第14話 点ちゃんとおしゃべり (下)  -- 点魔法検証 --


『プンプン(`Д´) 気づいてもらおうと、ず~っと、何度も何度もチカってたのに、全然気づいてくれないんだもん』


 中性的な、少しかん高い声がする。

 えっとー、もしかして……点ちゃん?


『(`Д´)=3 そうですよもう。プンプンのプンです』


 えー、そうはおっしゃいましてもね。

 もう、どう突っこんでいいか分からないよ。


『(^▽^)/ やっと、お話しできますね!』


 チカチカ


 お、ぴょんチカだね。喜んでるね。

 点ちゃんは、魔法だよね。


『(^▽^)/ そうですよー』


 どうしておしゃべりできるの?


『?(・ω・) 分かりません。生まれた時からそうでしたから』


 えっと、生まれた時っていつ?


『(^∇^) 気がついたら、お城でご主人様と一緒にいましたよ』


 ああ、水盤に手をかざしたときね。うわっ、嫌なこと思いだしちゃったよ。

 それで、点ちゃんは、どんなことができるの?


『(・ω・) それが、今までは自分にもよく分からなかったんです』


 え?  「今までは」ってことは、今は分かるの?


『(・ω・)ゞ はい、分かりますよー』


 ……教えてもらってもいいかな?


『(・ω・)ノ はーい。

 では、レベル別に整理しますね』


 お願いします。


『レベル1 点が現れる。

 レベル2 表面移動。わずかな拡張。

 レベル3 表面移動速度増加。わずかな拡張。

 レベル4 表面移動速度増加。わずかな拡張。

 レベル5 表面移動速度増加。わずかな拡張。

 レベル6 表面移動速度増加。わずかな拡張。

 レベル7 表面移動速度増加。わずかな拡張』


 ……おい、作者っ! お前、な~んにも考えてなかっただろう。

  あれ? 俺、今、誰に話しかけてたんだろ?


『レベル8 移動速度増加。立体拡張』


 お、レベル8に、面白そうなのがあるじゃん。

 点ちゃん、立体拡張って何?


『(・ω・)つ レベル8からは、縦横に加えて上下にも大きくなれるみたいです』


 お、それはいいね。さっそくやってみよう。


 みよ~ん、みよ~ん、ぷよ~ん


 おお、面白い! 自由に形が変えられて、まるで粘土みたい。


 みよみよぷよ~ん


 加藤の顔、作ってみるか。


 みよみよみよ~ん、ぷよぷよぷよ~ん


『( ・`д・´) ご主人様、私で遊んでますね!』


 チカッーッ


 鋭いチカいただきましたー。ゴメン、ゴメン。

 ところで点ちゃん、レベル8から表面移動速度が、移動速度になってるけど。

 これってどういうこと?


『(・ω・) レベル8から、空間を自由に動けるようになりました。

 もちろん、ご主人様が平面を意識すれば、移動を物体の表面に限定することもできます』


 なるほどねえ。ちょっとやってみるか。

 見やすいように、テニスボールくらいの球にして……。


 キュン


 点ちゃん、空間を動けるようになったのは分かるけど、キュンって、すぐ点に戻ちゃうよ。


『(・ω・) 点魔法ですから』


 シーン


 えっ?


『(・ω・) 私は点魔法ですから、点が基本です』


 ……だよね。


 あー、これ聞いとこう。点ちゃんって、点のときどのくらいの大きさなの?


『つ(・ω・) 私に大きさはありません』


 えっ?


『(・ω・) 私は点なので、大きさが無いんですよ。立体の形をとるときは、立体中の一点が基準になって、立体を形作っています』


 なるほどね。数学の林先生が、幅の無い二本の直線が交わっているところが点だって言ってたな。そうすると、点ちゃんって数学でいうところの『てん』に近いのかもね。

 点ちゃん、俺がまだ使っていない技とか無い? あったら教えてくれるかな。


『(・ω・) 今までご主人様、ほとんど相手をしてくれませんでしたからね~。まだ、いろいろありますよ』


 へいへい、申しわけありませんでした。


『(^▽^)/ 例えば、こんなことができます』


 点ちゃんが二つに分かれた。


『(^▽^) ご主人様ー』『(^▽^) ご主人様ー』


 凄いけど、何かうざい。


 チカりん、チカりん


 落ち込んでるよ。二点同時に。

 あれ? 元に戻らない。

 点ちゃん、二つのままでいることができるの?


『(^▽^)できますよー』『(^▽^)できますよー』


 あ、これは、もういいや。

 点ちゃん、元に戻ってくれる?

 他にどんなのがあるの?


『( ;∀;) ……また嫌がられるなら、見せたくないな~』


 点ちゃん、ごめん。この通り、謝りますから許して。

 しかし、これって誰か見てたら、明らかに変な人だよね。誰もいないところで、ペコペコ土下座してるんだから。


『(=ω=) 本当ですか~?  

 ご主人様は、どうも信用ならないですからね。

 まあ、いいでしょ。

 他にできることは、これですね』


 点ちゃんが、実験用の丸石の上に乗る。ここまでは、いつも通りだね。


『(/・ω・)/ はいっ』


 掛け声と同時に点が消える。

 お、点ちゃん、消えたの?


『(^▽^) 違います。石の中に入ったんですよ』


 えっ! そんなこともできるの?

 試しにテニスボール大にしてから石の上にのせると、青いボールがゆっくり石に沈みこんでいく。

 点ちゃん、すごいな。


 チカチカチカ


 おーっ、もの凄いぴょんチカだね。ぐるぐる回ってるから、むしろ、ぐるチカかな。


『つ(・ω・) 私は、大きさが無い座標だけの存在ですから、物があっても無くても移動に支障はありません』


 丁寧な解説、ありがとさんです。

 ご主人様が頼りないと、苦労かけるねえ。


『(´-`*) 全くです』


 あちゃちゃー、これじゃ、どっちが主人様か分からないね。

 

 この後、昼寝してから宿に帰った。

 昼寝しないんじゃなかったのって? 

 悪いのは私ではございません。あまりに心地良い、河原の昼寝環境が悪いのです。



 なぜ点魔法のレベルが上がったのか、そこに思い至らないのは、しっかりしているようでいて、どこか抜けている史郎だった。

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