そのメガネをかけたなら

カゲトモ

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「やめなってそんな男、絶対に後悔するって」

「ちょっ、マナミ、大きな声出さないで」

 背の低い方の女性がこちらに向かって申し訳なさそうに頭を下げた。

 いえいえ、飲んでいてヒートアップする時もありますからね。ですがバーですので少しだけボリュームを下げてもらえるとありがたい。しかし俺には聞こえるくらいのボリュームで。

「でも、そんな男、私許せないっ」

 うん、うん、俺も同じ男としてその男の許せないところは沢山あるな。自分からは絶対に電話して来ないとか、いつも何かを決めるときは彼女に任せっきりとか。それと彼女に黙って後輩の女の子とご飯に行った、はさすがにな。

「でも、別にただの後輩だし」

「ただの後輩って何! 後輩って言っても女なんでしょ」

「まぁ女の子だけど。別に何かあるってわけじゃないし」

「そんなの分からないじゃない」

 うんうん、分からないよな。知らないところで何しているか分からないわけだし。

「大体やましくなかったら最初からアンタに後輩とご飯に行くって言うわけじゃん。それを黙っていたってことはやましいことがあるからじゃないの?」

 だよなー。ただの後輩って言うなら別に彼女に黙っている必要ないよな。いや待てよ、もしかして言えなかったってこともあるんじゃ? 実はサプライズを計画していて、それの参考に話を聞いていた、とかそういうベタなやつって可能性もあるんじゃ?

「サプライズの計画とかでもなかったんでしょ」

「うん、まぁ」

 ・・・そりゃまぁ、そんなことされたら普通の女の子は怒るわな。じゃぁ逆にこの彼女が実は凄く凶暴で、彼氏の方が殴られるのが怖くて黙って違う女の子のところへ行ったとか? 怖くて別れ話も出来ないとか?

「その時は急に誘われたらしくて。それに女の子の相談に乗っていたって言うし、彼は優しいから」

 なんて、彼女は静かに返すだけだ。うーん、やっぱり凶暴って感じではないか。包容力があると言うか、彼女自身も優しすぎると言うか何と言うか。

「無口は今も変わらないのに、恋人であるアンタへの態度がダメすぎる! 全く何考えているのか分かんない」 

「う~ん、マナミが言うほど悪い人じゃないんだけどね」

「じゃぁ悪くないところ教えてよ」

「いっぱいあるんだけどなぁ」

 そう言って彼女は困った顔をする。その割に口にしないのは何故? なんてね。

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