8#高速道路の中の雌タヌキ

 「嫌!そうやって、あたいを捕まえて餌にするんでしょ!トビさん!それより、風船が!」


 雌ダヌキが追いかけたオレンジ色の風船は、ひっきりなしに走っていく車に煽られ、フワフワと周辺を浮かんでいた。


 「風船は諦めろよ!」


 トビのスピーは、雌ダヌキを逞しい脚で掴んで何とか救出したいのに、物凄いスピードで突っ込んでいく車に怯えてしまい、右往左往と飛び回った。


 「ちくしょう!どうすればいいんだ・・・!!」


 タヌキのポクは、頭を抱えた。


 「そーだ!」


 カラスのカーキチは、叫んだ。


 「どんな名案浮かんだんだ?」


 「俺とカースケで、雌ダヌキを持ち上げて・・・」


 「無茶言うな!カーキチ!!あのまるまる肥える雌ダヌキ、体重何キロあるんだよ!」


 「おい!カースケ!俺の鉤爪の力を疑ってるな?!」


 「カーキチ!!自意識過剰もいい加減にしろよ!」


 「なにお!」「この!」


 2羽のカラスは、互いに喧嘩を始めた。


 「おい!意地の張り合いやってる場合か!!」


 トビのスピーは、激しく取っ組み合いをする2羽のカラスを必死に宥めた。


 「ど・・・どうすれば・・・おいらは、また目の前で『見殺し』にする気か・・・?」


 タヌキのポクは、心に深く刻み込まれた幼き頃の後悔を思い出してした。

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