「 」（空白）

16・女

兵隊さん、兵隊さん。

散って御国の花となれ。

死して御国の御霊となりて、われらが神を守りたまえ。

兵隊さん、兵隊さん。

最後の別れの夜にまで、御国の事を語る貴方を、恨む事など許されず。

思いを込めて一針ずつ、街行く女に貰った糸を止めた布。

それを貴方に捧げます。

兵隊さん、兵隊さん。

散って御国の花となれ。

散ってこそ花。

憎き鬼畜の悪鬼たち。

我が身、散り行く覚悟で滅ぼしに。

御国の為に、参ります。

兵隊さん、兵隊さん。

笑顔で見送るその影で、私が泣いたの後存知ですか？

卑怯者でもいいのです。

裏切り者でもいいのです。

帰って来て下さい。

貴方だけを待つ、私の元へ。

兵隊さん。兵隊さん。

いいえ。

私の、愛しい貴方。