第45話 家族でバカンス(下)


 昼食、夕食を兼ねたバーベキューは、黒騎士とショーカが獲ってきた魚介類をサイドメニュー、リーヴァスさんが仕留めた大型の猪をメインメニューに始まった。

 デロリンが作っておいてくれた、タレに漬けてから食材を焼く。

 何度か改良を重ねた点魔法製のコンロは、食材を焦がさず焼ける自信作だ。


「もう、我慢できない!」


 ミミの決まり文句で食事にかかる。


「「「いただきまーす!」」」


 みんなが食べることに夢中になる。


「あー!

 このエビ、美味しすぎる!」

「貝のおつゆがたまりません!」

「このお肉、美味しいっ!」


 焼きたてシーフードとイノシシ肉は、みんなの舌を満足させたようだ。

 

「ちょっ、それまだ焼けてない!」


「焼きすぎると美味しくありません!」


 黒騎士とショーカの言いあらそいは、食事の席でも相変わらずだった。

 この二人、似た所があると思うのだから、なんで気が合わないのだろう。

 同族嫌悪かな?


「お父さん、はい!」


「おお、エミリー、ありがとう!」


 ハーディ卿とエミリーの周囲は、ほのぼのした空気だね。


「ミミ、そんなに盛っても食べられないよ」


「そんなこと言ってるから、あんたはいつまでたっても大きくなれないのよ!」


「あーっ!

 気にしてるのに!」


 ミミとポルはいつもの調子だ。

 

「この島、最高よね!」

「明日はみんなで泉まで行ってみない?」

「夢のような場所だな、ここは」

「ずっとここにいたいわね」


 コルナ、ルル、コリーダ、そして舞子は並んでそんな話をしている。


「あ、そうだ。

 リーヴァスさん、これ、妖精族が造った新しい酒『フェアリスの友』です。

 一杯どうぞ」


 点収納から、ビン詰めしておいた酒『フェアリスの友』を出す。


「ほう!

 それは期待できますな。

 ……おおっ、これは素晴らしい!」


 ハーディ卿も褒めたが、酒に詳しいリーヴァスさんがこの反応だから、味の方は申しぶんないだろう。


 白猫、黒猫、猪っ子コリン、キュー、は土魔術で作った、高さが三十センチほどのローテーブルに、それぞれが愛用している食事用の皿を出してやる。これは、わざわざ、アリストの『くつろぎの家』から持ってきたものだ。

 土魔術で作った手製の食器で。固形物用のプレートと液体用カップが一体化したものだ。

 白猫、黒猫、キューには好物のミルク、コリンにはこの島で取れた泉水を注いでやる。

 

 元がスライムである、白猫、黒猫はともかく、コリンとキューに分けあたえる食事は、彼らが食べられるものを点ちゃんが選別している。

 草食のキューは、美味しそうに海藻を食べていた。

 こいつって、『白い悪魔』って人々から恐れられているんだけど、草食だと分かったんだよね。 


 さて、俺も食べようかな?

 うおっ、この縞模様のエビ、でかいのに旨い!

 ぷりっぷりの歯ごたえで、エビ独特の旨味がぎゅっと濃縮した感じ。


 そして、二枚貝。

 ぱかりと開いた、貝の身はふっくらツヤツヤ、おつゆたっぷり。

 くー、最高!


 今回は黒騎士が釣ってきた白身の魚を刺身にしてみたんだよね。

 お箸でワサビを少量取って透きとおるような身の上に載せて、醤油を少しだけつけて……。

 うはーっ!

 全く臭みが無くて、ほのかな甘みがある。

 なんて上品な味なんだろう!

 魚自体は、銀色の魚体に青い水玉模様という姿だから、それほど期待していなかったのだけど、これは天然物の鯛以上だね。


 イノシシ肉は、その独特な風味とつけ汁の味が合わさり、最高の味に仕上がっている。

 ミディアムレアの焼き加減。

 肉好きには堪らないな。


 そろそろデザートも出しとくか。


「はーい、みんな、このテーブルにデザート置いとくからねー!」


「「「やったー!」」」


 皆が薄桃色の陶器に少量盛られたデザートをスプーンで口にする。


「「「!」」」


 おーっ、みんな無言で食べてる、食べてる。


「シローさん、これはコケモモのアイスクリーム?」  

 

「そうだよ、ルル。

 でも、ここで食べるとまた違った味わいがあるでしょ?」


「ええ、ずっと美味しく感じます」


 ナルとメルが期待した顔でこちらを見る。


「お腹が痛くなるから、お替りは一回だけだよ」


「「わーい!」」


 こうして、バカンス初日の夜が更けていった。

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