第23話 マンボウ ― 点ちゃん5号登場 ― 


 瞬間移動で点ちゃん1号の中に戻った俺は、点ちゃんに頼み、壁に貼ったスクリーンに本のページを拡大して映していた。

『β世界の環境』の第六章、『その他』の内容を、最初からゆっくり調べていく。


 うーん、なぜかポータルのことが載っていないな。

 まてよ、もしかすると……。


 俺は第五章を調べていく。

 

「あった!」


 ポータルの事は、「移住の問題点」という項目に書かれていた。 


『現在、β世界のゲートは、海抜1ミーダの所にある。

 海面変化の推移から考えると、五十年後にはゲートが海面下になる恐れがある』 


 ここに書かれた「ゲート」という言葉は、ポータルの古い呼び名だ。

 この「1ミーダ」というのがどれほどの長さか分からないが、もしかすると、すでにポータルが海面下に沈んでいる場合も考えられる。


 点ちゃん、この本っていつ頃書かれたか分かる?


『(Pω・) アリスト年で、少なくとも百五十年以上前に書かれているみたいです』


 ひゃ~、すっごい昔だね。


『(Pω・) 第三章と第五章の地図を合わせると、ポータルの位置が特定できそうです』


 よし、じゃ、そこに行ってみるかな。


『(^▽^)/ わーい!』


 遠足のノリだね、点ちゃんは。


 ◇


 次の日、俺はポータルを探すため、点ちゃん1号で海岸線の上を飛んでいた。


 点ちゃん、この辺り?

 

『(Pω・) 本が書かれた時より、海岸線が、ずい分陸側に動いています』


 とりあえず、ここが第一候補でいいのかな?

 

『(・ω・)ノ そうです。海岸から五十メートルくらい沖でしょう』 


 えっ!?

 それって海底ってこと?


『(・ω・)ノ そうなります。ポータルが海水と接触したらどうなっているか……』


 とにかく海に潜ってみるかな。

 点ちゃん、この1号のまま潜れる?

 

『(*ω*)✨ 無理ではありませんが、ここは一つ、新型を!』


 点ちゃん、目が光ってる。期待してるね?

 よし、じゃ、二人で設計してみよう。

 一番やっかいな潜水病対策は、点ちゃんに任せちゃおう。 


 ◇


「うーん、これでいいのかなあ」


 海上、目標地点上空で停めた点ちゃん1号の外に、潜水用の点ちゃん5号を出す。

 なんだろう、この納得できない感じは。

 きっと5号の形が、魚のマンボウに似ているからだろう。


 今まで機体は、割と格好にこだわって作ってきたからね。

 今回は機能重視ということでいいでしょう。

 でも、いつかきっとかっこよく改良してやる。


 マンボウ型点ちゃん5号に「付与 重力」を施しておき、乗りうつる。


 あっ、そういえば、点ちゃん、ここの海って酸性が凄く強いんでしょ。


『(Pω・) すでに検証済みです。何年潜ってても大丈夫ですよ』

 

 おー、頼もしい! さすが点ちゃんシールド装甲。

 では、海中へー、ざぶんと。

 ……あれっ?

 もう底に着いちゃったよ。


『(・ω・) それはそうでしょう。ここって、水深二十メートルもありませんから』


 あ、そうなの?

 ちょっと拍子抜けしちゃった。

 しかし、強酸性の海でも、生き物、割といるね。


『(・ω・)ノ ただ、種類は少ないみたいですよ』


 魚が泳いでいるけど、どれも全身甲羅みたいなので覆われてるよね。

 そういえば、この前、海水を採集したときにいた、触手を持った巨大生物はいないのかな。

 

『(・ω・) あれはもっと深い所でしたからね』


 まあね、あんなに巨大な生物だから、深い所じゃないと……って。

 点ちゃん、何か向こうの方から近づいてきてない。


『(・ω・) 例の巨大生物ですね』


 なに余裕見せてるの!

 いいの? 

 俺たち、食べられちゃうんじゃない?


『へ(u ω u)へ あの生物がどんなに頑張っても、5号の装甲は大丈夫です』


 ……なんか、触手でぐるぐる巻きにされてるんだけど。

 あれれ、なんか船体が動いてるよ。


『(・ω・)ノ きっと棲み処に持っていって食べるつもりなんでしょう』

 

 おーい! ダメでしょ、それ!

 点ちゃん、なんとかしてよっ!


『(・ω・)ノ もう、ご主人様はビビりですね』


 ええ、ビビりです! ビビりですから助けてーっ!


『(*'▽')つx はい、ちょんちょんっと』


 あれ?

 触手が外れた?

 ていうか、バラバラになった触手が海中を漂ってる。


『(・ω・)ノ さあ、窓の外に注目ー!』


 あ、あれ何?

 

『(・ω・) カニのハサミを参考に造ってみました』

 

 ハサミがあるマンボウ!?


『v(*'▽')v カニ型マンボウ、フーっ!』  


 ……もういいです。全てお任せします。

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