EP.02 - 3

 騎士団が待ち受ける場所はすでにひとかがりができていた。多くの人が集い男女年齢関係なく多くの人たちがすでに集まっていた。


「この人たちが…みんな合格者!?」


 おいたちも服装もみな、一様に違う。田舎出身のミククと比べるとみんな、貴族の出世のような豪華な服を着るものや騎士団として鎧を着ているものとあふれ返っていた。


 そのなかにおそまつな服を着ているミククは浮いていた。


「どうしよ…ワタシとしたことが!」


 顔を真っ赤に染まり、恥ずかしくなりそうだ。人から避け離れた場所で待つべきか人の中で隠れた方がいいべきか、前者をとり、そっと森の中へと姿を隠そうと移動している最中「いなかものだ~!」とあきらかにからかう声が飛び交った。


 金色の髪に明らかに貧相な人をバカにしたようなしぐさをとる男とそれを応援する数人の男女がミククを取り巻いた。


「ここは田舎者がくるもんじゃねぇよ」

「あなたも呼ばれたの? 場違いよ! 畑に戻ってさっさと私らの食糧をとってきなさいよ」

「そんなひどいこと言っちゃダメだよ。それに、この子。もしかしたら、どこかの奴隷なのかもしれないし」

「はっ、ウケル」


 笑い声が耳元に囁く。

 バカにした声。弱かった私をバカにして、人生としての道を掴み取る人たち。


「こいつ一丁前に剣もっているし、お前は木の棒で十分だ、だから剣をよこしな?」


 手を伸ばし、金髪の男が「俺達が使って、磨いてあげるからよ」と明らかに挑発と田舎者だとバカにした手口だった。


 昔の私だったら、きっと涙崩れでこの場から逃げていたんだろう。


 そっと口を閉ざし、キッと彼らを睨みつけた。鋭く獲物を捕るかのような憎しみを込めたような眼つきを彼らに迫った。


「こいつ、痛い目にあいたいようだな」


 金髪の男が腰に下げていた剣を引き抜く。その瞬間のわずかな秒差でミククも剣を引き抜く。即行ともいえるほどの速さで鞘から剣先が抜ける直前に首元へ剣を数ミリ前に止める。


 金髪の男は一汗を垂らし、「なんのつもりだよ」と唇が震える。


「田舎者をバカにしないでちょうだい!!」


 もう一度睨みつける。


 バカにしていた男女らは一旦身を引いた。金髪の男もまた彼らと一緒に身を引いた。


「ふうー」


 安堵した。


「よう、大丈夫だったか?」


 横にいた筋肉ががっつりときたおっさんが声をかけてくれた。あんな連中はどこにでもいるから気にするなといってくれた。


 ミククは「平気です。少し脅せば平気な連中だと見抜いたので」と明るく言った。おっさんは「おお」と少し引いたが、ミククのあの動きと剣裁きに感動していた。


 剣というものは、本人の筋力と精神力で初めて剣としての才能を引き当てる。もしかしたら、騎士団長として昇格するかもしれない。


 おっさんはミククを遠目で見つめるかたちで、少し間を開けた。


「――では、これより騎士団入団合格者たちに最後の試練を伝えます――」


 最後の試練?


 周りがざわつく。


 試練という内容は手紙に書いていなかった。


「――この森に潜む魔物を倒し、その首を戻ってきたものを正式に入団を認めます――」


 つまり、騎士団としてひとりの人間として、どこまで強く耐えられるのかを図る試練のようだ。


「――パーティで組むのもよし、ひとりで挑むのもよし、大きく強い魔物の首を持っていた者を審査員が判断を下します。ですので、一体でも二体でも数体でも構いません。審査員を圧倒できる実力者を募集します――」


 司会と思われる長老の男はそう伝えた。


 審査員…数人の男女が席に座っているのが見える。彼らが審査員…騎士団としての一員として、認める者たちの鍵。


「――では、時間制限は夕刻まで。森に入って出るのは1度限り。はじめ!――」


 ワーと一斉に森へ走っていく。

 この森は庭のようなものだ。


 ミククは楽勝だと感じていた。


「ひとりでやるのか?」


 先ほど声をかけてきたおっさんが話しかけてきた。


「ええ」


「どうせなら、ふたりでやらないか?」


 おっさんは提案してきた。ひとりよりもふたりのほうが効率がいいと。


 周りを見渡すが、すでにパーティとしてメンバーを決めてしまった人たちがすでに何組か集まっている。先に森へ入った者たちの大半はひとりだった。


「どうする」


 ひとりでも楽勝だが、もしあの金髪たちがなにか仕掛けてくる可能性もあると踏まえる。そう思うとひとりだともしかしてということもあるのかもしれない。


「…わかったわ、協力するわ」


「よし、俺の名はアイザック・カロスだ」


 手を差し出した。銀色の鉄の甲に革製の手袋をはめた手は大きく、そして力強く見えた。


「私の名はミククよ」


 アイザックの手をつかみ、一次的な仲間として手を組むことにした。

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