第67話初イベント中編


森が騒ぎ出す・・・。

沢山の足音が須賀との見えない敵の多さを教えてくれる。


ぴょこっ、と一匹のオオカミが森から姿を現す。


「アオオオォォォォン!!」


街まで聞こえる大きさで、オオカミは吠える・・・。


「「「「「「アオオオォォォォン!!」」」」」」

「「「「「「ニャーーーーーー!!!」」」」」」

「「「「「「クマーーーーーーー!!」」」」」」」

「「「「「チューーーーーーー!!」」」」」」」」


森から動物たちの雄たけびが響き渡り、一斉にモンスターが襲い掛かってくる・・・。


・・・・・ナニコレ、メッチャコワイヤン・・・・・。


森から一列に黒い塊が、視野いっぱいに押し寄せてくる。


・・・・・・ナニコレ。メッチャコワイヤン。


昔の戦争とはこういったものなのだろう。

今のリアルはほとんど機械による戦争だ。まぁもちろん人間も戦うが比率は機械の方が多い。


昔ながらの戦争スタイルのこの状況に、僕は固まってしまった・・・。


だって怖いんだもん。

辺り一面モンスターなんだもん。

人間よりも多いんじゃないですか。

こんなの聞いてませんよ。


なあ、皆だって僕とおんなじ気持ちだろう?



「「「「「戦争じゃぁぁぁーー!!!」」」

「「「「「かかってこいやぁぁぁ!!」」」」」

「「「「歌姫にいいとこみせんじゃぁぁぁ!!」」」」」」

「「「「生き残ってあの子に告白するんじゃーー!!」」」」

「「「私はいっぱい甘い物食べるんじゃーーー」」」」」

「「「「「かっこいい彼氏つくるんじゃーーーー!!!」」」

「「「「「んと、んと、おりゃぁぁぁぁぁ!!」」」」」



・・・・・・・なぜ?

皆頼もしいな・・・・・・。

皆の雄たけびを聞くと体の緊張はほぐれていく・・・。

良かった。頼もしい奴らがこんなにいる・・・・。

良しお前ら!!


第一陣は任せた!!行ってこい!!


「さぁ!!行くよお兄ちゃん!!」


やだよ・・・怖いもん・・・。


「待ってアイリス。第一陣は危ないわ。一番死亡確率が高いの。最前線がぶつかり合いお互いその後ろからどんどん人やモンスターがあふれてくる。結果最前線組は挟み撃ちでつぶされるわ。」

「そうね。ぶつかる波が二度ほどあって、互いの足並みが止まりかけたときに突っ込むのが効率いいわ。」

「ん。それがいいと思う。」


いいこと言ったみんな!!

あれが止まっていれば確かに怖くないかもしれない。

いつもの戦闘になる。


「そうだぞ?アイリス。焦るんじゃない。戦いは始まったばかりだ。」

「え~~。わかったよ。じゃあタイミング教えてね?」


これでいい。

少し焦ったがこれならいい。



だんだん魔物の距離が狭まる。


「「「「「「「うぉぉぉぉおぉぉぉぉx!!!」」」」」」」

「「「「「ガオォォォォォォォ!!」」」」」」


ガァァァァァァァン!!


そんな大きな音を立て前線組がぶつかり合う。

いたるところで人や魔物が吹き飛び宙を舞う・・・・。


あっぶね~~。

あそこにいたら死んでいたかも・・・・。


その波を押しつぶすように他のプレイヤーもぶつかり混戦状態になる。


チームワークもないなこれは。ばらばらになっている・・・・・。


お互いが止まり、皆バラバラになる。

「いいわ!!逝きなさい!!」


ちゃんと生きて帰ってきますよーだ。


「いくよ!!お兄ちゃん!!」

「あぁ、あんまり離れるなよ?」


僕らも駆け出す。


「やぁぁぁぁあ!!」

「っっはっっっ!!」


僕らは次々とモンスターを駆逐していく。

考えてもみればここは始まりの森。

モンスターレベルは低いに決まっている。


イベントの為か多少は上がっているみたいだがそれでも10~18の間のようだ。


ほとんど僕らは無双状態になる。


楽しく思ってしまうほどモンスターを一撃で薙ぎ払う。


ヘイトを集めすぎたのかウルフの群れが来る。


同時に正面から3匹飛んできたのを姿勢を低く、ウルフたちをくぐるように乱れ切りをして消す。

同時に左右から来たウルフを一歩下がりスラッシュで捌く。


斜め後ろから飛んできたやつを見ずに、気配察知でしゃがんでよけ着地する前に素早く切りかかる。さらに正面の2匹を一閃。


・・・・今の僕カッコよくなかった・・・?


ちらりと隣を見る。


「あはははははは!!全然足んないよーー!!」

アイリスは笑いながらモンスターを蹂躙していた。


ですよねーー・・・。


今度は後ろを振り向く。


エリーゼ、クリス、エリザベスの姿はなかった・・・・。


ですよねーーー・・・・。


三人は後方からの支援だ。

パーティに関係なく危ないところに廻って戦う手はずだ。


「じゃあ僕らは?」

と聞いたら、

「あなたたちが危なくなるわけないじゃない。」

と言われたのを思い出す。


信頼してくれているのは正直にうれしいが少し寂しい・・・。


とにかく戦おう。


僕は剣を振るうい働く・・・・。

馬車馬のごとく・・・・。


僕は走りながら乱れ切りで切りすすみ働く。

馬車馬のごとく・・・・・。


駄目だ。

だんだん気持ちが小さくなってきていた。


周りの皆も同じようだ。

顔つきがだんだん険しくなり、一人、また一人と消えていく・・・。


まずいな、士気が下がり始めている・・・。


人数がだんだん減ってきている・・・。


僕もだんだん疲れが見えてきた。

いったい何体倒したことだろう。

ゲームなのにのどが渇いてきた気がする・・・・・・。

剣を古いフォレストキャットを倒す。

次はフォレストウルフ・・・。

次はミニベアー・・・・・・・・・・。


「くっっヒール!!」

僕もだんだん傷が多くなってきた・・・。

だが敵の数は減っている気がしない。

やはりボスを倒さなければならないな・・・。

だがボスは未だに姿を現さない・・・。


もう戦い始めて30分がたっただろうか・・・。

流石に疲労を感じる・・・。


~~~~♪~~~~♪


気づけばまたあの歌が聞こえてきた。


しかもさっきよりも大きな声で。


きっとレベルが上がったのだろう。


ほぼ1万人近い人たちにバフをかけ続けているのだ。

レベルが上がって当然だ。


アイーダは北門、南門の方にも廻ってもらい、歌を歌ってもらっている。


「・・・・・歌だ・・・。歌が聞こえる・・・・。」

「歌姫だ・・・・・。歌姫が歌ってくれている・・・・。」

「・・・まだだ!まだ俺はやれるぞ!!」

「そうだ!!歌姫ちゃんにカッコ悪いところ見せられるか!!」

「私だってまだ負けてないわよ!!」

「テメェら!!気合入れ直せー!!」

「「「「「「おう!!」」」」」」」」



皆元気だなぁ・・・・・。


っでもなんだか元気が湧いてきた。

感情は人に伝わりやすいという話は本当かもしれないな・・・。


「アオオオォォォォン!!」


皆が気合入れたときに大きな黒いウルフが森から姿を現す。


「きたぞ!!ボスだ!!」

「あいつを倒せばだいぶ楽になるはずだ!!」

「一斉攻撃を・・・・くそ!!」

「なんだこいつら急に・・・。」

「くそ!!これじゃ近づけねぇ!!」

「弓も魔法も届かないわ!!」


フォレストウルフたちは急に固まりだし、まるでボスを守っているようだった。


どうする・・・・。


早くアイツを倒して楽したい。


「おにーーーちゃーーーん!!どこーーーーー??」


・・・でかい声だなアイリス。

お兄ちゃん少し恥ずかしいよ。


アイリスがこのタイミングで呼ぶってことはあれしかないな。


・・・・・・・無視しよっかな。

顔見たら断れなくなるし。


「おにーーーーちーーーーゃん!!神速の兄貴ーーーーーー!!」


やめなさい。恥ずかしいでしょ。


「おい!!神速の兄貴はどこにいる!!」

「おい神速!!どいつかしらねぇがこんな可愛い妹を無視するんじゃねぇ!」

「そうだぞ!!無視すんな!!うらやましいぞ!!」

「出てこい兄貴!!一発殴ってやる!!」


「駄目だよ殴っちゃ!!アイリスの大好きなお兄ちゃんだよ?」


「「「「「「はい!!殴りません!!」」」」」」」


・・・・出づれぇぇ・・・・。


「あ、あの!ここにいますけど・・・・・!!」


「おめぇが兄貴・・・・か?お姉ちゃん??」

「ん?女じゃねぇか!!」

「しかもかわいい・・・。」

「いや、よく見ると男じゃない??」

「ロールプレイか??」


やかましいわ。


「おにーーちゃん発見ーーー!」


お前が一番やかましいな。


アイリスは胸に飛び込んでくる。


「おぶっっっ!!??」


・・・耐えた。何とか耐えた。お兄ちゃんの威厳を保てた。


だが今日一番痛かった。


「お兄ちゃん!!あれやろっっ??」

「っですよねーー・・・・・。」


ということでお兄ちゃん現在お空を飛んでいます。

それはもうすごい速度で。

お空を飛ぶ魔法覚えても絶対に使わないでいよう。

だって怖いんだもん。


しかも下に口明けたウルフがたぁくさん。

お兄ちゃん泣きそう。


「・・・・ってふざけてる場合じゃねぇな。」


何とかズザザザザザと音を立てながら着地に成功し、ブラックウルフと向き合う。


ブラックウルフLV28


あんまり僕と変わんないじゃねえか・・・。

僕はLV34。

飛び越えられたウルフたちはこちらに向かってきている。

・・・。あまり時間ねぇな・・・。


こうして再びブラックウルフと戦うことになった・・・・・・。

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