第57話 決戦(3)


『巨人の里』にいた子竜のうち二体は、遠くに母親の異変を感じ、幼子から竜に姿を変えると、里から飛びたち母親がいるだろう方向へ飛翔した。

 途中から猛烈な気だるさが襲ってきたが、二体は飛びつづけた。

 突然、気だるさが消える。彼らは、前方の草原に横たわる母の姿を見つけた。


 急降下した二体の子竜は、横たわる母の近くで再び幼子の姿となった。

 ぬいぐるみと一緒に母の体にすがりつく。


「マンマー!」

「マーマ!」


 同時に意識を取りもどした、コルナとコリーダが上体を起こす。


「「あなたたち……」」


 二人の声に、子竜が喜ぶ声が重なった。


 ◇


 点ちゃんからの報告で、コルナとコリーダの子竜が急に里を離れたと知り、俺は彼女たち二人が近くまで来ていると確信した。


『(・ω・)ノ ご主人様ー、ドラゴナイトの効力が消えたみたい』


 そうか、きっとコルナとコリーダが何かしたに違いない。


『バルクさん、聞こえますか?』


『おお、頭の中でシロー殿の声が聞こえる』


『俺の魔術なんです。

 それより、体調の方はどうです』


『里に着くなり楽になったですわい』


『よかったです。

 もう一度、こちらに来れますか。

 戦える人は、前線に集まってもらいたいんです』


『しかし、ドラゴナイトがある限り、我らはなにもできぬが』


『仲間がドラゴナイトを無効化してくれました。

 もう、来ていただいて大丈夫ですよ』


『なんと!

 そのようなことができるのか?

 とにかく、それなら、むしろ我らに戦わせてほしい』


『では、こちらに移動させますよ。

 皆さんが驚かないよう、声を掛けておいてください』


『分かりもうした!』


 俺は拡声用クリスタルを持ち、それに話しかけた。


「同盟軍の諸君、もう君たちに勝ち目はない!

 諦めたまえ!」


 これには、すぐガーベル王が反論する。


「馬鹿を言うな!

 ドラゴナイトの影響で、そちらの戦力は限られている。

 どう見てもお前らに勝ち目などないぞ」


「ははは、ドラゴナイトは、すでに無効化されたぞ。

 勝ち目がないのはお前たちだ!」


「ば、馬鹿なっ!

 誰がそんなたわ言を信じるか!」


 その瞬間、並んだ神獣の左右に巨人が多数現れた。

 彼らは手に持った槍で天に突き、気勢を上げている。

 その前にマスケドニア、アリストの連合軍が並んだ。

 中心にいる三人、加藤、畑山さん、舞子が身に着けた黄金色の鎧が光る。

 それを見た同盟軍の兵士の多くが、逃走にかかった。  

 

 同盟軍はすでに陣がバラバラで、その数も半数以下に減っていた。

 

「くそう!

 全軍、突撃ーっ!」


 やけになった、ガーベル王が声を上げる。

 俺が一番恐れていたのがこれだ。

 死を恐れずかかってくる兵士は、消去するしかないからだ。

 

 五十万近い敵兵が、山岳地帯へ押しよせてきた。

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