格ゲー!
忠太
第1話
深夜、男はネオン街を歩いていた。
若い男だ。精悍な顔つきで、短めの黒髪。
鋭い眼光は、まるで獲物を追う猟犬のようだ。スーツの上に、くたびれたモッズコート着ている。
男は迷宮のように入り組んだ路地を、慣れた様子で迷いなく進んでいく。
しばらく歩いて、男はとある店の前で足を止めた。
夜の街を煌びやかに彩る、近未来的な外観。
刺激に飢えた強者が集う、闘技場。
現代におけるコロッセウム————。
—————ゲームセンターだ。
男は無表情で、スライド式の自動ドアを潜り抜ける。
瞬間、歓声の如く鳴り響く、数多の電子音。
「おい、あれって……!」
店に入ってきた男に気付いた少年が声を上げた。隣に立つ眼鏡をかけた少女も、熱い瞳を男へと向ける。
羨望、嫉妬、畏怖。
あらゆる視線が、男——梅宮 宗介に注いだ。
「キングだ……」
「キング・ソーだ!!」
梅宮は悠然とフロア奥にある2D対戦格闘ゲームの筐体に座った。
静まり返るゲームセンター。
梅宮は、腕を組み、座っている。
彼はキング、王なのだ。
ただ無謀な挑戦者を待つだけでいい。
「こちらの筐体、座っても?」
やがて、達人染みた風格を持つ、落ち武者スタイルの中年サラリーマンが、対戦席に現れた。
「あ、あれはッ!伝説のアラフィフ・スター、和泉 清政ッッ!!」
ギャラリーに激震が走る!
過去、幾度となく熱望され、しかし今まで実現しなかった夢のカードが、遂に!
最強と最巧の火蓋が、切って落とされる。
続かない。
格ゲー! 忠太 @gintaro23
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