第14話 特効薬
家に帰ってそうそう、俺はミリアに相談をする。
「ウルル、頼みがある。俺を手伝ってくれるか?」
「もちのろんなのです」
俺とウルルは夜中まで作業にいそしんだ。
翌日。俺とウルルは出来上がった物を手にミリアの家へと向かった。
ミリアは不思議そうな顔で、俺とウルルが運んできた荷物を見る。
「いらっしゃいませ……随分と大きな荷物ですが、それが体調不良の対策になるのですか?」
「ああ、これこそが特効薬だ」
俺は自信満々でそう言った。
「まずは体調不良の原因からだ」
「はい……。一体何なのでしょうか?」
「ウルルには見当もつかないのです」
「体調不良の原因。それは――食べ物が腐っていたことだ」
「食べ物が?」
「腐っていた?」
2人は意味が伝わっていないようだ。俺はなるべく優しい言葉で説明することにした。
「食べ物はいつまでたっても食べられるわけじゃない。時間と共に菌が繁殖してやがて食べられなくなるんだ。それを知らなかったこの国の人間は、腐った食べ物を食べて体調を崩したのさ。ちなみにこの症状を食中毒と言う。毎年この季節に食中毒が増えるのは、雨期が過ぎて気温が上がってくるからとみて間違いないだろう」
「わ、わかりやすいです!」
「さすがはご主人様、ウルルもよくわかったのです!」
「それを解決するための道具が……これだ!」
俺は持ってきた荷物の包みをはがした。ベールに包まれていた食中毒用の秘密兵器がミリアの眼に見えるようになる。
ミリアは興味深そうにそれを観察し、俺に尋ねてくる。
「これは何ですか?」
「これか? これはな、冷蔵庫っていうんだ」
「冷蔵庫……? 聞いたことがありません」
ミリアは頭を横にふった。知らないのも無理はないだろう、地球の知識だからな。
「冷蔵庫ってのは物を冷やしておくための道具だ。いろいろ工夫した結果、この世界でも作れたんだよ。さらに凄いことに、魔法の効果によってこの冷蔵庫の中では菌が全く繁殖しない。つまり、この中に食料を入れておけば何年たっても腐らないってわけだ」
魔法によって、冷蔵庫は地球のものよりも数段凄いものになった。電気も必要としないし、無菌状態だし……まさかここまでのものが作れるとは流石の俺でも思ってなかったぜ。
「冷蔵庫……便利なものですね!」
「ウルルも手伝ったのです!」
ウルルが誇らしげに言う。
実際ウルルは俺の力になってくれた。俺は魔力量が多すぎるからか、細かい調節が少し苦手なのだ。大まかな魔法は俺、細かい魔法はウルルと分担したことによって、とても早く作業が進んだのだ。
「ウルルも!? シュウ様の手伝いができるなんて、ウルルってば凄いのね」
「えへへなのです」
「まあなんにせよ、これを使えば食中毒はほぼ完全に対策出来るはずだ。とりあえず昨日だけで1万個作ったから、どんどん配ってくれ」
そう、俺たちは昨日からかかりきりで冷蔵庫を作り続けていた。その結果、1万個作ることに成功したのだ。
「1万個ですかっ!? さ、さすがシュウ様とウルルですね」
「このくらいは造作もないさ」
「このくらいは造作もないさ、なのです」
「真似するなよ、ウルル」
「うふふ……。さっそく冷蔵庫を国民に配ってきますわ。これで食生活を変える必要はなくなりました。本当にありがとうございます!」
ミリアはそう言って駆け出して行った。ミリアも大変だな。
「帰るか、ウルル」
「急に眠くなってきたのです……。早く寝たいのです……」
ウルルは瞼をこしこしと擦る。
「そうだな、俺もさすがに眠い」
俺とウルルは帰ってすぐに眠りについたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます