第116話静かな森、後編


・ホネホネマリオネットソルジャー  LV51 ×50


「そんなに強くはないが・・・。」

「ん。数が多い・・・。」

「皆!マリさんを囲ううように戦うんだ!」


プライドの言葉で、僕らは4方向に分かれ戦うことになった。


「よし、初めから全開で・・・。」

「ウィル!!ダメよ!!力を温存しながら戦いなさい!!」


僕が全力で戦おうとしたところ、エリザベスから待ったがかかる。

何故?と思ったが、エリザベスの指示が間違ったことは人生で一度もない。

僕は力をMPを温存しながら戦うことになった。


エリーゼからのブーストをかけてもらった後、僕は飛び出し、剣を振るう。


ソルジャー達はそれぞれ均等に4カ所に分かれている。


一カ所12,3体だ。

できるだけ魔力を温存したまま、かまいたちなどでまずは範囲攻撃をしてみる。


だが骨たちは「スポッ」と音をたてて、自分で首を外したり上半身と下半身をばらばらにしたりして攻撃をよける。


「・・・そんなのありかよッッ!」


初めは驚いたがあまり動きは速くないようだ。

筋肉がないからだろうか・・・。

確実に剣の軌道を見てからでも避けられる。


「ん。ライトアロー。」


僕とソルジャーの剣が鍔迫り合いをしていると、エリーゼの魔法がソルジャーの足に当たる。

体制を崩したソルジャーの首を、思い切り切る。

ソルジャーの頭は落ちる・・・が、落ちたソルジャーの顔は笑いだし本体が顔を拾い付け直す。

まるでどっかのあんパンのヒーローみたいだ・・・。


「魔石だ!!胸にある魔石か、光魔法でないとこいつら攻撃が効かないぞ!!」


悪魔結社の声に従い、光魔法をエンチャント。

確実に胸の魔石を狙っていく・・・。


相手の体はもろいので魔力脚で足を払い、取れた足を拾おうとしているところを背中から魔石目掛け剣を突き刺す。


2,3体倒したところで、視界の端で何故かエリザベスがエリーゼに杖を向けていたのが見えた。

「何で!?」と思いながらも急いでエリーゼに駆け寄る。

エリザベスは杖に魔力を溜め、魔法を放つ。

・・・間に合わないッッ・・・。


「アイスウォール。」


エリザベスの魔法が放たれる。


ガキィィィィン!!


氷の壁はエリーゼの前で完成し、金属音のような音をたてる。


皆何事かと振り返り、驚愕の顔をする。


何と、エリーゼの前にできた壁に向かって、マリさんがナイフを突き立てていた。

あの壁がなかったらエリーゼは刺されていただろう・・・。


「アイスアロー。」


エリザベスは続けて魔法をマリさんに放つが、マリさんは飛びのき矢は壁に当たって消えていく。


マリさんが僕らの円の外に着地し、その周りを守るかのようにソルジャー達は集まっていく・・・。


「・・・いつから気づいて・・・いた・・・?」


マリさんが先ほどまでの女性らしい声とは違い、低い男性のような声でしゃべる。

僕や悪魔結社はまだ何が起きたかわからない、という顔をしている。


「初めて会った時からよ。理由を出したらキリがないくらい貴方は不自然なんだもの。」

エリザベスが「当然」といった顔をする。


「そうか・・・。参考までに聞かせてくれないか・・・?次に生かしたいからな・・・。」

「ふふっ。魔物も冗談を言うのね。次なんかないのに。」

「なにっ!?」

「まぁいいいわ。まずこの村は本来誰もいない廃墟なはず。そこに生き残りがいるなんておかしいわ。それにいつから隠れてたかわからないなんて、人間にはまず無理よ。死んでしまうわ。それに何故村長が台所で死んだってわかるの?それがわかるのは殺した本人だからよ。」

「・・・・・・・・・・・。」

「まだあるわ。貴方魔石が砕けて消えていくとき手を伸ばしたの。あれ、悲しいからではなくて食料が消えていくから悲しかったんでしょ?魔石の皆が言いたかった事は、本当は魔物は姿形を変えれるって事なの。他にもあるけどまぁこれくらいにしといてあげる。」


エリザベスが言い切り満足した顔をし、マリさんは悔しそうな顔をしている。


「で、でもマリさんは人間の格好を・・・。」

プライドが藁にも縋るような顔でエリザベスに問いかける。

「あれは幻覚魔法よ。私たちはあれを受けるのはもう4回目なの。さすがにわかるわ。」


すみません・・・。

全然わかりませんでした・・・。


「幻覚魔法はね。まず影ができないのよ。それに風で服や髪がなびいたりしない。あくまで錯覚で映し出されているだけの幻なのよ。」


名探偵エリザベスが答えを教えてくれる。 

どっかの小さな探偵にも劣らない名推理だ・・・。


「ふふっ。真実はいつも一つってね。」


あ、心を読まれた。

エリザベスがこちらにウィンクをしながら決め台詞を決める。

ちょっとドキドキしたのは内緒だ・・・。


「・・・なるほど・・・。なかなか目はいいようだな・・・。だがそれだけでいい気になるなよ・・・。」


マリさんの幻影魔法が解けて、本来の姿を現す。



・パペットマスター鈴木 LV62


・・・・・・誰?

見た目はピエロのような恰好をしている、鈴木さんが姿を現した。

何故鈴木さんなんだろう・・・。

またAOLの小さなおふざけか・・・。

爺さんが笑ってるのが目に浮かぶよ・・・。


さて残りのソルジャーは35体。

マリオネットであることから、恐らく鈴木さんを倒せば周りのソルジャー達は消えていくだろう・・・。


「・・・てんめぇ!!よくもだましたな鈴木!!」

「ふざけんな!!俺たちの青春を返せ鈴木!!」

「甘づっぱい青春を返せ鈴木!!」

「あのドキドキを返せ鈴木!!」

「結構好きだったんだぞ鈴木!!」

「デートプランまで考えてたんだぞ鈴木!!」

「海の見える丘でプロポーズしたかったぞ鈴木!!」


彼らの青春の一ページがまた、幕を閉じたみたいだ・・・。

というか最後の、妄想が暴走しすぎていないか?

プロポーズってもうゴールじゃないか・・・。

どんだけ進んだ関係なんだ、二人は・・・。


「兄貴!!あいつは俺たちにやらせてくれ!!」

「そうだ!!俺たちの過ちは俺たちが終わらしてやる!!」

「二度とこんな気持ちを抱かないために!!」

「恋の馬鹿やろーだ!!」

「恋なんてぶっ飛ばしてやる!!」

「何が恋だ!!何が愛だ!!」

「何が結婚だ!!何が子供は3人欲しいだ!!何が目と口はパパに似てるねだ!!」


「あー・・・。どうぞ。あんまり無理すんなよ・・・。」

「「「「「「「合点招致!!」」」」」」」


なんかかわいそうな奴らだな・・・。

いつまでも報われない・・・。

そして最後の・・・・。

もう子供まで作っていたのか、妄想で・・・。


まぁめんどくさかったし、ちょうどいいか。

任せちゃおう・・・。


「しょうがないな!!ならおお兄ちゃん!!周りのやつらどっちが多く倒すか勝負ね!?」

「私も参加する!!ビリの人は何でも言うこと一つ聞くのね!!」

「ん。私不利。」

「エリーゼは可愛いからすでに優勝よ?2位以下を決めましょう!」

「・・・私は不参加でいいわよね・・・?」

「じゃあ僕も不参加で・・・。」

「「「「駄目!!」」」」



いきなり始まった理不尽な勝負。

フランジェシカは不参加みたいだ。

いいなぁ・・・。


僕が駆け出そうとすると、足元に矢が刺さり、思わず立ち止まってしまう・・・。


「・・・てへっ!間違えちゃった!!」

「嘘つけ!!姉さんが間違うわけ、あぶねっっ!!」


今度は僕の顔の横を氷の矢が飛んでいく。


「あら、そんなところで立ってると危ないわよ。」

「わざとだろ!!大人げないぞ二人とも!!・・・絶対負けない!!」


やられたらやり返せ、だ!!

僕は賭けだし一匹でも多く狩り、皆をぎゃふんと言わせてやるん「うぉお!!??」


「あれ?お兄ちゃんそんなとこにいたんだ?危ないから下がってて!!」

「お前こっちくんな!!下がったら負けるだろ!!」

「ひどい・・・。可愛い妹に向かってこっちくんなって・・・。」

「可愛い妹は大剣で僕の首を刈ろうとなんかしませ、「ライトアロー」くそ!!来ると思った・・・。」

「ん。外した。」

「ちょっとは隠せよ!!何堂々と外したって言ってんだよ!!敵を狙え!!敵を!!」


くそ・・・。

このままでは・・・。



結果から言って結局負けました。

まぁわかってはいたんですがね。

ずるいんですよ奥さん?

4人がかりで足止めしてくるんですよ?

それに敵までいるし。

そりゃ勝てないって・・・。

大剣を避ければ矢が飛んでくるし、進もうと思ったら氷の壁ができるし光の矢が飛んでくるし。

もう無茶苦茶ですわ・・・。


悲しくなって後ろを振り返れば、ヒャッハーって、青春返せーって、変態たちが暴れてるし。

その後ろを見れば、ヒャッハー男達を見て「やっぱりこっち側かしら・・・。」ってニヤニヤしている変態がいるし・・・。

もう滅茶苦茶ですわ・・・。

場が荒れまくっていましたわ・・・。


もう何が何だか・・・。


そんなこんなで結果負けましたーーー。

はい。負けました・・・・・・・・・。


「お兄ちゃん!!何現実逃避してるの?負けは負けだよ?」

「大丈夫ウィル?ちゃんと約束守ってね?」

「ん。子供作りする。」

「あら、じゃあ私もそうしようかしら。」

「じゃあ私は「何でフランジェシカが入ってんだ」・・・ちっ・・・。」


まぁもうなんかいいわ。

疲れた・・・。



戦闘が終わり、僕が現実逃避をしていると、フランジェシカの持っていた緑石の魔石が光り、一人の少女を映し出す。


『・・・この感じ・・・。あの魔物を倒してくれたのですね・・・。ありがとうございます・・・。これで村の皆の魂も浮かばれます・・・。私はもっともっとやりたいことが山ほどあったけど・・・死んでしまいました・・・。皆さんは死んでしまった町の皆や、私の分まで精一杯生きてくださいね。後悔のないように・・・。』


そう言い残し、魔石は砕け散って消えていった・・・。

ーーーーーーーーーーーーー


シークレットクエスト【囚われた住人】


3/3クリア


・報酬

ピエロの指輪(状態異常抵抗、小)×人数分

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「ねぇエリザベス。おじいさんから話を聞いた時、一人だけ「やっぱり」って顔をしていたけど、あれはなんで?」

「あら、皆は気づかなかったのかしら?手紙の差出人「チシャシタより」って変な名前でしょ?あれはアナグラムなのよ。正解は「死者たちより」なの。つまり初めから皆死んでいることはわかっていたのよ。」

「えーー。なんでそんな変なところでアナグラム使ったのかな?」

「さぁ・・・。恐らく「死者達より」じゃ皆怖がって来てくれないからじゃないかしら・・・。あとは、ゲームだから、って事かしらね・・・。」


無駄なところにアナグラム使うんじゃねぇよ。

まぁ初めから「死者達より」って書いてあったら怖くて来ないけどね・・・。




こうして無事静かの森のクエストは完了した。


後のは暖かな木漏れ日が降り注ぐ何も残らない廃墟と、静かな森だけが寂しく残っていた・・・。

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