二部一章七話

「やはり、『誰でもない誰か』ターナに関係する存在である可能性を君も疑うか」

神の子星ソーニュは、正式名称をターナの息子ソーニュ・エ・ターナと言う。そのターナは、宇宙全てを作った魔術師の名前だ。何億年も昔に死んでしまって、今はもういない。だが、神の子星の人間は、『人の知識の外で起こっている法則性のありそうなもの』を見つけた時に、彼の意思が今もまだ生きているかのように扱う。それが、『誰でもない誰か』だ。

「アンタが倒すのに苦労するのなんて、そういうのしかいないでしょ。でも、そうだとすると形がおかしいわね」

例の針鼠の3D画像データを動かしたりズームさせたりしながら、香弥はさらに続ける。

「毒々しい感じにしてもなんかちょうど真ん中って感じだし、神々しさで考えてもやっぱり真ん中らへんだし、全部が全部半端でかえってわざとらしさがなくなっちゃってて」

紘知の資料の中に、針鼠の針を全て取り除いた場合の想像図もついていた。それも見ながら考えたのだが、宇宙怪獣っぽさが増しただけで、弱点はわからない。

「そうなんだ。彼ららしさが半端すぎる。彼らの傲慢さの表れにしても、それを隠しているとしても、違うものだという結論が出る。偽装だとすれば、文句なしの出来だろう。……香弥?どうかしたかい?」

天を仰いで固まってしまった香弥。紘知の心配そうな声を無視して数分そうした後に、口を開いた。

「私の目にかかってる呪いのデータって、今表示できる?」

針のねじれ具合が何かに似ていれば手掛かりになるかも。そういう思いがあった。だから、気づいてしまった。

「……今確認している。すぐ結果が出るよ。でも、本当にこの針の形と呪いの術式が同じだって言うのかい?それなら、対処はどうすればいい?」

紘知のPCが音を出す。確認が済んだのだろう。紘知が画面を見て、感嘆の声を出した。

「すごい。8割以上一致している。コイツに『死そのもの』は効きそうにないな。有益な情報だ。……いっそのこと、対話でも狙ってみるか……?」

後半は小さな声だったが、香弥も紘知を同じ思いだった。気が付けてよかった。振り出しに戻るのが早くなったのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る