ぽんぽこ☆りん
千耀
第一章 命の恩人
第1話 少年
パンッ!
乾いた銃声が山中に鳴り響く。
いやああああああああああああっ!
私は悲鳴をあげながら、山道を疾走した。
逃げ足に自信はあるけど、今回はマジでヤバイかもしれない。
組織は本気で私を仕留めようと、奴を送り込んできた。
眉毛の太い超一流スナイパー。
私は名前も知らない奴を、その風貌から『ゴルゴ』と呼んでいる。
ゴルゴは殺すことで快楽を得る狂人、多くの仲間が奴の餌食となった。
三ヶ月前、両親の命を奪ったのも奴だ。
私は山奥に逃れ身を潜めていたんだけど、ゴルゴは狙った獲物を必ず仕留める男。
執念で私の居場所を突き止めたらしい。
はぁ、はぁ、はぁ、心臓が悲鳴をあげている。
もう限界……でも立ち止まるわけにはいかない。
両親の『精一杯生きて、幸せになるんだよ』という最後の言葉が、私を突き動かす。
自らの命にかえて私を守ってくれた両親の分も、生き延びなくてはならないんだから。
だけど、この窮地を脱する手立てが見当たらなかった。
優れた異能の持ち主だったパパとママでさえ、ゴルゴには敵わなかったんだもの。
未熟な私の能力では、とても通用するはずがない。
パンッ!
ひいいいいいいいいいいいぃ!
か、かすったじゃない。マ、マジでやられちゃう!
このままでは逃げ切れないと察し、とっさに笹薮へ逃げ込んだ。
笹をかき分けながら死にもの狂いで駆け抜けると、そこは車道だった。
しまった! と後悔するも後の祭り。
キイイイイイイイイイイイイイイィ!
けたたましくブレーキ音を響かせながら、
いろんな思い出が、走馬灯のように駆け巡る。
そういえば道路を渡るときは、『右見て、左見て、もう一度右を見るのよ』と、ママに教わったんだっけ。
ちゃんと言うことを聞けばよかった。
ううん。立ち止まれば、ゴルゴに殺されていたんだもの。
結局、十四歳で死ぬ運命なんだわ。
パパ、ママ。ごめんなさい。誓いを守れなかった──
ドンッ!
私は大きく撥ね飛ばされ、地面に叩きつけられた。
薄れゆく意識の中、車から降りて駆け寄る少年の姿が──
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