けものトーナメントバトル

ショウ

第1話 切欠

「で、なんでお前着いてきてるんだよ!!」


さばくちほーの地下遺跡にて、伝説の蛇ことツチノコが声を荒げる。


「わ〜」


と、そんなツチノコの声を軽く流し、砂漠の天使ことスナネコが遺跡の風景に感嘆の声を上げる。


「話聞いてんのかスナネコ!」


「聞いてます聞いてます」


「ぜってえ聞いてないだろお前!」


ツチノコはスナネコのことが少し苦手だった。掴みどころが無くフワッとした性格で、飽きっぽい。折角遺跡の良さを説明したとしてもすぐ飽きてあちらこちらと行ってしまう。この遺跡はセルリアンも多いから危険だというのに・・・


そんなスナネコだが、さばくの自分の家から定期的に地下遺跡に通ってツチノコと行動を共にしている。


「何回も言ってるだろ!ここは危険だから来るなって」


「危険だろうと楽しいです」


「楽しいとかお前すぐ飽きてどっか行くだろ!」


「だから飽きないように毎日来てるんです」


「毎日来たら余計飽きるわ!」


「あ、確かに」


ったく、こいつといるとすぐペースを崩される・・・と、ツチノコが疲れた様子でそっぽを向く。


「ま、いい。来たんならば絶対オレから離れるなよ。今日はいつもより増してセルリアンが多いからな」


「そういえばなんでツチノコはこんなセルリアンだらけの遺跡にずっと居られるんですか?」


「は?そんなもん、見つからないよう移動してるだけだ」


「ああ、ピット器官でしたっけ?」


「このピット器官のおかげでセルリアンの位置なんてまるっとスリっとお見通しなんだよ」


「トリックですか。というか分かる人居るんですかそのネタ」


「とにかく!!」


とツチノコが仕切り直す。


「お前にはピット器官ねえんだからオレから離れるなよ」


「でもばったり出会っちゃったときはどうするんですか?」


ツチノコの言葉に全く耳を貸さず質問を重ねるスナネコ。


「…お前はその大きな耳でなにを聞いてるんだよ!」


「いいから。どうするんですか」


「良くないっての。だから言ってんだろ?セルリアンとは会わねえって」


「でも…」


「でもじゃねえ。会わねえってんだから会わねえんだよ。いいから着いてこい」


とスナネコを置いて、一人ツチノコは歩いて行ってしまった。


「ったくよお、アイツはとことんめんど…」


言いながら気付いた。「やべ…スナネコ着いてきてるか?」


慌てて振り返ったが時すでに遅し、そこにはスナネコの影も形もなくなっていた。


「あのばかああああ!!」


ツチノコは慌ててピット器官を展開し、スナネコの行方を探る。


「すぐ気付いたからそんなに離れてないはずだ…!頼むからセルリアンに囲まれてたりするなよ!」


祈りながらツチノコはスナネコを探した。が、現実は非情である。行き止まりの先でセルリアンに追い込まれたスナネコを発見し、ツチノコは息を呑んだ。


「あのバカ…!」


ツチノコはスナネコの元へすごい勢いで突っ走って行った。




「また、怒られちゃいますね…。ボク」


生きてたらの話、ですが、と心の中で呟きながらゆっくりじっくり近づいてくる中型セルリアンを真っ直ぐに見据えながら、スナネコは壁にその体を預ける。


ツチノコが不意を見た時、たまたま暗い未開の通路を見かけたスナネコ。ツチノコに報告しようかと思ったが、既に遅く、好奇心の赴くままその暗がりに入っていった。入っていってしまった。


「ツチノコ…。ごめんなさい…」


スナネコが壁から背中を離して諦めたように座り込む。そして距離を詰めたセルリアンがスナネコを取り込もうとする。


「ボクの身勝手な人生もここでおしまいですね」


獣生でしたね、なんてことを思ったとき、


「うりゃああああ!!!」


セルリアンからそんな声が響いてきた。スナネコはびっくりして顔を上げると、セルリアンの内側から下駄が見えた。散々見た、ずっと見たかったあの下駄が。


「お前のけもの生、終わらせてたまるかあああ!!」


ツチノコが飛ばした下駄が中型セルリアンの石に直撃。セルリアンは途端に消滅し、綺麗な散り際を見せた。


「てんめえええ!!!あれほどオレから離れるなつったろおおうがああああ!!!!」


ツチノコはスナネコの襟首をひん掴み、ガックンガックンと揺らしまくる。


「あああああつ、ツチノコー!脳が、脳が揺れるー」


「いい加減にしろよこのヤロー!!もうホントに出入り禁止にするぞコラ!!」


「ごめんなさいーー!!ゆ、許してくださいーーー!!」


ガックンガックンと揺らされながらスナネコは思った。ああ、ツチノコは強いです…。出会ったセルリアンは全部退治してたんですね。


___ボクもこれくらい強かったらなあ…

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