第36話 結婚式の取材(4)
「皆様、『神樹の月』の目出度き今日、晴れて国王陛下とヒロコ殿の華燭の宴がひらけますことを、神樹様に感謝いたします。
では、参列の方々をご紹介いたします」
軍師ショーカの言葉が終わると、大扉が開き着飾った女性たちが出てきた。
結婚式ということだろう、地球世界と同じでシックなドレスを着ている。
ただ、晩餐会でヒロに突っかかった娘だけは、あいかわらず派手なドレスを着ていた。
髪型も、あの時のままで、多数のドリルが頭の上で揺れている。
民衆の注目は、やはり彼女に集まった。
「あの方がお后様になられる方?」
「素晴らしいドレスだわ!」
「あの髪型、どうやってるのかしら?」
得意げな表情を受かべた娘だが、その表情はすぐに悔しさに歪んでしまった。
大扉から出てきた人物に、みんなの視線が移ったからだ。
「ヒロコ殿のご友人であり、英雄シロー殿の娘御でもある、ナル様、メル様」
司会役の軍師が紹介したのは、美しい少女二人だった。
薄緑のドレスのナルちゃんと淡いピンクのドレスのメルちゃんは、頭に純白の花を一輪載せ、ポポラとポポロに乗っての登場だ。
「うわー!
ねえ、父さん、あれなーに?」
「綺麗な女の子たちだねー!」
「なんだ、あの魔獣は!」
広場に集まった人々は大騒ぎだ。
やがて、潮が引くようにその騒ぎが消えていく。
大扉を抜け、ルルさん、コルナさん、コリーダさんが現れたのだ。
「キレイ……」
「美しい……」
「憧れちゃう……」
来賓客からも、ため息混じりの賞賛が洩れる。
私から見ても、三人は素晴らしく美しかった。
ルルさんが薄紫色、コルナさんが金色、コリーダさんが黒色のドレスを来ていて、それぞれ同系色の薄衣を肩にまとっている。
ベールだろう薄布は見たことのない素材で、彼女たちが歩くと、まるで重さがないようにふわふわとたなびいた。
「遠藤!
アップで撮って!」
「言われなくても、もうやってますよ」
ふと気づくと、例の派手な貴族の娘が、呆然とした顔で三人の方を見ている。
痛い
◇
「お待たせしました。
マスケドニア国王陛下、ヒロコ殿です」
軍師の声を合図に、一度閉まった大扉が開き、国王陛下とヒロが姿を現す。
陛下は頭に王冠を載せ、白い上下の上に鮮やかな青いローブを着ている。
ヒロは、ひだが重なった青いドレスを身にまとい、限りなく美しかった。
まるで別人だわ。
やっぱり、愛の力かしら?
だけど、陛下と恋人繋ぎしている手が嫌味ね。
「社長、なんで怒った顔してるんですか?」
「後藤……まあ、あなたには分からないわよ」
そんなやりとりをしていると、陛下の声が聞こえてきた。
「今日は、余とヒロコの婚礼にはるばる足を運んでいただき、ありがたく思うぞ。
そしてなにより、この祝いの席に、ポータルズ世界群を救ってくれた英雄二人が来てくれたことを光栄に思う」
ヒロの手を離した陛下が、舞台の左側、シロー君たちがいる所へ歩みよる。
「
紹介に応え、リーヴァスさんが手を振ると、民衆が大きくどよめいた。
「そして、パーティ『ポンポコリン』のリーダーであり、メンバーのミミ殿、ポルナレフ殿を率い、世界を救った英雄シロー殿!
彼は、我が国の勇者、カトー殿のご友人でもある」
なぜか少し後ろでうろたえているシロー君を、ミミちゃんとポル君が前に押しだす。
だけど、肝心のシロー君は顔色がまっ青となり、ふらつくと今にも倒れそうに見えた。
それを守るように、ルルさん、コルナさん、コリーダさんの三人が前に出てくる。
ルルさんとコルナさんの肩には、それぞれ白猫と黒猫が座っており、右の前足を挙げ招き猫のポーズをとっている。
そして、なんとコリーダさんは、突然姿を現した巨大な招き猫の肩に乗っていた。
会場のざわつきが、驚きの声に塗り変えられる。
「「「白猫様ー!」」」
「「「ニャンニャン様ー!」」」
「「「ありがたやーっ!」」」
なんなのこれ、いったい!?
ただ、ああいったことに慣れないシロー君を、ルルさんたちが守ったということだけは分かった。
彼、よほど三人から愛されてるのね。
だけど、王様の結婚式で、あんなことして大丈夫なのかしら?
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