第16話いよいよ出発
今日もいい天気だ!朝日が眩しいぜ!
木窓をあけ外を眺めながらそう言うと、
「2時間も寝過ごしおって何を言っておるばか者が!」
またまた起きて早々辛辣な……。
って……え?太陽の位置が……横じゃなくもっと上に見える。
あれ??
「あれじゃないわい!いつまでも母君が起してくれると思っているな、いつになったら起きるのかと観察しておれば、グゥすか、グゥすか寝坊しおって」
じゃオルステッドさんや娘達は?
「オルステッドが大事な娘が乗る馬車だ!広く安全で寛げる馬車を選んでやる!と言って、息巻いて娘達と出かけて言ったぞ。馬車を購入したら使いを寄越すそうじゃ。使いがきたらフロストの末裔と出かけるぞ」
そんな事になってるとは……。
昼前に使いがやってきてその小間使いの少年の案内で貴族街に程近いいかにも高級なお店にやってきた。
「まっておりましたぞ!コータ殿」
「すみません、昨晩クロと話し込んじゃった為に……起きられなくて」
言い訳がましいが……俺はまだ14歳だ!悪いか!
「そのようですね、こちらで馬車を選ばせて頂きました。先日購入した馬車を下取りに出しまして差額の金貨20枚をお支払い願えますかな?」
え……俺が出すの?確かに使うのは俺達だけどさ、ちょっと高くない?先日の馬車が金貨15枚でそれを下取りで金貨20枚?
総額金貨35枚の馬車?350万円?日本車のそこそこ高級車の新車が買えるじゃん!
でも諦めて差額の金貨20枚を支払う。俺が稼いだ金じゃ……以下省略。
「それではこちらになります」
と、いかにも金持ちの執事です!という感じの店員さんが紹介してくれた。
すげー!なんだ……これ、箱型だよ!御車席も屋根あるし御車席から室内に小窓で繋がっていて中に声かけられそうだよ!
しかも何これこういうのなんて言うんだっけ?……そうそう。リムジンだ。
外車のえらく長いやつで行った事は無いけど高級クラブの座席みたいなやつ。
この広さだとシートに横になって寝ても余裕あるんじゃ?
動くホテルきたよ!
高級馬車の現物を見て驚いていると隣にいたオルステッドさんから小声で声をかけられる。
「いくら寝泊り出来るからってうちの娘に手を出したら分かっていますね?」
「へ?」
いやいや……14歳の純な少年になんて事を……と思ったが――。
この世界では15歳で成人扱いだった。
「もちろんです、4人のお嬢さん達に囲まれてそんな不謹慎な事……出来ません」
「分かっていればいいのです」
と、にこやかに馬車に乗り込んでいった。
それからはお店の執事さんに扱い方の説明と(ドラゴンライダー以下長いので名前を決めたフロストだ!)フロストを馬車に繋いでもらいさっそく動かしてみる。
石畳の上だと振動は一切感じない。
というか……。
クロがいっていた通りにこのサイズでも難なく引っ張るフロスト――素敵!
一瞬こちらに視線を投げた様な気がしたがすぐに正面を向き直した様だ……。
「コータはこういった白い異性が好きなのか?我も気づいてあげられなかったな」
え……。
何の事ですか?
「安心せい!ドラゴンは、もやしっ子なんかは相手にしない。子孫を残すのに強い子を求めるからじゃ」
もやしっ子って最近、聞かないな……母さんの影響か!
そんな事で、一旦アンドレア商会へ……。
さすがにアンドレア商会の車庫には入らないらしく道に横付けだ……。
昼食をご馳走になり、アルテッザが家族としばしの別れを惜しんでいる。
俺と娘達はすでに馬車に乗り込んだ。
抱き合う親子、オルステッドさんだけは涙目だ。
逆にオフィーリアさんの方は笑顔だ。
少しの間待っていたがいつまで経ってもオルステッドさんが離さないからオフィーリアさんが怒ったらしい。
ポンっとアルテッザの背中を押し引き離す。
「それじゃ、次に帰ってきたら沢山お土産話きかせてあげるね!」
アルテッザはそういうと馬車に乗り込んできた。
手をふる親と子。
なんかいいな……やばい……また泣きそうになっちゃった。
俺も頭を下げるが声はかけない。
散々、食事の後にも挨拶は交わしたしね。
入門した時とは違う今度は東門から出る。
守衛所の門番の係りに前回正門で俺達の入門許可を出した警備隊の人がいて、
来た時と打って変った装備に驚かれたりと、色々面白い事もあったのだがすんなり外に出る事が出来た。
入るときは厳しい様だが出るときはあっけない。
治安の良い街はどこもそんな感じだと中からアルテッザが教えてくれた。
さぁ、いよいよ本格的な異世界生活らしくなってきた。
にしても……パワーレベリングって。
何するんだろ。
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