四章四話

「ターナ値50か……。世間的には大きな数字という認識で間違いないな?」

確認するように言う雨岡に、咲岡が答える。

「世界にターナ値という存在をもたらした『青銅の門』ですら40前後ですよ、教授」

うむ、そうだろうな。閉じている『青銅の門』はその程度の数値だろう、と雨岡は頷く。

「それでは咲岡君。君が見たことがある最大値は?」

「78です。ミュズィースが最大の能力を発動した時にその数値が出ました」

その時には世界がどうなるものかと焦りましたよ、と言う咲岡に、雨岡は小さく微笑む。そして、右手の人差し指と中指を伸ばして咲岡に見せた。

「二つ、君に教えておかねばならぬことがある。まずはターナ値の限界だが、これはおおよそ六桁ほどになる。宇宙の果てにでも行かなければ見れない数値だがね」

そしてもう一つ、と中指を折ってから続ける。

「研究所では時折神徒たちが互いの能力を高め合うことがある。分かりやすいところで言うと、光を発する能力と植物を出現させる能力の相互作用の結果のレポートが分かりやすいだろうか。……ほら、これだ」

雨岡が手渡した分厚いレポートを咲岡が受け取る。

「研究所で書かれた報告書ですか。……ターナ値63!?研究所の床と壁は未知の植物で覆われ、研究終了後に破棄……」

植物を出現させる能力者はツタなどのツル性植物を出現させ、伸ばす能力を持っているのだが、未知の樹木を生成、今まで能力では現れなかったツボミや食虫植物の様な器官の発生が確認され、緊急避難したとの実験報告と、その後に防毒スーツで再調査を行ったこと。更には、以降の神徒の能力の相互作用の研究中止を促す文言。

「結局その前後にも多くの能力で相互作用の研究をしていてね。二人の神徒では平均して70前後のターナ値を記録している」

いくら技術開発に必要だとは言え、ターナ値を抑える技術も開発しなければその内おかしなことになるかもしれないな、と雨岡は笑う。

「教授。『二人の神徒では』とはつまり……」

半面、咲岡の声は震えていた。

「その通り。三人以上でも研究をしているよ。中高生にはさせられないけれどもね」

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