日々の冒険

第72話新たな朝



タッタッタッタッ・・・・。


昨日は楽しかったな・・・・・・。


タッタッタッタッ・・・・・。

ハッハッハッハッ・・・・・。


爺さんは見てるかな?

AOLの世界はすごく楽しいよ・・・・。

僕らはいっぱい仲間だできたんだ。


タッタッタッタン!!


「ハァハァ、お早うジィジ久しぶりの晴れだね。」

「お早う弥生。いい天気じゃのう。ばあさんが洗濯物が干せると喜んでおったわ。」


僕は久しぶりの朝の日課、ランニングでジィジの神社まで来ていた。


「ジィジ写真いっぱい送ったの見てくれた?」

「う、うむ。見たぞ。お友達がいっぱいできたんじゃな。」

「そうなんだよ!姉妹クランってのを作ってね。仲間が増えたんだよ!!」

「そうかそうか。仲間は大切にしなくちゃならんぞ?失ってからじゃ遅いからの。」

「わかってるよ。大切にする。」


元特殊部隊のジィジが言うと重みがある。

仲間を何人も失ってきたとおばあちゃんから聞いたっことがある。

きっとそのたびにジィジは心に消えない傷を作ってきたんだろう・・・・。


「千沙ちゃんと香織ちゃんも楽しんでAOLをやれているかの?」

「たぶん楽しんでいるんじゃないかな。もちろんユイと姉さんもね。「氷の女王様」「冷徹の聖女」なんて二つ名もついたしね。二人ともあっちじゃ有名人だよ。」

「ガッハッハ!!そうかそうか!!まぁこっちじゃなかなか肩身が狭い思いをしているが、あの二人が本気を出せば世界征服だってできるくらいの実力があるからのう。」

「ほんとにできそうで冗談に聞こえないから怖いよね。」

「まったくじゃ!!ガッハッハッハ!!」


「全く朝から元気だねあんたは。お早う弥生。沢山の写真ありがとうね。とても楽しく見させてもらっているよ。」

「お早うばぁちゃん。良かった。送りすぎて迷惑じゃないかって心配してたんだ。」

「フン!!ばあさんが余計なこと言うから弥生に迷惑が掛かってしまっているじゃないか。」

「あら、でもあなた「次の写真はまだか」って良く家の中うろうろしているじゃありませんか。」


ジィジは顔を真っ赤にする。

そうか・・・。

楽しんでくれているなら良かった・・・。


「んな!!う、うろうろなんかしておらんわ!!妖怪ばばぁじゃあるまいし。妖怪なんか毎晩何回も起きてうろうろしてるじゃないか!妖怪の友達でも召喚しているんじゃないか?なぁ弥生よ。ガッハッハッハ!!」


僕はお参りをしてと・・・。

さっさと帰りますか。


「じゃあねジィジ、おばあちゃん。また来るよ。」

「ん?そんなに急がんでも・・・。ば、ばあさん!!なんで石を拾って粉々に砕いているんじゃ!!何の実演じゃ!!化け物か!?や、弥生助け・・ぎゃぁぁぁぁ!!!」


ジィジも学ばないな。

ボケが始まってんのかな?


それにしても石を粉々に握りつぶすって、それは化け物だよ?ばあちゃん。



「ただいまー。」

シャワーを浴びて料理をする。

今日はフレンチトーストとスープだけだ。理由は簡単。冷蔵庫の中が空っぽだからだ。


今日はAOLを休みにする。

さすがに最近ゲームをしすぎた。


勉強が疎かになっては意味がない。

家事もしなければならない。


ただ洗濯物だけは朝、千沙と香織さんがすべてやってくれた。

できた姉妹だ。

うちとは大違い・・・。


「ふぁ~。おにいふぁんおふぁよ~~。」

「ふぁ~。やーちゃんおふぁおー。」


はっ倒したくなるな。この二人。

何が「おふぁよ~」だ。そんな日本語はない。


「お早う二人とも。山下姉妹を見習ったらどうだ?」

「ん。妻として当然の務め。」

「兄二人なんだかんだ弥生の妻になる自覚足んないんじゃないの?」


「なぁ!?そんなことないもん。洗濯できなくたって子供は産めるもん!!」

「そうよ!!洗濯したくらいでいい気にならないで!!私のテクニックでやーちゃんを快楽の虜にしてあげるんだから。」

「「それじゃあ売春婦と変わんないじゃない。」」

「「何だと!?表に出なさい!!」」


ゴンッ


「やめなさい。朝から何の話をしてるんだ。早く顔と手洗ってきなさい。」

「きゅ~~。お兄ちゃん痛いよ~。」

「あ~ん。そうよ。そこは優しくキスするとこでしょ?」

「そんなタイミングはなかった。早くしなさい。」

「「は~~~い」」


「ん。やはり一番妻は私。」

「じゃあ二番は私かしら。」


何の話だ。

そういう話は終わりだ。


「「「「「いただきまーす」」」」」


「とりあえず僕は食材買いたいから、4人は家事の方頼むよ。」

「合点招致!!」

「掃除ね。任せて!!」


珍しく二人はやる気だ。

さっきのがきいたか?

千沙と香織さんが来たのがいい影響になればいいな。


「ん。私も買い物に行く。一人じゃ危ない。」

「そうね。ナンパでもされたら大変だし付いて行ってもらいなさい。」

「だったらユイが「あなたたちは掃除よ」ぶ~~。」


やはり香織さんがこっちでもヒエラルキー一番上だな。



「ねぇ。私を「カンパニー」に入れてくれない?」


学校の昼休み。

ナギが突然そんなことを言ってくる。

「「カンパニー」に?ナギは筋肉男たちがいる「鋼鉄の騎士団」の方がいいんじゃないの?」


変態のナギは以前男たちがイチャイチャしているクランがいい、みたいなことを言っていた。


「初めは私もそう思ったわ。ここだって。ただなんか違うのよね。クランの目的も多くてほとんどホームに帰らないんだって。それじゃ私一人ぼっちじゃない。」

「だからね。そこよりかわいいメイドがいて、ふんどしの男がいて、皆が集まってくる「カンパニー」がいいの。それに「カンパニー」は珍しいアイテムをたくさん保有してるから錬金術師としてはやりがいのあるクランなのよね。」


確かに僕らは最前線組だ。それに今回姉妹クランができ、さらに攻略効率は上がるだろう。

まぁ、別に断る理由もないからいいんだけど・・・。


「とりあえず皆に聞いてみてもいいか?」

「当然。いい返事を期待してるわ。」


「そういえばナギがうちに入った場合「ダブルナイツ」は回復役がいなくなって困らないか?」

「その辺は心配しなくても平気だ。今回のイベントで何人か神官に声をかけておいたから。」


仕事が早いことで。

その熱意を少しでも勉強に向けてはくれないだろうか・・・。


「というかこれから「カンパニー」は大変だよな。」

「ん?何がだ?」


「やっぱりな。いいか?「カンパニー」はテイラーさん以外全員二つ名持ち、今回のイベントで一番活躍したクラン。そして「鍛冶神」の二人がいて姉妹ギルドの親。これだけの条件がそろっていたら「入りたい」ってプレイヤーが押し寄せてくるぜ。それこそ「スタンビート」みたいに。」


嘘・・・だろ?


「で、でもまだ姉妹ギルドの話は・・・。」

「それならもう掲示板に流してあるぜ。「鋼鉄の騎士団」のドンがすでにな。


ドンとはエリザベスにアイスロックを食らったおっさんだ。因み「鋼鉄の騎士団」のリーダーだ。


「あの野郎・・・。」

「待て待て。ドンが流さなかったら俺が流すつもりだったから。」

「・・・・どうしてだ?」

「いいか?クランには派閥ができるって言ったろ?だから早めに俺たちが仲間であり、大きな組織だと思わせることで牽制できるんだ。」

「最前線組の僕たちが一つになる事で仮想敵クランが攻撃してくるのを防いでいると?」

「さすが。そういうことだ。俺たちの誰かをPKしてみろ。最前線「カンパニー」「ダブルナイツ」「鋼鉄の騎士団」「悪魔結社」が攻めてくるんだぞ。俺だったらごめんだね。」


姉妹クラン奥が深いな・・・。

ほんとに一つの企業みたいだ。


「ということで、あの青い剣の入手方法を教えろ。」

「何がということはだよ。」


別にいいが、これも相談してからだ。

RPGに詳しくない僕はあまりマナーや、取引のルールを知らない。

下手なことはしない方がいいからな。


決して一人で決められない駄目な奴だと思わないように!!


「ん。今日は何にするの?」

「うーん。七月前なのにまだ寒いからシチューかな。野菜や米はネットで買ったっから、今日はルー各種と肉と魚を中心かな。」


千沙とスーパーに買い物に来ている。

こうして二人はなんだか久しぶりな気がする。


「帰りにホテル寄ってく?」

「寄りません。大体高校生は入れないだろ。」

「じゃあ家でエッチする?皆に声聞かれて恥ずかしい。」

「なんでする前提なんだよ。家で一人でしてきなさい。」

「ん。ひどい。一人寂しい。」


そんなこと言うなよ。

さっきからおばさんが変な顔してみてるから。


「ん。まぁ弥生のしたいときにしてくれればいい。待ってるから。」

「はいはい。どーも。それよりそのエビもいれて?シーフードシチューにするから。」

「ん。」

「ありがと。」


会計を済ませてスーパーを出て帰路につく。


「AOL楽しめてるか?」

「ん。楽しい。急にどうしたの?」

「ジィジが今朝聞いてきてさ。千里香織さんは楽しめているかって。」

「ん。相変わらずジィジ過保護。嬉しいけど。」


確かにジィジは過保護だ。

爺さんが死んでからいつもみんなを気にしてくれてる。

それが重荷にならなきゃいいけど・・・。


「弥生は楽しい?」

「楽しいよ。こうやってみんなで遊ぶの小学生ぶりなんじゃないか?だからみんなといられてうれしいし楽しいよ。」

「ん。私もうれしいし楽しい。何よりやっと弥生の力になれる。」

「そんなこと考えなくていいのに・・・。」

「ん。私の自己満足。だから気にしないで。」

「・・・ずるいいい方だ。」

「むふ。私の勝ち。」

「・・・負けた覚えはねぇよ。」

「だめ。私の勝ち。だから弥生は私の言うことを一つ聞く。」

「なんでそうなる・・・。・・・とりあえず聞くだけな。」


「その袋貸して?」

「・・・・?」

「・・・・・・・ちゅ・・・。」

「・・・・え?」

「・・・むふ。また私の勝ち。」

「・・・うん。今のはやられた。」

「ん。素直でよろしい。」


「・・・全くかなわないな・・・。」

「ん。当然。私は弥生のすべてを知り尽くしている。」

「・・・・それ、ずるくないか?」

「・・・・・弥生。」

「・・・・ん?」

「・・・・好き。」

「・・・・ん。ありがと。」

「・・・返事はしなくていい。」

「・・・・・・・。」


「私は何があっても弥生と一生添い遂げる。逃がさないし離れない。他の人を好きになってもいい。だけど私はそばに置いて?あなたのそばにいることが私の人生。それは生まれた瞬間から決まってたこと。」

「・・・・・・・・ん。」

「ん。弥生好き。弥生は弥生のタイミングで気持ちを教えて?でも断るの話ね。弥生も私がいなくちゃダメなの。」

「・・・・・・・・・・ん。わかった、ありがとう。うれしいよ。」

「・・・・・・ん。」

「・・・・・・・・。」


「・・・・・・・ホテルいこ?」

「・・・・・いかないよ。」

「ぶー。早く弥生としたい。」

「・・・・高校生のセリフじゃないな。」

「・・・そう?普通だよ。」

「・・・・・そうなの?」

「ん。そう。弥生はまじめすぎ。」

「・・・・・そうかな。」

「・・・ん。そう。」

「・・・そっか。」

「・・ん。そう。」



こうして僕らは帰宅したのだった。


僕はどうやって帰ったのか、帰り道をあまり覚えていなかった・・・。

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