第24話 なんでこうなった


 ギルトからの帰り道で、俺が三人のアウトローから襲撃を受けた翌日のこと。

 今日は、ギルドに行く途中で、三人組が出てきた。


「おい、今日は昨日のようなわけにはいかねえぞ」


 いきなり飛ばすね~、今日のキツネは。


「アニキ、頼みますぜ!」


 おっ! そのセリフ、生で聞けましたか。いや~、いいもの聞いたな~。

 建物の陰から、ゴリラっぽい大男が出てくる。

 名前? もう「ゴリさん」でいいでしょ。


 うわっ、何、その武器! でっかいハンマーか。当たったら死ぬぞ。


 ブンッ♪ (ゴリさん、フルスイ~ング)

 ガンッ♪ (ハンマーが俺の身体に弾かれる)

 ボキッ♪ (ゴリさんの腕から変な音が)

「ぐえっ」♪(ゴリさんの悲鳴)


 ドンッ♪ (折れたハンマーの先がモヤシの足に)

 ボキッ♪ (モヤシの足から変な音が)

「ぐあっ」♪(モヤシの悲鳴)


 おっ、リズム感いいな。

 あー、折れたハンマーが、モヤシの足の上に落ちちゃったか。

 これは痛い。見るからに痛い。


 あれ、ゴリさん。なんで腕押さえてうずくまってるの? 

 あー、腕の骨が折れちゃったかー。

 お大事にね。


 呆然としているキツネとタルを放っておいて、俺はそのままギルドへ向かった。


 ◇


 次の日。

 前日と同じ場所で、また三人組が出てきた。

 モヤシは、松葉杖ついてるね。


「今日こそ、あの世へ行ってもらうぜ!」


 キツネは、今日も飛ばしてるね~。


「ボス、おねげえしやす!」


 お、ラメ入りのキラキラした服着てる。サングラス、この世界で初めて見たよ。手には、ピカピカの剣を持ってるね。伊達男って感じかな。

 今まで、動物キャラや野菜キャラばかりだったから、やっと人間キャラが現れた感じ。

 お、すらりと剣を抜いたね。さまになってる。


 すかさずキツネが差しだした、大根みたいな野菜をまっ二つですか。

 えー、でも大根ですからね。包丁でも切れますよ?


「死ねっ」♪ (ボスが叫ぶ)

 ブンッ♪  (ボスがフルスイング)

 ボキッ♪  (剣が俺の身体に弾かれ折れる)

「ぐえっ」♪ (ボスの悲鳴)


 剣が折れちゃいましたか。

 あちゃ~、高価そうな剣がもったいないね。


 えっ? あなたもですか。 

 どうして、みんな腕の骨を折っちゃうかな。

 なんかね~、緊張感ないな~。


 ◇


 次の日は、今までと一味違った。

 腕を包帯で吊ったキンキラボスをはじめ、同じく腕を吊ったゴリさん、キツネ三人組、見たことない顔がプラス十人ほど。道のまん中で土下座している。


「アニキと呼ばせておくんなさい!」


 ボスが叫んで、さらに頭を下げる。

 おでこが地面にくっついちゃってるよね、それ。

 呼ばせておくんなさいって言われてもねえ。

 どーすんのこれ。通行の邪魔だよ。


 そこへルルが通りかかった。

 ここのところあったことを話すと、モヤシの松葉杖を手にした彼女が、キツネたちをかたっ端から殴りつけていた。まあ、小さいときから冒険者やってるからね~、銀ランクだからね~。

 ルルは、かなり短くなった松葉杖をポイッと捨てると、俺の手を取った。


「行きましょ、旦那様」


 あー、いくらか通行しやすくなったから、町の迷惑にはならないよね。


 ◇


 二日後、俺が小さな依頼をこなしギルドから帰宅すると、家の中にキツネたち

がいた。

 おいおい、なんでいるんだよ、お前ら。


 床を拭き掃除している者、食器を洗っている者、洗濯している者。なんか、キツネグループが家事をしてるみたい。トイレを掃除しているのは、ボスですかい。


「君たち、これはどういうことだい?」


 ちなみに、こいつらとしゃべったの、これが初めて。


「へい。

 アニキとアネさんのために、できることを考えやした」


 でもね、この家には、小さな子供がいるんだよ。

 庭を見ると、両手両足を地面に着いたゴリさんとタルの上に、ナルとメルがまたがりお馬さんしている。

 おいおい、何やってる。

 しかもゴリさんの馬は、片手吊ってるから三本足だし。

 子供たち、やめてあげて。

 おしりぺんぺん叩いて走らせるの、もうやめてあげて。

 まあ、キャッキャ喜んでるからいいけどね。


 いいや、よくない。


「しかし、アニキも強ええですが、アネさんも、半端なく強ええですな」


「ああ、雷神の孫だからね」


「「えっ!」」


 全員の動きが凍りつく。


「ら、雷神ってあの『雷神』ですかい」


「リーヴァスっていうんだけど、知ってる?」


 男たちの半分が白目をむき、立ったまま気絶している。

 あと半分は……おいおい、他人ひとの家で大人がお漏らしするってどういうことだ。


 本当に……なんでこうなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る