第48話 英雄島からドラゴニア世界へ
海中散歩を楽しんだ日から二日後、俺たちは次の世界に向かおうとしていた。
『山の家』でみんなで朝食を食べた後、海を眺めてくつろいでいると、ダンが俺の肩を叩いた。
「じゃ、シロー、次は『学園都市』にあるお前の家にも来いよ」
「ダン、俺、『学園都市』に家なんか持ってないぞ」
「ああ、言うの忘れてたが、ギルド所有の家があっただろう。
あれ、お前のものになったから。
すでに、『英雄の家』ってんで観光名所になってるぞ」
ががーん!
「な、なんでそんなことに?」
あの家って気に入ってるから、もらえるんならそりゃ嬉しいんだけどね。
「世界群を救ってくれた『英雄』に対するお礼だとさ」
ぐはっ!
油断してたら、またまたその言葉ですか。
「そんなことより、この島もお前のもんだぞ」
「えっ!?」
「ほら、看板があっただろう。
なぜだか文字が書きかえてあったが、この島は正式に『
あの看板、そう言う意味だったのか!
「嬉しいのか悲しいのか、よく分からない心境だよ……」
「喜べよ!
こんな凄い島もらったんだからな!」
問題は島の名前ですけどね。
◇
この地を去る時に撤去する予定だった『海の家』と『山の家』は、そのまま残すことにした。
支店の人たちで福利厚生施設に使うようダンに勧めたが、海上交通手段がほとんどないこの世界では、この島まで来ることができないらしい。
最後に、眠っているホープに全員が小声で挨拶してから、ダンたちを学園都市に瞬間移動させる。
俺たちだけになったので、『山の家』の屋上テラスに上がる。
『では、手を繋いでね』
手を繋ぎ輪になったが、みんな名残惜しそうに海を眺めている。
「すぐには無理だけど、また来よう」
「史郎君、絶対だよ!」
舞子はこの島が気に入ったようだ。
「ああ、約束するよ」
そう言ってから、セルフポータルを発動した。
◇
「えっ!?
ここって島のジャングル?」
黒騎士が驚いている。
俺たちが転移した先は、木々に囲まれた場所だった。
ここは『真竜廟』と呼ばれるダンジョンの第三層だ。
ドラゴニアという世界にある浮遊大陸『天竜国』にあるダンジョンだ。
「「わーい!」」
この場所をよく知るナルとメルはすぐに駆けだし、木立の中に姿を消した。
「ナルちゃん、メルちゃん、危ないわよ!」
黒騎士が叫ぶ。
「あー、心配しなくていいよ。
ここって、ナルとメルにとって第二の故郷みたいな場所だから」
この地が初めての、エミリー、ハーディ卿、黒騎士、ショーカを安心させておく。
転移した地点から五分と歩かず、すでに開いている大きな扉の前に出る。
そこから巨大な骨の竜、竜王様が顔を出した。
その両目だけが、赤黒く光っている。
『シロー、よく来たな』
パタパタ音がするから振りむくと、ハーディ卿、黒騎士、ショーカが気を失い倒れていた。
『( ̄▽ ̄) あーっ、またやっちゃいましたね』
「ミー」(やっちゃったね)
「シロー……」
ルルの静かな声。
怒ってる……点ちゃん、助けて。
『(*'▽') さあ、自分でなんとかしよー!』
なんとかしよーって、軽~い感じで言われても、なんともできないでしょ、これ!
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