普通のおじさんだよ
9月。合波高校に通い始めた日奈は、あっという間に学校にも馴染んだ。
腹に一物も無く、心から喜怒哀楽を素直に表現する日奈は気が付くと周りの人を吸寄せるような感じになっていた。練習には出られないが、日奈はバドミントン部にも籍を置くよう、学校から頼まれた。これはやはり学校経営の都合なのだが、「わが校のバドミントン部員がオリンピック出場!となれば・・・」またとないPRになるからだった。
そして、練習に出ないのに、バドミントン部員も何となく日奈の周囲に寄ってくる。
日奈が女子同士でする話の内容は、大体が男子の話だ。それまで女子高に通っていた日奈にとって、共学は非常に新鮮なものらしい。
「日奈、バド男子部の江川先輩、どう思う?」
「うーん、顔はいいけど肝心のバドミントンが下手過ぎてダメだね」
「日奈、この間、野球部の子に付き合ってください、って言われたんだけどさあ」
「え?秋季大会近いのに、あの人そんなことしてていいの?こりゃ、完全にレギュラー外れるね」
日奈は男子に興味はあるようなのだが、「恋愛対象」としては全く相手にしていないようだ。日奈は自分自身が体育会系、更には武闘派っぽい視点から、ふにゃふにゃした男子を切って捨てることが楽しいらしい。しかし、そのはきはきした竹を割ったような受け答えと、やたら小柄で見ようによればボーイッシュでキュートな感じのする容姿に騙されて日奈に近寄ってくる男子が結構いる。その都度、「キミ、そんなことしてる暇があったら、もっと練習したら?」と運動部員は切って捨てられ、それ以外の男子は「そんなこと言ってたら、成績下がるよ?キミのご両親に申し訳ないから、わたしは嫌だよ」と、はねつけられる。
ある日、バド女子部員がこんなことを言って来た。
「日奈、萱場さんと組んでるんだよね?あの人、ストイックでかっこいいよね。日奈が羨ましいよ」
しかし、日奈はその女子部員にも特に表情も変えずにこう答えた。
「え、普通のおじさんだよ」
知らないところで、萱場も切って捨てられていた。
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