【「赤ずきん」より】

赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと赤ずきんちゃんと…

 昔々、ある森に一頭のオオカミがいました。


「あー、腹減ったな……どっかに美味い食い物でも落ちてねーかな……」


 最近獲物がなかなか捕れず空腹気味のオオカミは、森の中に佇む小さな家の傍に辿りつきました。

 他の誰かにばれないよう、こっそりと中を覗くと、そこには木造りのベッドに体を休める1人のお婆さんの姿がありました。

 その光景を見て、オオカミはある事を思い出しました。確か今日、この一軒家に住むお婆さんの家に、孫である可愛い少女が訪れると言う話を、数日前にオオカミは盗み聞きしていたのです。そこで彼は考えました。所詮相手は年端もいかぬ娘と何にも出来ないババア、ならば俺の腹の中で栄養になった方がよっぽど役に立つのではないか、と。


「しめしめ……今日の俺はついてるぜ♪」


 それから少し経った後、準備を整えたオオカミは、森を横切る一本道の傍に隠れました。

 この道を通れば、あのお婆さんがいる家にたどり着く事が出来ます。ですがこの先に分かれ道があり、左側の道は遠回りになってしまいます。これを利用して道を横切ったお婆さんの孫を言葉巧みに誘導し、左側の道に行かせた隙をついて先に家に押しかけ、お婆さんの家に押しかけて体を丸のみにした後、その服を着てお婆さんに変装し、孫も食べてしまおう、と言うのがオオカミの作戦でした。自分の策略に酔いしれていたオオカミは、きっとこの作戦は上手くいく、と確信していました。


 

 そして――。


「……来た!」


 ――優れた聴覚が、道を歩く人間の足音を捉えました。

 ですが、優しいオオカミになり済まし、足音を立てる少女の前に飛び出そうとした直前――。



「……え」



 ――オオカミの体は、あっという間に固まってしまいました。



「お婆さんの家って、もう少しよね?」


 確かに、その足音の主は、可愛らしい赤い頭巾を被った女の子でした。

 ですが、オオカミはずっとその女の子=お婆さんの孫が、1人だけだと想定していたのです。


「そうよ、この道を行けば辿り着くはずよ」

「お婆さん、楽しみに待っているわね♪」

「そうね、うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」うふふ♪」…



 子沢山だったお婆さんやその娘たち、そしてその親戚から産まれた、全く同じ姿形、そして同じ声をした女の子が、合計して何百何千、いえ何万人もいるなんて、誰が想像できたでしょうか。



「……帰ろう……」



 どこまでも響く足音と数限りなく聞こえる笑い声が森を埋め尽くそうとする中、オオカミは今日の獲物を諦めざるを得ませんでしたとさ。

 めでたしめでたし。



<おわり>

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