プロローグ

プロローグ1 8月9日のフレンズ観測日誌

 初めまして。私は巨大総合動物園「ジャパリパーク」のホートクエリアで気象観測を行っているパーク内職員、イザベラ・ガードナーだ。

 もともと私はパーク内の職員ではなかった。私は本来、〈LASAPO〉という動物保護団体に所属している。動物保護団体といっても、人命救助、孤児の保護、被災地の復興支援も行っている組織だ。まずはそんな組織に入っている私が何故ここ、ジャパリパークにいるかを説明しよう。それは以前パークで起きた「ある」事件がきっかけだ。

 「女王襲撃事件」といえば知っている人は多いかもしれない。自らを女王と呼び、多くの人やフレンズから「輝き」を奪おうとした事件。あれは「トワ」という人物が解決したらしいがいまだ問題は山積みである。

 怪我をしたフレンズの保護と治療、そしてパーク内の復興作業、とてもじゃないが〈ジャパリグループ〉だけでそれらの問題を解決するには人手が足りなかった。そこでLASAPOが復興作業を手伝うことになった。私たちは同じ動物保護組織で、互いの仲は良好だった。その際に支部をここ、ホートクエリアの「オクバネ山脈」の麓に置かせてもらい、以来ずっとパークと共に協力し合い、今に至るというわけだ。




 __私は、今から一か月程前にパーク内の情報に無いフレンズと遭遇した。名前は「ヤマドリ」というらしい。見た目格好は「キジ」のそれとどこか似ている。彼女の話を聞く限り、最近生まれたばかりのようだ。私は仲間と相談し、彼女を支部で世話をすることになった。

 彼女はとても好奇心旺盛なようで、支部内の様々な機械や職員、食べ物にまで目を輝かせている。…保護当時は彼女は臆病な様子で、支部内に引きこもり気味だったが、今では新しい友達ができたのか、外で仲良く遊んでるようだ。

 6日前にも、白いウサギのようなフレンズと遊んでいるのがみられた。彼女に少しづつ友達が増えていくのを見ていると、まるで自分のことの様に嬉しくなる。




 __今日もヤマドリは他のフレンズたちと仲良く遊んでいる。

とても微笑ましいことだ。




 __ところがある日、いつもなら夕方頃には帰宅する彼女が夜になっても帰ってこない。今は夏だからか、夜といってもまだ外はそんなに暗くない。パークの方からも、特に大丈夫だろう、フレンズにはよくあることですよ。と言われた。不安ではあるが、もしかしたら他のチホーやエリアに遊びに行ったのかもしれない。そうだ、彼女はフレンズで、元々は動物。いつまでも人間の手で育てるわけにはいかない、と割り切り、私は支部内の自室に戻った。今日の分のデータを纏めようと椅子に座った瞬間、観測所に忘れ物をしたことに気が付いた。外はまだぼんやり明るい。支部内のメンバーに「忘れ物を取ってくる」と一言伝え、懐中電灯と鍵を持って外に出る。


 観測所には誰もいなかった。が、私のノートパソコンは机の上に置きっぱなしだ。早く回収して帰ろうとして、ふと観測所の裏にある湖をみた。ここは彼女たちがよく水遊びをして遊んでる場所だ。


 あまり長居するとほかのメンバーに心配をかけてしまう。いつの間にか外もかなり暗くなってきた。夜なのに蒸し暑い風が吹くのは地球温暖化の影響だろうか、そんなことを考えながら観測所のカギを閉める。

 その時、フレンズの悲鳴が聞こえた。聞き覚えのある声だ。胸騒ぎがする。




私は声の聞こえた方向に急ぎ足で向かった。

そこにはヤマドリと白いウサギのフレンズがいた。

遠くから見た感じ、喧嘩をしているわけではなさそうだ。

が、何かから逃げているように見える。鬼ごっこか?こんな夜中に?

違う。あれは_______




セルリアン




 私もこの目で見たのは初めてだった。奇抜な色、一つ目。以前配られた資料と一致する。だが、セルリアンは女王騒動の後ハンター達によって処理されたと聞いていたが...


 助けようとして思いとどまる。資料にあったセルリアン対処法。それは人間が盾になって庇うことではない。もし、人間の輝きを手に入れセルリアンが進化でもしたら女王騒動の二の舞になる。

 落ち着け、セルリアンは一匹、そして動きは単調でものすごく遅い。空を飛び、地を跳ねる彼女らが二手に分かれて逃げたのだ。なら簡単に逃げ切れるだろう。



 私はポケットに入れていたスマホに手を伸ばし、ハンター達に連絡を入れようとするが、後ろから大きな甲羅を持ったフレンズがセルリアンのコアを突き、セルリアンを倒した。あれは確か、ヤマドリ最初の友達の…

 予想外の出来事にあっけを取られる、がそれでも一応報告は入れなければ、とパークに連絡する。あのフレンズ達やヤマドリたちに事情を聴かねば、と後を追う。



 ヤマドリによると、「被害者はいないよ~でもね~急に木の上から落ちてきてびっくりした!」とのこと。「あの、白いウサギのフレンズと甲羅を持ったフレンズは?」と尋ねると「ルナちゃんとリーナちゃんのこと?ルナちゃんは足が速いし大丈夫だと思う~リーナちゃんはね~うーん、わかんない!でも強いから大丈夫だよ~」と笑ってのける彼女の心の強さには驚いた。


 後で再び話を聞くと、これまでも何度かセルリアンに襲われたことがあるらしい。そのたびに甲羅を持ったフレンズに助けられていたようだ。

後でそのフレンズにはお礼がしたい。




それにしても8月9日、とても不思議な一日だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る