第4話
完全に引っ込んだお腹で。
神城の車が車庫に入り、中から彼女が出てきたのを本人曰く「たまたま偶然見た」という人がいたのだが、その人が言うには赤ん坊はその腕に抱かれてはいなかったそうだ。
主婦連が結託し、目に血を入れて何とか赤ん坊の所在を割り出そうとしたが、敵はほとんど外出をしないうえに腹が立つほどに無口なので、なかなかその牙城を崩すことが出来ないでいたが、神城が帰って来てからすでに一ヶ月近く経ったころ、ある婦人がようやく聞きだすことに成功した。
赤ん坊が何処にいるのか聞くとか神城は「実家」とだけ答えたと言う。
「何故産まれて一ヶ月にもなるのに、まだ実家にいるのか?」「いつこっちに帰ってくるのか?」とか言った追加の質問は出来なかったという。
まだ話を続けている夫人を残して、神城が立ち去ってしまったからだ。
北山は山に入っていた。
住宅地の北にある千メートル超えの山の中である。
そこで猪狩りをしているのだ。
もちろん公的機関の許可は得ている。
しかし北山には最近気付いたことがあった。
――猪の数が減っている。
毎年欠かさず猪を猟銃で撃っていた。
もうかれこれ四十年にもなる。
山のふもとに大規模な住宅街が出来ても、山と猪に大きな変化はなかった。
猪がまれに住宅街に入り込んできて、ニュースになることがあるくらいだ。
しかし今年はいつもの年と違っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます