第7話9章・ウィンダムにて。過去。




【9】



 数日後、ゴルティア。


 シヴァの兄、ターヴァの屋敷にて。



「――シヴァからの手紙とは珍しい」


 しかも風竜を用いた速達まで使うなんて。

 弟の懐かしい顔を思い出しながら、ターヴァはいそいそを手紙を開封する。


 手紙を眺め、しばし、硬直。



「貴方、どうしましたか?」


 妻のルイザが編み物の手を止めて尋ねる。


「それが――」


 ターヴァは困り果てたように手紙を妻に見せた。


「物凄い大金を至急手配してくれるように、と依頼なんだが――」



 かなりの迷いの表情。



「まぁ、シヴァが私に頼むなんて珍しい事だ。兄として助けてやら無いと」

「そうですわね」


 ルイザはゆっくりと微笑んだ。


「シヴァさんへの出資なら間違いなく回収出来るでしょうし」

「そんな商売相手みたいな事を言っちゃ駄目だよ、ルイザ。さて――急がないと」


 ターヴァはすぐさま動き出す。

 ルイザはその後姿を見送り――そして、また編み物を始めた。



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