ジョン・アシュフォードの森

佐賀瀬 智

第1話 ジョンとチャーリー

~~あの森で一緒に遊んだジョンとジョンの犬たちへ捧ぐ~~



 毎年、夏休みになると、僕はヨークシャーにあるおばあちゃんの家にお母さんと2人で遊びに行く。


 おばあちゃんのお友だちで、ジョン・アシュフォードという髪の毛もお髭も真っ白なおじいさんがいて、その人は村のはずれの森に囲まれたお屋敷に住んでいる。その森は何だったか正式な名前があるのだけれど、僕はジョン・アシュフォードの森と呼んでいた。僕たちがおばあちゃんの家に来ているのを知ると、ジョンはいつも僕たち3人をアフタヌーンティーに招待してくれた。年を取った犬のチャーリーも僕がそこに行くと喜んでしっぽをふって出迎えてくれるんだ。


 僕が11歳になるその年の夏、お母さんが病気でホスピタルに入院した。

「大丈夫。心配しないで。すぐ元気になるから。1週間ぐらいでおうちに帰れるからね。それまでおばあちゃんのところでいい子にしててね」と、お母さんは言った。僕はとても心配だったし不安だった。出来ることならお母さんの近くにいたかったけれど、家に誰もいないから、僕はおばあちゃんの家に行くことにしたんだ。


 おばあちゃんの家の辺りには同じ年頃の子供もいなかったし、退屈だったから、僕は毎日のようにジョンの家に遊びに行った。ジョンは、僕を芝刈り機の運転席に乗せてくれたり、池の手漕ぎボートに乗せてくれてオールの漕ぎ方を教えてくれたり、バードウォッチングをして鳥の名前を教えてくれたり、それから『ローズマリーの庭』と名付けられたフラワーガーデンとベジタブルパッチの水やり、もしラッキーだったら玉子を見つけられるニワトリ小屋の掃除、それと、老犬チャーリーの餌、散歩などチャーリーのお世話全般を僕にお願いしたりした。


 そんなある日、僕とチャーリーはいつもは行かない北側のジョン・アシュフォードの森に散歩に行くことにした。


「あんまり奥に行ってはだめだよ」と、ジョンが言った。



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