第5話
「レイラさん夕飯出来ましたよ」
「今日の夕飯は~、にっくじゃが~♪」
今日の夕食はレイラさんのリクエストで、肉じゃがだ。
「それにしてもどうして肉じゃがなんですが?」
ふとした疑問をレイラさんにぶつけてみた。
「たしかにレイラさん、ジャガイモ好きですけどいつもはポトフとかポテトサラダなのに」
「それはだね、肉じゃがといえばお嫁さんに作ってほしいもの!・・・後は分かるでしょ?」
「全くわからないんですけど」
本当にこの人が何を言っているのか理解が出来なかった。
「もうシロちゃんたら~」
(う、うざい・・・)
「シロちゃんがいつでも私の家に嫁入りしても大丈夫ってこと」
「何なんですかほんと・・・」
するとレイラさんが私の手を握りながら言った。
「私ならシロのこと幸せに出来ると思うよ」
「ちょっ、変なこと言わないで下さいよ!」
「ごめんね?でも私シロちゃんが他の男の人と結婚するのちょっとやだなぁ・・・」
「私だってレイラさんが結婚したら嫌ですよ!」
私は言った後になって自分の発言に後悔した。
「シロちゃん・・・?」
「何でもないです!早く食べないと冷めちゃいますよ!」
そう言ったはいいものの、それから二人の間に微妙な空気が流れてしまった。
(ここは話を作らなきゃ・・・)
「・・・肉じゃがといえば初めて会った日を思い出しますね」
「本当にあれだけは勘弁してください」
「えー何でですか?あれは私がこっちに越してきたばっかの日でしたね・・・」
「回想やめてえええええええ!!!」
あれは、今から数ヶ月前に遡る。
「これで荷物は終わりね」
私は高校入学を気に一人暮らしを始めた。
(隣にも挨拶行ってきたし、お昼にしようかな)
私は空っぽの冷蔵庫を再三確認した後、仕方なくコンビニに出向くことにした。
(やっぱりコンビニもう少し近いところにしておくべきだったかな・・・)
私は物件紹介の時にまで紹介された急で延々と続く坂を歩いた。
「いらっしゃせー」
私は10分ほど歩きコンビニに入った。
(パスタと・・・たまには奮発してサラダでも付けようかな)
「ありがとござしたー」
(ひどい店員だったな)
次からは極力スーパーを使うことを決心しながら坂を下った。
「わっ!待って待って!」
その女性の声で後ろを振り向くと、突然おびただしい量のジャガイモが転がってきた。
「拾って~」
「えっ、あっはい」
私は言われるがまま転がってきたジャガイモを一つずつ拾っていった。
「これで多分全部ですけど」
「ありがとうございます、助かりました」
私はそのジャガイモで溢れかえっている買い物袋について聞いてみた。
「そんなにたくさんのジャガイモ何に使うんですか?」
「何に使うんでしょうね」
「・・・もしかして計画なく衝動買いしたんですか?ジャガイモを・・・」
すると見知らぬ女性は遠い目をしながら呟いた。
「・・・ジャガイモが私を呼んでいたの」
全く意味は理解出来なかったが、一つ分かった。
{この人やばい人だ)
ジャガイモの量や言動といい、さっきからうっとりジャガイモ見つめているし・・・
「そろそろ私行きますね」
私の頭がこれ以上は関わってはいけない人と察知し、その場から逃げるように去ろうとした。
「待って下さい!」
女性は私の腕をしっかりと捕まえてしまった。
(やばい巻き込まれる)
「拾ってくれたお礼に、このジャガイモご馳走しますよ」
「さすがに知らない人にそこまでされるのは」
「大丈夫ですよ!私、一人暮らしですから!」
(余計安心できない!)
「そ、それに私コンビニ弁当ありますから」
「コンビニ弁当なんて若いうちは食べちゃダメです!」
さすがにそう言われると言い返せなかった。
「1人で食べるご飯は寂しいよ?」
「・・・・・・ご馳走になります」
「うん!」
これが私、シロと謎の女性レイラさんとのファーストコンタクトだった。
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