13・水族館の夜

あなたと二人、忍び込んだ水族館の夜。



ゆらりゆらりと。

月明かりにも似た夜光の中で、魚たちは眠らず揺れる。




知ってる? とあなたは微笑んだ。

とっておきの秘密を囁くように、私の耳元に吐息と共に声を吹き込む。




海の底は、ずっと夜なんだ。




海には星があり、月がある。

だけど、太陽は無いのだ。



海の底は夜。永遠の夜。




あなたと一緒に居られる、この夜が終わらないのだ。




素敵ね、とため息を漏らした私に、あなたは微笑み、ほら、と水槽を示す。

深海の魚が、私たちを珍しそうに眺めていた。

ゆらりゆらりと光が踊る。

私の腕も、あなたの顔も、水槽内に満たされる水が染まった夜光の色が移っていく。


まるで此処が夜の底みたい。



私がそう囁くと、あなたはくすくすと笑った。





あなたと二人忍び込んだ、

               終わらぬ闇の、水族館の夜。

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