だ。
他のプレイヤーは敵同士だ・・・。
皆、膠着状態が続く・・・。
「皆聞きなさい!!ここで共闘した者同士で戦うのは得策とは思えないわ。必ず遺恨が残るはず。もしそれでも戦いたいと思うものは私たち「カンパニー」が相手になるわ!!もし、その気がない者は武器を収めなさい!!」
エリザベスの声が静まり返った湖の畔に響く。
・・・・え?僕まだ戦うの?
嫌だよ・・・。
「・・・私たち「鏡花水月」は武器を収める。戦闘はしない!」
先ほど一緒に戦った卍が叫ぶ。
だが皆まだ迷っているようだ。
今戦えばリスクはあるが、リターンも大きい・・・。
「・・・俺たちも戦わない。さっき「カンパニー」に助けられたんだ。その恩がある。…さっきはありがとう・・・。」
先ほどイカ墨を食らっていた男が言い、武器を収める。
それを見た他のプレイヤー達も次々に武器を収め、北に歩き出す。
僕は戦闘にならなくてよかったと思った。
せっかく皆で頑張ったのに、そのあと殺し合いなんて悲しすぎるから・・・。
先ほどの男がこちらに近づいてくる。
「・・・改めてさっきはありがとう。それに最初にイカ墨を食らったやつもパーティメンバーだったんだ。さっきそいつからあんたに「助けようとしてくれてありがとう」って伝えてくれって。・・・じゃあ伝えたぜ?じゃあな・・・。」
そう照れながら言い、北に向かっていった・・・。
北にはここからでも大きな古城が見える。
恐らくみんなの目的地はそこだろう・・・。
「お兄ちゃん!!お疲れー!」
「皆お疲れ様。特にウィルは。何度もありがとね。」
「ん。二度目もいい突撃だった。褒めて遣わす。」
「ふふっ。無茶なお願いしてごめんね?」
皆がかけよって来る。
「・・・全くだよ。もうあんなことしないからな。」
「むふ。これから何度もある気がする。」
「やめろって。本当にありそうで怖いわ・・・。」
僕らが労いあっていると、卍と他3人が近づいてくる。
「お疲れ様。さっきは作戦に参加させてくれてありがとう。それに助けてくれてありがとね。」
「いや、こっちこそ。しかしそのLVであのイカの攻撃を捌いたのはすごかったね。」
改めて見ると卍は美少女だった。
いや、卍だけではない。
着物でポニーテールの卍は、着物がよく似合っている。
年はエリザベスと同じだろうか・・・?
他二人も着物がよく似合った少女とお姉さんだった。
何故か少女は僕を睨んでいるが・・・。
「ほら、姉様。行きましょう。もういいでしょう?」
少女の方が卍をせかす。
「あらあら。フクチョーはやきもちやなぁ。そんなせかしたらあかんよ?」
もう一人のお姉さんがフクチョーと呼ばれた少女を嗜める。
・・・なにがどうなってるんだ・・・?
「あ、あの。ウィルさん。・・・あ、握手してください!!」
卍が頭を下げてこちらに手を差し出してくる。
・・・だから何がどうなってんだ・・・?
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