第23話 キツネと仲間たち
お弁当を食べた後、子供たちが遊び疲れ眠ってしまったので、俺とルルは、二人を背負い、家まで帰った。
家に着くと子供たちをベッドに寝かせ、今後のことを打ちあわせる。
「旦那様は、元の世界に帰りたくはないですか?」
「いや、今のところ、そうは思ってないよ」
ルルが、ほっとした顔をする。
「それより、これから考えなきゃいけないのは、国が加藤たちをどう扱うかだよね」
「ええ、ドラゴン討伐直後ですから、すぐには動かないでしょうが、今後はどうなるか分かりません」
「うーん、俺はとりあえず冒険者として足場を固めるかな。
ナルとメルのこともあるから。
自分がしっかりしていないのに、他人の心配してもしょうがないからね」
「それがいいと思います。
冒険者業に専念するなら、パーティを組む方法もあります。
けれど、旦那様の魔法が知られるくらいなら、二人だけで依頼を受けるのもいいかもしれません」
「点魔法については、まだまだ分からないことだらけだから、少なくとも十分な情報が得られるまでは、秘密にしとくべきだね」
その後、子供たちをルルに任せ、俺はギルドに向かった。
ギルドでは、冒険者から気安く声が掛かる。やはり、肩を並べて命をかけた体験は、互いの垣根を取りはらうらしい。
「お、来たか。
今日はどうする?」
当然のようにマックが話しかけてくる。ギルマスが、ルーキーにかかずらわってていいのかね。
「適当な依頼があれば、受けようかと思います」
「ふむ、一人だけでか?」
「そうなるか、ルルと二人でするか、依頼を見て決めますよ」
「なるべくなら、ある程度大きなパーティに入るのを勧めるがな」
まあ、当然ですよね。
「安全マージンは、きちんと取りますよ。
まあ、大した依頼は受けられないでしょうが」
「ブレットたちとは組まないのか」
う~ん、下手をすると、こっちのごたごたに巻きこんじゃうかもしれないからね。
「今すぐには、考えていませんね」
どちらともとれる返事をしておく。
「もしルルに何かあったら、承知しねーぞ。
とにかく無理だけはするんじゃねえぞ!」
「はい、分かりました」
ここは素直に聞いておく。だって、ルルのこと心配してくれてるんだもんね。
「ああ、思いだしたが、お前のランク上がってるぞ」
「え?
いつの間に?」
「いつの間にって。
ゴブリンキング討伐の功労者、その上、ドラゴン討伐にも参加ってなりゃあ、上がらねえわけねえだろ。
もう、ルーキーとも呼べねえな、ガハハハ!」
「そんなもんですか?」
「全く、いつものんびりしてるぜ、お
それが人生の目的ですから。
「おーい、キャロ。
こいつに、新しいギルド章、持ってきてやってくれ」
「はーい」
キャロは小さいので、カウンター越しだと、どこにいるのか分からない。カウンターの上にギルド章を持つ、ちっちゃな手が出てきた。
お礼を言って受けとるが……これ、銅なんですかね、なんか白っぽいけど。
「あっという間に、銀ランクになっちまうとはな」
あちゃー、銀ですか。目立たなけりゃいいけど。
「若手の出世頭だぜ」
すでに目立ってるってことか。
「まあ、二回も死にかけたんだ。
二階級特進ってやつよ」
この世界にもあるのか、その制度。
「まあ、大丈夫だとは思うが、ねたましく思うのもいるから、用心は
「はい、ご忠告ありがとうございます」
言いたいことを言うと、マックは二階へ上がっていった。
◇
ギルドを出たところで、人相の悪い三人組が俺に近づいてきた。
おいおい、さっきの忠告、聞いてたみたいなタイミングだな。
点ちゃ~ん。
『(^▽^)/ はーい、何でしょう?』
とりあえず、手出ししないようにね。この人たち死んじゃうと、後が面倒だから。
『(^▽^) は~い』
◇
「オメエがシローってやつか?
最近、大っきな面してるらしいな?」
まん中の狐顔をした男が、こちらをにらみつけてくる。
いえいえ、私、どちらかというと小顔と言われることが多いです。
「まちがいねえ。
こいつだぜ!」
そう言ったのは、左側のモヤシっぽいヤツだ。声もなんだかモヤシっぽい。名前は知らないが、見覚えがある顔だから、いつか討伐時に、一緒だったのかもしれない。
「おい、なんとか言わねえか!
びびって、動けねえのか?」
これは、右端の
とりあえず、左からモヤシ、キツネ、タルって名づけておく。
キツネが、いきなり腹部めがけパンチを打ちこんできた。
おいおい、いきなりだな。
グキッ
「痛ぇっ!
気を付けろ!
こいつ、腹に鉄板か何か入れてやがるぞ!」
いえいえ、そんなものは入れてませんよ。いきなりに殴ってきて手をくじくなんて、どんだけマヌケなの。
「くらえっ!」
モヤシが、腰の後ろに差していたらしい、短いこん棒を叩きつけてくる。
やばっ!
ボキッ
あれ、こん棒が折れちゃってる。安モノだな。武器をケチっちゃいけないね。
モヤシ男が驚いた顔で短くなったこん棒を見ている。
ん? タルちゃん、なんで足元で伸びてんの?
こいつら、新手の漫才か? というより、異世界にも漫才ってあるのか?
キツネが、痛めていない方の手にナイフを取りだした。さすがに、これは避けないとやばいか。
シュッ シュッ
意外に速いな。ナイフの持ち方が慣れた感じだ。点ちゃんに頼むかな。
うえっ、頬っぺた切られちゃったか?
あれ? 痛くない。
あ、キツネのナイフが折れてる。
モヤシと同じように、驚いた顔で折れたナイフを見ている。二人そろって同じ表情、同じ格好するのやめれ。
「「お、覚えてろ!」」
そんなの震えた声で言われてもねえ。って、タルちゃんは、そのまま放置ですか。友達じゃないの?
うーん、あいつら、最後まで何がしたいのか謎だった。
点ちゃん、どう思う?
『(・ω・)つ 古代竜の加護ですね』
あ、物理攻撃無効か!
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