第15話情報屋ジン

ギルドを出ると既にクリスにエリザベス、それにエリーゼもいた。


「お待たせ。あれエリーゼ早かったね」

「ん。何故か直ぐに終わった」

「お待たせー!みんな早いね!みんなはどんな事したの?」

「まぁ立ち話も何だからどこかで休まない?美味しいコーヒーを出してくれる店を聞いたのよ」

流石エリザベス。仕事が早い。


僕らはギルドよりも北門寄りの裏路地を歩いて行った。

「ねぇ香織。本当にこの路であってるの?」

「間違いないわ。ギルに聞いたもの。地図だって貰ったし。」


地図をもらいメニューのマップをひらいて地図をかざすと目的地が表示される。因みにフレンド登録してある人の位置、勿論自分の位置もわかる。魔法とは便利なものだ。


というかギルドマスターに聞いたんかい。

「よくギルマスに聞けたね。」

「時間が余ったからギルドの上の階も言ってみたの。四回に続く階段があったから気になって行ってみたらギルマスの部屋があって面白そうだから入ってみたらギルがいたのよ。それでギルマス行きつけの街に詳しくてコーヒーの美味しい店を聞いたのよ。因みに知る人ぞ知る店らしいから他言無用で頼むって言われたわ。あとその人情報屋でもあるらしわよ。」


よくそんな店教えてもらえたな。流石女王様。話術スキルが高いことで。


「お姉ちゃん、よくそんな店聞けたね。変な事しなかった?」

「するわけないじゃない。それに私が変な事するのはちーちゃんと弥生だけよ。」


やめてくださいね。

まじで怖いので。


「ちょっとやーちゃんに変な事していいのはわたし達だけよ。」

「そうだよ!!香織さんはだめ。」

「そうよお姉ちゃん。ついでに私にも変な事しないでくれると助かるわ」


みんな僕に何する気なの?


「ぶー。みんなして虐めないでくれないかな。因みにちーちゃん、変な事をやめる気は無いわ。・・・と着いたわね。ここの筈よ。」


やめる気は無いらしい。

言い切ったなこの人。


しかし何の変哲も無い建物だ。

強いて言うなら特徴が無さすぎる。窓や看板すらない。

「これは本当に知らないと見つけられないね。とりあえず入ってみるか」


ギィィっと音がする木の扉を開けるとコーヒーのいい匂いが漂う。


「あ?見ねぇ顔だな。ここに来るってことは迷子じゃねぇんだろ。紹介状は持ってんのか?あ?」


無精髭を生やした厳ついおっさんがバーカウンターの奥でグラスを拭いていた。

どうやらバーの様だ。シックな作りの店内。テーブル席が4つとバーカウンターに席が8つだけの小さな店だ。


紹介状?

ってか口悪いなおっさん。


「あるわ。これよ。」

エリザベスはローブのポケットから手紙を取り出し渡す。


あるんですね。流石です。


口悪オヤジはぶっきらぼうに受取り手紙を見たあと顔をしかめ何度かエリザベスと手紙を見る。

「確かにギルの紹介状だ。が、あいつのこんな丁寧な紹介状見たことねぇぞ。だが確かにあいつの字とサインだ。くれぐれも姉様に宜しくって、しかも今回は料金あいつ持ちって、オメェさんあいつに何したんだよ一体」


本当に何したんですか?


「あら、そんなこと書いてあるの?少しお話ししてお願いしただけよ。」

クスクスと上品に笑いながら答える。

「お姉ちゃん・・・。」

「かおり・・・。」

「流石香織さんだね!」


エリーゼとクリスは呆れ、アイリスは尊敬の眼差しでエリザベスをみる。


アイリスよ、あれは真似しちゃいけません。


「まぁ、アイツの頼みだ、仕方ねぇ。座りな。」


入り口に一番近いテーブル席に座る。

「酒は・・・飲めそうにねぇな。全員コーヒーでいいか?めんどくせぇから同じのにしろよ。」

「お願い。砂糖とミルク、あとレモンはあるかしら?」

「チッ、あるよ。用意する、待ってろ。メシはどうする?って言っても大したもの作れねぇが。」


「食べたい食べたい!どんなのがあんのー?」

「あ?色々だ、色々。待ってろ、テキトーに作ってきてやる。どうせギルの奢りなんだ。たんまり食ってアイツに沢山払わさせようぜ。」


ニィっと悪そうな笑顔の後奥にあった扉に消えていく。


「いい性格してんな。あのおっさん。」

「そうね。でも嫌いじゃないわ。ああいう人。顔は悪人顔だけど」

「確かにね。なんか憎めないわね。顔は怖いけど。」

「確かにねー。でも口悪かったね。顔怖いし。」

「ん。でも意外といい人な気がする。顔は好きになれないけど。」


各々おっさんを評価していく。


「ニャ!?千紗イキナリ尻尾触らないで!」

その尻尾感覚あったんだ。耳も尻尾も動いてたから気になってたんだよね。

っというかアイリス、ニャって・・・

「ん。大丈夫。怖くないよ。ニャーって言ってごらん。ほら、ニャーって。お姉ちゃん邪魔。」

「ちーちゃんが可愛すぎるのがいけないの」

エリーゼは真剣な眼差しでアイリスの頭を撫でながら香織さんに頬ずりされている。

アイリスは警戒しながらも、ニ、ニャ〜と答えてあげる。尻尾と耳は逆立っている。

そういえば千紗猫好きだったなあ。

僕も後で触らせてもらおう。


「香織さん、情報屋って言ってもどんなこと聞くの?」

「色々聞くつもりよ。私たちは何もわからないわけじゃない?世界を救うって言っても情報がなければ動きようがないわ。それに私RPG系のゲームは初めてだし。普通はどうするものなの?」

「んー。大体攻略組がどんどん次の街を見つけて行って他の人や生産職でもそれに続くって感じかなー」

「そうね。ルートはいくつかあるけど大体決まってるものだしね。ALOみたいに世界を救うっていうアバウトな目的じゃなく、魔王を倒すだとか敵国を倒すとか目的がはっきりしてるものだし」

「私もRPG始めて」


千紗と香織さんはあまりゲームをしない。

おじさんがテスターとして世界観の意見を聞くためにたまにダイブはするがそのくらいだ。

僕もゲームはあまりしない。

天才姉妹たちと違って僕は努力しなければ点数を取れないからだ。

因みに他4人はあまり勉強をしない。理由は新学期が始まると全科目の教科書を読めば十分だという。だがそれで必ず神城姉妹は80点以上山下姉妹は95点以下を取ったことがない。

世の中は不公平だと何度嘆いたか・・・


「おう。出来たぞ、おい坊主。運ぶの手伝え。」


なんでやねん。


結局運ぶのを手伝わされる。


しかし

「ワァーー美味しそー!!」

「本当に美味しそう。おじさんこの量1人で作ったの?」

「すごい、まだ十分くらいしか経ってないのに」

「本当に凄いわ。うちに雇いたいくらいよ。一体どんな技術があったらこの短時間でこれだけ仕上げられるのかしら。」


パエリアに、ステーキ、サラダにスープ。

鮮やかな料理がテーブルをいっぱいにした。


「コーヒーは食後でいいだろ?ってしかしやっぱりお前ら噂の流れ人か。」


「噂の?そうだけど。どこで気づいたの?というかなんでそこに座ってるの?」


おっさんは椅子を持ってきて僕達のテーブルの通路側に座る。ちゃっかりおっさん用の皿と酒も用意してあった。


「質問が多いな。まぁいい、流れ人はおとぎ話の中、まぁ伝説の存在みたいなもんなんだ。それが来たとなりゃ噂にもなる。気づいたのは初めから気づいていたが確信したのは青髪のじょうちゃんのセリフだな。料理スキルをしらねぇんだろ。ここに座ったのは腹が減って酒が飲みたいからだ。」


まぁとりあえず食おうぜ、腹が減った。

と締めくくり、皆で食べ始める。


「ん〜おいし〜!おじさんいい腕してるね!!」

「ガッハッハ!ありがとよ嬢ちゃん。こう見えて料理スキルはカンストしているからな」

「カンスト?いくつなの?」

「おいおい、人にスキルやレベルを聞くのはマナー違反だぜ。あと勝手に看破するのもな。まぁいい、料理スキルレベルは100だ」

「「「「「100!!??」」」」」

「嘘でしょおじさん!!??その顔で!?」

アイリスそこかい。

「よく言われる!!あと俺の名前はジンだ」

また豪快に笑う。

ってか名前かっこいいな。


「ねぇジン、スキルレベルの上限って100なの?」

「あ?うちは情報屋だぜ。何でもかんでも教えるわけにはいかねぇな」

「あら、なら貴方は情報を話せば話すだけ懐が潤うわよ。だってギルドマスターの支払いよ。今が稼ぎ時なんじゃない?」

「そうだった!!忘れてた!嬢ちゃんいい性格してるぜ。気に入った!」

「ふふっ。ありがと。あと私の名前はエリザベスよ。名前で呼んで頂戴。」

「エリザベスか。いい名前だ。美人のオメェさんにはぴったりだ」

「あら、お上手ね。ありがと」

2人は笑い合い僕らは香織さんの話術に感心していた。

しかし本当に美味いなこれ。

家で作れないかな。


香織さんに促され僕らも自己紹介する。

「まぁ色々教えてやるか。今日来たってことはこの世界の事何にもしらねぇんだろ?その代わりお前らの世界の話も聞かせてくれ。興味ある」

流石情報屋、奢りだからってただでは教えてくれない。

「流石は情報屋ね。まぁそのくらいいわよ」

「ありがとよ。ならさっきの答えだがスキルレベルの上限はスキルによって異なる。カンストしたと思ったらまだ派生先きがあるなんて事はざらにある。王都のお偉いさん方が建国するより前からずっと調べてはいるが一体スキルが何種類あんのか、それすら解明できてない」


「そうだったの。と言うか此処王国領地だったのね」


「おいおいそっからかよ。ギルの奴は説明してくれなかったのか?」

僕らは聞いた話と此処までで知り得た情報を話す。


「成る程な。つまり10歳児の子供でも知ってる事を知らないわけだ。あのバカ戦闘以外は本当テキトーだな。」


まぁざっくり世界のこと話してやるから飯食いながらでいいから聞きな、と頭を描きながら話し始める。

「まぁと言っても俺も世界の一部しかしらん。この世界は広すぎるからな。

まず此処はエレクトリカル王国だ。この大陸じゃ一番デカく平和な国だと言われている。初代国王、エレクトリカル王は勇者と呼ばれていた。そしてその王のパーティメンバーは全員このフェラールの待ち出身だ。故に此処は始まりの町とも呼ばれている」


此処はどっかのパレードみたいな名前でした。


「何故王は勇者と呼ばれたか。一万五千年ほど前にはこの世界には魔物はいなかったらしい。本当かどうかは知らねえよ?そこは魔法や魔道具が発展した大魔道時代と呼ばれる世界だった。魔道具で空を飛び風より早い乗り物に乗り世界の果てまで行ったり来たりしてたそうだ。だか、それだけ発展した世界は一瞬で滅びた。大規模な魔力爆発によってな。そこでは何か研究をしていたらしいがそこが何処なのか、何をしていたかはわからない。ただ爆発は起きた。世界を巻き込んだ爆発により人口は減り、世界の魔力は乱れた。そこに突然現れたのが魔物だ。魔物は魔力から生まれる。動物が強い魔力によって生まれたり魔力が濃い所は突然生まれたりする。魔物によって人々が苦しんでいた時現れたのがこの国の初代国王様だ。嘘か本当か王様は世界を駆け回り人々を束ね世界を救った。そして世界の果ても見て来たらしい。その後王様は生まれたこの街の側に一万年前王都を作り国を作った。まぁ此処までが歴史のお話だ」


パレード王様は偉大な方だった。


「だが千年に一度世界の魔力は大きく歪み魔物が大量発生する。そして建国から一万年たつ来年には今までにない大規模発生すると言われている。現に既に魔物の数は異常だ。そこでフィリア様が、フィリア様は知ってるよな?よし、フィリア様は世界の街全ての中心に転移ポータルと呼ばれるものを設置し流れ人を呼んだ。転移ポータルは空間を超えフィリア様に特別な魔法を掛けてもらい、何度死んでも生き返るという流れ人にしか使えないらしい。まぁそんな物現地人が使えたら戦争が起きちまうから使えない方がいいんだがな。まぁ早い話がそれと流れ人で世界を救えって話だ。だが現地人は流れ人に頼らず自分たちは自分達で守れるように準備してる。だからお前らは気負う必要はねぇと俺は思うがな」


その後も色々な話を聞き、変わりに地球の話をし僕らはダイブアウトした。

因みにジンは飲みすぎて今日は店を閉めるそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る