第4話 パーティ結成


 ドアの向こうに立っていたのは、食事処ワンニャン亭の看板娘ミミだった。


「ミミ、なぜ君がここに?」


 ポルナレフが尋ねるのも無理はない。


「私ね……冒険者になったの」


「ええっ!」


「だから~、たった今、冒険者登録してきたのよ」


「な、なんで?」


「なんでかなー、なんでだろ」


 ミミは、からかうような目で少年を見ている。


「冒険者になって、どうするつもり?」


「あなたたち二人、パーティ組むんでしょ?

 他の冒険者が話してたわよ」


「いや、それは、そうだけど……」


「私ね、そのパーティに入るの」


「えっ!?」


 今度は、俺が驚いた。


「えっと、パーティは、二人だけのつもりだけど」


「ポン太は、鉄ランクよね」


「まあね、登録したばかりだから」


「私も、鉄ランク。

 聞くところによると、あなた、金ランクらしいじゃない?」


「うん、そうだけど」


「金ランクに比べたら、鉄ランクなんて、ホント雑魚ざこでしょ?」


「いや、そんなこと思ってないけど」


「とにかく、雑魚が一匹だろうが二匹だろうが、大した違いはないわけ。

 分かる?」


「ど、どうなんだろう」


「だから、私がパーティに入っても、なーんの問題もないわけね」


「「えーっ!?」」


 これは、俺とポルナレフ。


「じゃ、よろしく頼むわよ、リーダー……と、もう一匹の雑魚」


 こうして、突貫猫耳少女ミミが、いつの間にかパーティに入っていた。


 ◇


 翌日、俺たち三人は、ワンニャン亭でミーティングしていた。

 議題は、パーティの名前決めだ。


 俺の推薦である、『ふとの字』は、二人にあっさり却下された。

 ポルナレフの案、『黒い稲妻』は、なんとか病みたいということで、ミミが一刀両断にした。

 ミミの『ポンポコリン』は、俺とポルナレフによって却下されるはずだったが、彼女が放った謎理論で、パーティ名として決定してしまった。

 俺とポルナレフは、今日から背負わなければならないその名前を思い、肩を落としていた。


「あんたたち、パーティ結成ってときに、そんな不景気な顔してたら、これからロクなことが待ってないわよ!」


「そ、そうだね」 

「ああ、そうかもな」


 ポルナレフと俺は、ミミの謎理論により、脳内を侵されつつあることに気づかなかった。


 ◇


「え? 

 もう一度いいですか?」


 受付のお姉さんが聞いてくる。

 それは、そうだよね。


「えー、ポンポコリンです」


「ポ、ポンポコリン……」


「カワイイ、ステキな名前ですよね」


 ミミが言うが、誰も頷かない。


「カワイイは正義です。

 正義は正しい。

 だから、『ポンポコリン』は正しい」


 謎理論が、またまた炸裂する。


「まあ、差別的なものでなければ、パーティ名として却下とはなりませんが……」


 お姉さんは、二の足を踏んでいるようだ。

 まあ、金ランクメンバーがいるパーティ名としては、どうかと思うよ。


「では、こちらにサイン下さい」


 あーあ、とうとう決まっちゃたよ。

 ミミは、当然のようにドヤ顔をしている。どう見ても、このパーティのリーダーって彼女だよね?


 受付を終えると、冒険者が話しかけてくる。


「パーティ組んだんだって?」


「はあ……」


「なんて名前にしたんだい」


「(ポンポコリン)です」


 俺は、思わず小声になってしまう。


「え? 

 何って?」


「ふふふ、聞いて驚いてくださいよ。

 私たちのパーティ名は……ジャーン! 

 なんと『ポンポコリン』です!」


 俺の代わりに、ミミが答えちゃったよ。


「えっ!? 

 なに?

 ポンポコ?」


「『ポンポコリン』ですよ、『ポンポコリン』!

 間違えないで下さい!」


 ミミが大声で、はっきり言う。

 ギルド内に爆笑の渦が巻きおこったのは、言うまでもない。


 パーティ結成当日から、ギルドで『ポンポコリン』の名を知らぬ者は、一人もいなくなった。

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