第2話

最初は話題になったその女も、しだいに人々の口に上らなくなっていた。


なにせ相手は極めつけの非社交的人間であるがゆえに、何かした、何か言ったということがほぼ皆無なのである。


話題にしようにも、そのネタとなるべきものが無い。


せいぜい「あのお腹の大きさから見て、もうすぐ赤ちゃんが産まれそうね」といった程度のことですんでいた。


再び話題になったのは、冬に入ってからである。


いつまで経っても赤ん坊が産まれないのだ。


最初「六ヶ月、いや七ヶ月といったところかしら」言われていた神城だが、それから半年も経つというのに、まだお腹が大きいままなのだ。


「あの人、どうしたのかしら。なにかの病気?」


家事も重労働と言いながら、充分すぎるほどの暇のある主婦連たちは、口々にそう言いあった。


お腹の大きさも日々とともに成長し、誰もが「こんなにも大きな腹の妊婦は、見たことが無い」と言うほどになっていった。


それなのに当の神城は、腹の子供など存在していないかのように、軽々と歩くのだ。


それは妊娠していない二十代の女性よりも身軽と言って差し支えないほどだった。


「妊娠なんて嘘で、腹に何か詰め物でもしてるんじゃないかしら」


誰かがそう言ったところ、それは電波やインターネットよりも早く伝わり、それが何の根拠も無くいつの間にか主婦たちの間では動かしがたい事実となり、次にはそんなことをする理由を探し始めた。


様々な憶測か飛び交ったが、最終的には「男からお金をもらうため」ということに落ち着いた。


主婦たちの中で、まごうことなき定説となって。

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