ブリッシュ王国編

第55話新たな問題

「メテオラさんパワーレベリングはどうでした?」

「えぇ、とても刺激的でしたの。こんな経験、生まれて始めて致しましたわ」


そう言うメテオラは、かなり元気が無い。

流石に、箱入りも重箱を何重にも重ねて、大事に仕舞われていた正真正銘のお姫様だったのだから、仕方無いというものだ。


これで、寝屋を一緒にするなら誠心誠意尽くしまくるのだが。


え、アルテッザはどうしたって?

両方に尽くせる、包容力のある出来る子なんです!


キリッ!


「流石に、最初はきついだに!」

「私は――最初からイケイケでした」


ホロウは、闘争本能の塊みたいな女性ですよね。

狼って皆、こうなのだろうか?


「明日もあるんですの?」

「ええ、予定では1週間はしないと、皆に追いつけないんで……」

「はぁ。あれを後6日もするんですのね」


あらら、思いっきりテンション下がっちゃったよ!


でも、イアンが抜けた穴を補う為には必要な事だからなぁ。

やっぱり、後方支援は必要だもんね!

メテオラのステータスを見る限り、MPの方に比重がいっているから、魔法覚えたら結構いい戦力になると思うんだけど……。


でも、光と水かぁ。

光ってやっぱり浄化とか回復?

水はラノベでは回復系とか書いてあったような……。


やっぱり、イアンのインフェルノが無くなったのは痛いね。

このインフェルノがあれば、王都最強じゃないの?

もしかして、それで王子が落とされたのか!


普通の異世界ものだったらハーレムが〔お・や・く・そ・く〕だと思ったんだけどな。


イアンが、ショタじゃ無かったから仕方ない。

前から年下はちょっと、とか……頼りがいのある人が、とか言っていたもんね。

俺、拗ねていい?



「それでイアンの実家の引越しはどうなったの?」

「それなら費用を王家持ちで、馬車5台借りたので、大体は積み終わりましたよ」


さすが玉の輿!


「そっか。いよいよ、イアンともお別れだね」

「どうせ王都に行ったら会えるにゃ!」


何?


俺、タマちゃんに慰められているの?


そんなに頼りない?




さて風呂でも入ろうかな。このお城の風呂は大きいんだよね!


勿論、男女一緒です!


「じゃ、皆でお風呂に入ろうか!」

「それは――まだ早いと思うのですが?」

「そ、そんな殿方と一緒にお風呂になど、私には出来ませんわぁ」

「私とポチは、もう入りましたんで」

「おねぇちゃんから、コータさんとは入っちゃダメって言われているにゃ!」


さいですかぁ。

これ、普通のラノベと違うの?

普通はタオルで隠しながらも、一緒に入っているじゃん!




その晩コータは……一人で寝た。






「それじゃぁ皆さん、お世話になりました。王都に来たら遊びに来てくださいね!」

「皆さんには、本当にお世話になりっぱなしで、娘にいい縁談も持ってきてもらって感謝しきれません」


いやいや、お母さん。

俺達、何もお世話していませんから。

貴女の娘さんが、王子に取り入っただけですよ!


本当に女って――逞しい。


それでは、と二人でお辞儀して、5台の馬車と共に王都へ旅立って行った。


さて、メテオラのパワーレベリングにでも行きますか!


そしてやって来ました!いつもの狩場。

今日も、昨日と同じ悲鳴が轟いています。


「ひゃぁぁぁぁー、目がぁ飛び出していますわぁぁぁー」


今日は、俺以外のメンバーも協力してくれて、メテオラの前には瀕死の魔獣がごろごろ。

必死に槍で突くのだが、何かある度にコレである。


「お前、良い子ぶっているんじゃないのか!」


ヘメラさん、意外と辛辣ですね。


流石に、第一婦人候補には俺でも、思ってもそんな事言えないよ!

しっかし、相変わらずのルーチンワークだな。

雑魚ばかりを延々倒すのって、意外と精神的に辛い。


途中で、戦闘の連携を取る練習も入れているんだけど……メテオラが、使えねぇ!

やっぱり、後方から魔法でドッカン!

の方がメテオラには合っているんじゃないだろうか?

そんな訳で、メテオラに魔法の使い方?

そんな偉そうなものでは無いが、イメージ力の強化をする事にした。


だが、何度光魔法のイメージをさせても、攻撃魔法は発動しなかった。


「我の記憶では、光魔法は光学迷彩やキュアなどの異常状態解除、アンデット浄化などの魔法だったと思ったぞ!」


え、そうなの?

じゃ、今までの苦労がもしかして――水の泡?

そんな事で、回復魔法を覚えてもらう事にした。


え、そんな簡単に諦めてもいいのって?


だって、覚え無いものは仕方ないでしょ!


伸びるものを、伸ばす方針なんです!


「じゃ、俺が自分で指に傷作るから、俺に回復魔法使ってみて!」


そう言って、ナイフで指を切ろうとしたら……。


「やっぱりコータさんはМだっただに!後で、タマにも教えてあげるだに!」


ちょっと、余計な事を幼気な子に教えなくていいからね!


そんな感じで、6日経った。

今のメテオラのステータスはこれだ!



●名前  メテオラ・アルステッド

・種族  人族

・種別  女

・家族  アーノルド(父)イザベラ(母)アレフ(兄)ローラ(妹)

・職業  アルステッド国 第一王女 コータの第一婦人候補 

・LV  65

・HP  650/650

・MP  1300/1300


・得意技  絶叫 突き 回復 異常状態解除

・属性   光 水


・称号  病弱王女 コータの嫁 臆病姫



ちなみに異常状態解除は、俺が笑いきのこを焼いて食べて――それの解除で覚えてもらった。もうきのこは食わん!


そして帰ろうと、準備を進めている時に、木の陰からホロウを狙って虎獣人が飛び出してきた。

俺が、気づいて声をかける前に、ホロウが自ら槍を前に突き出し、虎獣人の足に突き刺した。


「大丈夫か?」

「問題ありません、そもそもかすりもしていませんから!」


虎獣人のステータスを見ると、普通の兵士より少し高い位か。

それなら、うちの娘達でも余裕で対応出来そうだ。


「何で狼の女が、こんなに強いんだよ!こんな話は聞いてねぇぞ!」


ホロウを襲った虎が、何か言っているんだが……誰かに頼まれた?

俺は、虚空空間から縄を出して、虎を縛りあげた。


「さぁて、誰に言われて来たのかな、このホロウを狙って来たみたいだけど?」


虎は頭を振って――知らん!


ただ強そうだから襲ってみただけだ。と、嘘を付きだした。


はぁ、強そうだからとかそんな言い訳、通じる訳ねぇだろ!


「そうですか、なら仕方ありませんね」


ちょっとホロウさん。それで納得しないでください!


そんなの嘘ですから!

それにさっき――こんなの聞いてねぇって言っていたじゃないですか!

聞いてなかったんですか!



ホロウが縄を外すと、片足を引きずりながら虎は西の方へと逃げていった。


「ちょ、ホロウ。あんなの嘘に決っているじゃねぇか!」

「例えそうでも、自分の弱さを認めた相手をそれ以上、辱める事は、獣人では禁忌になっています」


ん?何その理論?

自分が襲っておいて、捕まってごめんなさい。自分は弱いんです!

と、言えば許されるの?


そんなもの、聞いた事がねぇよ!


それってさ、暗殺や襲われ放題じゃねぇか!

そういったらホロウが――。


「だから誰にも負けない強さを――獣人は求めるんです!」


くはっ、獣人ってそこまで脳筋なのかよ!

それじゃ法律とか要らないんじゃないのか?


「ただし、これは――1VS1に対してのみで、多数で一方的に虐めたり、傷を負った相手を嬲り殺したりした場合は卑怯者の烙印を押されます」


誰に押されるんでしょうね、その烙印って言うのは!


その理論だと、闇討ちし放題だな。

殺しても結局、誰にも見られてなければ問題なくなるし。


でも、何で虎はホロウを狙ってきたんだ?


誰かに頼まれたとか言っていた様だけど……もしかして、あのホロウのステータスに関係あるのか?


●名前  ホロ(ホロウ)

・種族  狼人間

・性別  女

・家族  天涯孤独

・職業  コータの護衛

・LV  121

・HP  2890/2890

・MP  740/740


・得意技 牙突 縮地 変化 炎獄 

・属性  炎 雷


称号  門番の娘 狼の姫 戦闘狂



これ見ると、狼の姫ってのと、名前が若干違う事しか、おかしな所は無いが。


また何か、問題発生とか無ければいいけど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る