クマネズミの空飛べ!風船

アほリ

1#お祭りの風船

 今日は、雲一つないとってもピーカンのお祭り日和だ。


 人間達は、いろんな屋台に集まって焼きそばや、チョコバナナ、林檎飴等々美味しいものを食べ歩いていた。


 そのおこぼれを貰おうと、町中のクマネズミ達はこのお祭りにいっぱい集まっていた。


 そんなクマネズミの一匹、チャブは道端に落ちている人間の食いかけには目をくれず真上を見上げていた。


 「おーい、チャブやーい!!何やってるのおー!美味しい唐揚げあるぞおー!!」


 チャブの友達の太っちょのブクイが唐揚げを口いっぱいに頬張りながら走ってきた。


 「ふ・う・せ・ん。」


 「えっ!?」


 ブクイも空を見上げたが、何も無かった。


 「風船なんかどこにもないじゃん!それより、一緒にこの唐揚げ食おうぜ!風船なんか美味しくないジャン!」


 「プッ!お前食うことしかしか脳無いからブクブク太っているからブクイって名前なんだよ!おいらは今、食い物より風船が欲しいんだよ。」


 「せっかく、ひとが親切に・・・くらえ!怒りのマスタードガス!」


 ブッ!


 ブクイはチャブの顔におならをお見舞いした、


 「ゲホッゲホッくせぇ!言い過ぎだった!一緒に唐揚げを食べよう!」


 クマネズミのチャブとブクイは、一緒に人間の落としていったその唐揚げの塊を口いっぱいに頬張ったが、チャブはずっと、飛んでいく風船のことばかり考えていた。


 「あの風船につかまって飛んでいったら、さぞかし気持ちいいんだろうな・・・どんな景色が見えるのかなあ・・・。」


 「チャブさん!チャブさん!もう唐揚げ食い終わって無くなったから、一緒にまた食い物探そう!」


 「ああ・・・!はいはい!」しばらく妄想に耽ってぼーっとしていたチャブはびっくりして飛び跳ねて、パンパンのお腹になってもまだ食べ足りないブクイについていった。




 「あっ!」


 「チャブさん!食い物でも見つけたの?」


 「風船がいっっーーーーーーーぱぁーーーい!」


 チャブは人間のいるテントの柱に、色とりどりのヘリウムガスで膨らんだゴム風船がふわふわと浮いていた。


 「風船・・・」


 チャブは、太陽の光に輝いて綺麗な風船の束にうっとりと見とれていました。


 ガタッ!


 人間の動く物音が聞こえると、チャブは我に返った。


 「そうだ!人間に気付かれないようにそっと・・・」


 チャブはテントの柱によじ登り、鋭い歯で風船の紐を一つプチン!と切った。


 グイッ! 


 チャブの風船をくわえた口が上に向いた。


 ・・・うっ!苦しい!せっかく取った風船が飛んでんでいっちゃう・・・


 チャブは、慌てて口でくわえていた風船の紐を前両脚で掴み、腕の脇を通るように体に風船の紐をギュッと取れないように結わえた。


 「よし・・・柱から前脚を離すぞ・・・!1、2、3、ゴー!!」


 クマネズミのチャブは、大きくパンパンに膨らんだ紫色のゴム風船に連れられてふわりふわりと空高く飛んでいった。


 「うわー!人間も建物も木々もこんなに小さくなっていく!うわーおいら飛んでいるんだ!」




 「あれ?チャブさんは?」


 テントの下の弁当の残しを頬いっぱいに押し込んで、夢中で喰らいついていたブクイは、はっ!と気付いて辺りを見回した。


 「ああっ!」


 ブクイは、遥か上空にふわふわ飛んでいく紫の風船を見つけた。


 更にその紐の先には・・・


 「ちゃ・・・チャブじゃねーか!!」


 ブクイは、大急ぎでチャブを追いかけようと柱に付いている風船の束を目指してよじ登った。が・・・


 ドスン!


 物音に気付いたのは、テントにいた人間だった。


 「ごるぁ!!ネズ公!!」

 

 「やば!見つかった!」


 ブクイは必死で柱によじ登り、右脚で風船の紐を掴んだ。


 が・・・


 「うわあああああ!!」


 ブクイは体の重さが災いして、バランスを崩した。


 ブクイは下に落ちまいと必死にもがきいた。 


 「うわ!!うわ!!」


 もがけばもがく程、風船の紐の束はブクイの体に絡んだ。


 「うわ!!うわ!!」


 「動くなよ・・・ネズ公・・・保健所に連れて行くぞ・・・」


 「捕まる!人間に捕まる!助けて!チャブさん!」


 ブクイは最後の力を振り絞って、風船が柱に絡んでいる紐を全部鋭い歯で噛みきった。




 ふうわり・・・




 チャブの体は、絡みきった色とりどりの風船に連れられて、どんどん空に舞い上がった。


 「チャブさあああん!待ってーーーー!」


 太ったクマネズミのブクイは、紫色の風船に乗って飛んでいった友達のチャブの跡を必死に追いかけていった。

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