第8話
(アカリ、昨日のって・・・)
文化祭当日、私の頭の中はその事でいっぱいだった。
「・・・あっ、アカリ!」
私は思わずアカリを見つけ、声をかけてしまった。
「・・・ごめん」
「え?」
アカリはそう言うと、私をおいて教室に行ってしまった。
(・・・アカリ)
「さあみんな、文化祭一日目頑張ろう!」
昨日のこともあってか、今日はアカリではない女子が仕切るようだ。
「「「おおー」」」
「おっ、おおー」
アカリの事もあり私はあまり乗り気ではなかったが、気分だけでも上げることにした。
「さっそく一日目の人は準備して」
「シロちゃん!片桐くん!」
私はクラスメイトの女子に言われるがまま、更衣室に連れられていった。
「さあ早く着替えてオープンしましょう」
「・・・。・・・やっぱりちょっと恥ずかしい」
「安心しなさい!」
その女子はカーテンをシャーっと開いた。
「・・・こんな女子うちにいたっけ?」
そこにいたのは、髪が長く、身長のかなり高いメイド服を着た女の子だった。
「俺だから!」
「・・・?」
「そんなに俺の声って分かんないのかよ」
「片桐くん?」
「そう片桐」
まさかと思って言ったが、どうやら本当に片桐くんのようだ。
「えっと・・・可愛いよ」
「・・・ありがとう」
何故だか周りの女子は大爆笑だった。
「というわけで、片桐くんも恥をしのんでやっているから」
「・・・着替えたよ」
私は渡された執事服姿でみんなの前に出た。
「シロちゃんカッコイイ!」
「・・・男ってなんだろうな」
「シロ、可愛・・・カクッ」
不思議と男子は半数が落ち込み、女子はほとんどが気絶したようだが、どうやら好評のようだ。
「そ、想像以上だよ・・・ごちそうさまです」
「何が」
「まあ片桐くんとシロちゃんが中心で一日目は進めていこう」
そうして時間となり多くの不安を抱えながら、文化祭一日目がスタートした。
(ここで合ってるのかな・・・)
私はシロちゃんに教えてもらった学校に着いたはいいものの少し戸惑っていた。
「お姉さん可愛いね。どう?俺たちと回っていかない?」
「私は、別に一人で」
「そう言わずさ」
否応なしに私は腕を掴まれてしまった。
「別にここじゃなくてもいいんだよ」
「っと、それ以上は迷惑になるのでやめてもらえますかね」
「あ?何だとお前!」
私に掴まれた手を離させたのは1人の男の子(?)だった。
(・・・メイド服)
「それ以上迷惑を起こすのはやめてもらえますか?御主人様」
そのあらゆる感情が混ざったような言葉に、私も少したじろいだ。
「何なんだよ・・・」
「こいつヤバすぎだろ」
そう言い残して男達は去っていった。
「ありがとうございます」
「いえいえ女性が絡まれていたら助けますよ」
さっきとは打って変わった笑顔をみて、私は聞にくいことを質問した。
「あの・・そのメイド服って」
「これですか?うちの出し物の衣装ですよ。よかったら来ます?」
(シロちゃん見に来ただけだったけど・・・)
「それなら少しだけ」
「わかりました。案内しますね」
私はそのままその男の子に付いていった。
「今日はうちの女子が男装してて、一人だけすっごく指名みたいなことされちゃってて、居づらくて外にいたんですよ」
「とってもお似合いで、可愛いですよ」
「どっかの女子みたいな事言いますね」
しかしさっきの男装女子というのはシロではないのか、そういった考えがレイラの頭の中にあった。
「誰か出てきて列が動きますね」
すると中から2人組の女子が出てきた。
「本当にカッコよかった」
「ああやって執事もいいけど、私は逆に崇拝したい」
「シロ様ーみたいな?」
「そうそれ!」
(これはいるね)
「あっ、片桐くん!どこにいたの?厨房手伝って」
「一応フロアのはずなんだが。というわけで俺は厨房行きますけど、ゆっくりしていってください」
「ありがとう」
彼はそう言い残すと、教室へと入っていった。
「次のお客様どうぞー!」
「おかえりなさいませお嬢様」
シロちゃんと思われる執事が私をお出迎えしてくれた。
「何だかいつもと逆だね」
「・・・・・・レイラさんですよね」
「そうだよシロくん、早く席に案内してよ」
「こっ、こちらにどうぞ」
先程までの落ち着いた立ち振る舞いとは打って変わって何故だかぎこちなくなっていた。
「ご注文は?」
「シロちゃん、お持ち帰りで」
「申し訳ありません非売品となっております」
彼女が指さしたネームプレートには、たしかに非売品と書かれていた。
「読まれてる・・・」
仕方なく私はシロちゃんのお持ち帰りを諦めてオムライスを頼んだ。
「おまたせしました。オムライスです」
「君はさっきのメイドさん」
「すみません他の人は手が空いてなくて」
「別に気にしないよ。・・・それよりせっかくオムライス頼んだから、あれやってよ」
「あれって何ですが?」
「オムライスにハート書いて美味しくなあれ、って言うやつ」
どうやら彼はもうやったらしく、恥ずかしがる素振りもなくやってくれた。
「・・・美味しくなあれ」
やっぱり少し恥ずかしいようだ。
「それじゃあ私はそろそろ帰るね」
「もう少しゆっくりしていけば・・・」
「邪魔になっても嫌だし、どうせ明日も来るから」
こうしてシロの男装だけでお腹いっぱいになったレイラの文化祭一日目が終わった。
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